【週刊グランドスラム277】惜しくも“夏秋連覇”は逃すもプロへ羽ばたく三菱重工Eastのスラッガー・山中稜真

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三菱重工Eastの山中稜真はオリックスからドラフト4位指名され、社会人最後の日本選手権に臨んだ。 【写真=古江美奈子】

 プロ野球ドラフト会議で指名を受けた選手にとっては、日本選手権が社会人最後の舞台となる。オリックスから4位指名を受けた、三菱重工Eastの山中稜真もそのひとりだ。今夏の都市対抗を制し、夏秋連覇を目指すチームで「1試合でも多くプレーすることが恩返しになる」と大会に臨んだ。
 日本製鉄東海REXとの一回戦は、3回表一死一、二塁から矢野幸耶の左前安打で1点を先制すると、本間大暉、長島 彰、野中太陽の継投で1対0と辛勝した。続くJR九州との二回戦は1対1で5回まで進むも、6、7回にそれぞれ四球で得た走者をきっちり長打で還して9対1の勝利。山中はこの試合で、大会8打席目にしてようやく初安打を放って安堵していた。
 青山学院大3年春まで捕手だった山中は、脚力と強肩を生かすために外野手に転向した。それが転機となり、打撃がさらに向上。三菱重工Eastに入社後は、主に三番を任された。
「入社当初は『思い切りやるだけ』と考えていましたが、試合を重ねるうちにそうはいかなくなりました。チームを勝たせるために結果を出さなければ、相手にプレッシャーを与える存在にならなければ、と考えるようになった。学生時代と違って、年の離れた先輩方ともプレーする社会人では、経験の差を痛感しました。それと同時に、そんな先輩方からの声かけで落ち着くこともできる。頼りっ放しではいけませんが、心強い存在です」
 その口調と真っ直ぐな視線からは、山中の誠実な性格や野球に対する真摯な姿勢が伝わってくる。だからこそ、責任を背負い過ぎてしまう部分があるのかもしれない。新人だった昨年、声をかけてくれたのが四番の小栁卓也だった。「おまえは思い切っていくだけでいい」との言葉に、気持ちが楽になった。小栁もまた、山中の心情が理解できるからだ。
「僕が若い頃にも、先輩に同じようなことを言ってもらいました。それはベテランの役目。若手はミスを恐れず、思い切り自分の力を発揮してほしい。山中は周りがしっかり見えているし、色々と感じ取れる選手なので、無意識に背負っているものがあるんじゃないかと思っていました。『おまえのミスは、俺がカバーしてやるから』という気持ちです。そういうニュアンスで、あの打席も『決めてこい』と声をかけました」

準々決勝ではタイブレークの延長10回にサヨナラ安打

 小栁が言うのは、日本製鉄鹿島との準々決勝、1対1で迎えたタイブレークの延長10回裏だ。無死で一、二塁に走者を置き、先頭打者は山中。1ボールからの真っ直ぐを振り抜くと、打球は右中間を破ってサヨナラ勝ちとなった。
 そうして迎えたHondaとの準決勝、山中は1回表一死一塁から幸先よく右前安打を放つ。だが、その後は打線がHondaの先発・岡野佑大を攻略できずに試合が進む。一方で4回裏には、檜村篤史の中前安打からランエンドヒットでチャンスを広げられ、藤野隼大の右犠飛で1点を先制される。8回裏には二死一塁から右前安打を許し、悪送球も絡んで2点目を失った。そうして、終盤は福島由登、中村伊吹の継投に抑えられて0対2で敗れた。

日本製鉄鹿島との準々決勝、山中(右端)は延長10回裏にサヨナラ安打を放ち、笑顔でチームメイトの出迎えを受ける。 【写真=古江美奈子】

 チームの5安打のうち、山中は2本を放ったが、「長打が出ていれば、凡退した打席でも打てていれば」と言葉を絞り出し、「いいチームでした」と声を詰まらせた。社会人では最後の試合となったわけだが、野球人生はまだまだ続く。
「2年という短い間でしたが、素晴らしい仲間たちと一緒にプレーさせてもらえた。人脈も広がり、技術も高まった。三菱重工Eastで1点の重み、ワンアウトの重みを感じることができました」
 社会人で成長できたからこそ、叶えられたプロ入り。新たな世界でも、大きく羽ばたいてほしい。
【取材・文=古江美奈子】

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著者プロフィール

1949年に設立した社会人野球を統轄する(公財)日本野球連盟の公式アカウントです。全国の企業、クラブチームが所属し、中学硬式や女子野球の団体も加盟しています。1993年から刊行している社会人野球オフィシャル・ガイド『グランドスラム』の編集部と連携し、都市対抗野球大会をはじめ、社会人野球の魅力や様々な情報を、毎週金曜日に更新する『週刊グランドスラム』などでお届けします。

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