ロッテ井上 アジャの愛称でファンに親しまれた11年。「コール ミー アジャ」。自らメディアに呼びかけ浸透

千葉ロッテマリーンズ
チーム・協会

アジャコングさんと井上晴哉選手 【千葉ロッテマリーンズ提供】

 11月17日、ZOZOマリンスタジアムで行われるファン感謝イベント MARINES FAN FEST 2024の中でアジャの愛称でファンに親しまれた男の引退セレモニーが行われる。井上晴哉内野手、35歳。プロ11年間で通算601試合に出場し76本塁打、313打点の数字を積み重ねた。

 プロに入る前、日本生命に所属していた時に「アジャコングに似ている」と周りから言われ、この愛称がついた。本人も気に入っていた。2013年、ドラフト5位でマリーンズに指名された際も契約が完了すると「コール ミー アジャ」と自ら、駆けつけたメディアに呼びかけ爆笑を誘うと、その愛称は少しずつ、しかし、しっかりと浸透していく。今ではマリーンズファンの誰もがこの男を「アジャ井上」と呼んでいる。ひょうきんな性格と相まってファンに愛された選手だった。
 
 社会人時代からプロまで一貫してこの愛称を貫き、そしてユニホームを脱いだ。「ファンの方から『井上』と呼ばれるよりも『アジャ』と呼び掛けられる方がしっくりくるようになっていた。本当にたくさんの人に声をかけてもらった」と振り返る。一方でアジャ井上引退のニュースに本家アジャコング氏がプロレスラーを引退するのではないかとSNS上で世間を騒がせ、「あ、師匠に被害が・・・。すいません」と本気で申し訳なさそうにする一幕もあった。なおアジャコング氏とは2019年12月に民放テレビのバラエティー番組で一度だけ共演を果たしている。その場で公式戦始球式の約束も取り付けたが、翌20年にコロナ禍となり白紙に。その後も井上が度重なるケガに見舞われ、無情にも本拠地ZOZOマリンスタジアムのグラウンドで再会することは出来なかった。

 現役を引退する時の唯一の心残りとして「テレビ局ではなく、グラウンドでアジャさんと再会したかった。アジャさんが投げて、ボクがボールをとりたかった」と語ったほどだ。ただ、19年に初めて会った際は井上が大好きだったタレントの小倉優子さんもテレビ局の計らいでスタジオ ゲスト出演。アジャコング氏からは「てめえ、私と会った時よりも嬉しそうな顔しているじゃねえか!」と強烈なパンチ(ツッコミ)を受けたことが懐かしく思い出される。

 アジャ井上は18年に覚醒の時を迎える。133試合に出場し24本塁打、99打点。翌19年は129試合に出場して24本塁打、65打点。球団史上、初芝清氏以来となる2年連続20本塁打以上を達成した(初芝氏は98年から00年の3年連続)。しかし、その後に待っていたのは故障の日々。「手首を手術してから感覚がずれてしまったのは間違いない。あと膝。今まで膝を痛くしたことなんて一度もなかったのに、膝が痛くなった。定期的に注射を打って試合に出ないとダメな状態だった」と振り返る。
 
 最後に引退を決めたのは自分の心と冷静に向き合った時だ。「バットを握るのが嫌になった」と井上。

 そしてある二軍戦の試合で気が付いた。

 「守っている時にホッとしている自分がいた。打席に入ることが、結果が出ないこともあり、嫌になっていた。自分の長所は打力なのに、自分に背を向けているような気がした。あ、なんか、もう、ここまで来たんだなと」。

 そして4年目でイースタン・リーグで本塁打、打点の二冠に輝いた4年目の山本大斗外野手、高卒ルーキーながら二軍戦で安打を量産する寺地隆成捕手たちのスイングを見て決めた。

 「若い子たちが勢いのある、迷いのないスイングをしていた。おもいっきりがいい。一方でオレはもう迷っている。アイツらに引き時を教えてもらった」。アジャ井上は溌剌とプレーをする後輩たちに優しい視線を送り、静かにバットを置いた。10月22日 引退を発表した。

 今後について「スタンドで色々なプロスポーツを見てみたい。アメフトとかも興味がある。もちろん、プロレスも見ていない。アジャさんは生涯現役。一度、生で見てみたい」と目を輝かせる。

 広島県出身で子供の頃は大のカープファン。特に大野豊さん(プロ通算148勝 138セーブ。現在 野球評論家)が大好きで1998年9月27日 広島市民球場で行われた大野氏の引退試合を生観戦したほどだ。時は流れカープの赤い帽子をかぶった少年は大きな、大きな大人となり、プロ野球選手となった。「アジャ」の愛称でファンから愛される選手だった。そして惜しまれながらユニホームを脱ぎ、引退セレモニーに臨む。きっと、またこの引退セレモニーでアジャ井上の姿を目にした少年が大人となり、プロ野球選手になる日も来るのだろう。

文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原紀章
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

球団に関するニュース、球団広報によるコラム、オフィシャルライターによるチームのこぼれ話や球団情報をお届けします。お楽しみに!!

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント