強いつながりで結ばれているロッテ2019年ドラフト組。ドラフト1位佐々木朗希、2位佐藤都志也。
佐藤都志也捕手、佐々木朗希投手、横山陸人投手 【千葉ロッテマリーンズ提供】
キャンプホテル自室での佐々木朗希選手と横山陸人投手 【千葉ロッテマリーンズ提供】
その光景を真後ろで見ていたのはこの試合、マスクを被った佐藤都志也捕手だった。特に話しかけることはなく、嬉しそうにじっとその様子を見つめていた。佐藤都もまたプロ5年目。2019年のドラフト会議で2位入団をした。佐々木朗希(同ドラフト1位)、横山(同ドラフト4位)と同期入団だった。
「いい光景だなあと思って、思わず見つめてしまいました。デーゲームが終わって、ちょっと陽が沈みそうになっている中で、みんなで勝利のハイタッチをして、2人はウィニングボールをどうするかと相談をし合っている。ボクの目の前でお互いが譲り合っていた」と振り返る。
佐藤都はもう一つ、思い出した懐かしい事があった。
「入団したばかりの頃、横山がボソッと話をしていたのを思い出します。『(佐藤)都志也さんがマスクを被って、(佐々木)朗希が投げて、そのあと自分が抑える。そんな試合をいつかしたいですね』と。そのことをふと思い出しました」と感慨深く振り返り、この日、それが初めて実現した幸せに浸った。
2019年の同期入団は育成選手を合わせて7人。みんな仲が良かった。1月の合同自主トレ、2月の石垣島キャンプ期間中は寮で、宿舎ホテルでよく誰かの部屋に集まった。「朗希はテレビゲームが上手いらしい」という話となり、テレビゲームを講じることも多かった。野球ゲームに対戦アクションゲーム、カードゲーム。毎日、練習が終わると誰かの部屋に集まった。この時、横山は佐々木朗希と2人部屋だった。横山は回想する。「朗希はいつも同じ曲ばかり聞いていた。もうこっちが飽きるぐらい。ずっとリピートしていた」。佐々木朗希はOfficial髭男dismの「コーヒーとシロップ」をいつも聞いていた。歌詞が胸に染みる曲だ。きっと日本中の注目を浴びながらプロ入りをした18歳の佐々木朗希も色々な事を考え、時には傷つきながら、この曲を聞いていたのだろう。
プロ1年目、佐藤都にも忘れない出来事があった。キャンプイン寸前の1月27日に石垣島で22歳の誕生日を迎えた。練習を終え、いつものようにホテルの自室で同期入団の選手たちと談笑をしていた。部屋には佐々木朗希と横山。同じ大卒捕手の植田将太捕手と大卒ピッチャーの本前郁也投手という新人バッテリー陣が集まっていた。
いつものように他愛もない会話をして、少しばかり時間が経ってから横山に「(佐藤)都志也さん、ちょっと2人だけで話がしたいです」とふと部屋の外に呼び出された。廊下で話を聞くと、とりわけ深い中身がある話でもなく「わざわざ部屋の外に呼び出して話をすることではないのでは」と思った。その時の横山のニヤニヤした表情が印象的だった。不思議に思いながら、部屋に戻ると机の上にショートケーキが用意されていた。その場にいた全員で「ハッピーバースデー」と唄ってくれた。佐々木朗希発案のサプライズ企画で同期の仲間たちがわざわざ街に買いに出て用意してくれたバースデーケーキ―だった。「あれは本当にサプライズ。嬉しかったし今も忘れられない。そんなことも思い出します」と佐藤都は振り返る。
そして「上から目線で申し訳ないのですが、あれから月日が流れて、みんな立派になったなあと思う。佐々木朗希はもちろんですけど、横山も凄いボールを投げている。あの時は本当にまだ高校生の雰囲気があって、4歳上の自分からしたら可愛い弟みたいな感じでしたけど」と思い返してクスッと笑った。
強いつながりで結ばれた同期。佐々木朗希がプロ初勝利を挙げた5月27日、甲子園でのタイガース戦も佐藤都がマスクを被った。そして同じく5月26日の甲子園で一軍デビューを果たし1イニングを無失点に抑えた横山と組んだのも佐藤都だ。5年目の今年、佐々木朗希が先発の際は背番号「32」が女房役を務めることが多かった。
プロ1年目の時、それぞれの部屋で様々な夢を語り合った。取り留めない話もあったが野球の話も多かった。あれから月日は経った。みんな成長をした。佐藤都と横山は侍ジャパンの一員としてWBSC プレミア12 に出場をして世界一を目指している。佐々木朗希は新たな挑戦に挑むことを決めた。それぞれがそれぞれの道を力強く歩いている。
文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原紀章
2020年1月 新人合同自主トレの様子 【千葉ロッテマリーンズ提供】
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