【エリザベス女王杯】「GIを勝つために日本に来た」C・デムーロ騎手が導いたスタニングローズ2年ぶりの復活Vロード

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エリザベス女王杯はクリスチャン・デムーロ騎手が騎乗したスタニングローズが2年ぶりの復活勝利 【photo by Shuhei Okada】

 エリザベス女王杯が11月10日、京都競馬場2200m芝を舞台に行われ、クリスチャン・デムーロ騎手が騎乗したスタニングローズ(牝5=栗東・高野厩舎、父キングカメハメハ)が優勝。好位追走から直線入り口で一気に後続を突き放す積極策を決め、2022年秋華賞以来となる2年ぶりの復活GI勝利となった。良馬場の勝ちタイム2分11秒1は、2001年にトゥザヴィクトリーがマークした2分11秒2を0秒1上回る同レースのレコード。

 スタニングローズは今回の勝利でJRA通算17戦6勝、重賞は2022年秋華賞、フラワーカップ、紫苑ステークスに続き4勝目。C・デムーロ騎手は2022年ジェラルディーナに続く同レース2勝目、同馬を管理する高野友和調教師は初勝利となった。

 2馬身差の2着には川田将雅騎手騎乗の12番人気ラヴェル(牝4=栗東・矢作厩舎)、さらに3/4馬身差の3着には坂井瑠星騎手が騎乗した2番人気ホールネス(牝4=栗東・藤原英厩舎)が入線。単勝1.9倍で断然の1番人気に支持されていたクリストフ・ルメール騎手騎乗のレガレイラ(牝3=美浦・木村厩舎)は直線追い込むも5着に敗れた。

決めた4コーナーのロングスパート

4コーナーから一気のロングスパート、後続を寄せ付けなかった 【photo by Shuhei Okada】

 実に鮮やかな復活劇。勝利から2年遠ざかっていた2022年の秋華賞馬スタニングローズをVロードへとエスコートしたのはクリスチャン・デムーロ騎手だ。

「今年、日本に来たのはGIを勝つため。自分自身、今年はGIで2着が多くて不甲斐なく思っていたので、ここで勝てたのはすごく感慨深いです」

 レースは海外トップ騎手の腕達者ぶりをまざまざと見せつけるものだった。ゲートで好発を決めると、先行したい馬たちを行かせて好位4番手をがっちりと確保。「リラックスした走りでしたし、道中も良い手応えで回っていました」とC・デムーロ騎手。そして3コーナー下りから前を行く3頭との差を徐々に詰めていくと、先頭を射程圏に入れたままギリギリまで追い出しを待つのではなく、4コーナー手前から一気にスパートをかけ、直線入り口ではもう先頭に立っていた。

「早めの仕掛けになりましたが、後ろから人気馬が来るのは分かっていましたし、前の馬たちは手応えがもうなかった。それならと、スタニングローズは手応えがあったので大丈夫だと思って、4コーナーからスパートをかけていきました」

 このロングスパートで早々とリードを広げていくと、そのまま後続を寄せ付けずに完封。この日の京都芝コースは前が残る傾向だったが、その特徴を存分に生かした好騎乗でもあった。振り返ると2000m芝で行われた第9Rの黄菊賞でも1番人気ミュージアムマイルに騎乗し、同じように4角スパートで突き抜けていた。もしかすると、この時点でC・デムーロ騎手の頭の中ではすでにエリザベス女王杯のVロードが出来上がっていたのかもしれない。

調教で好時計連発「やっと実戦に結びついてくれた」

待望の復活勝利、陣営も笑顔の花が満開だ 【photo by Shuhei Okada】

 スタニングローズの2年ぶり復活勝利はもちろん、馬自身の頑張りがあってこそ成し遂げられるものだ。昨年のヴィクトリアマイル12着後、左前脚の腱周囲炎のため長期休養。今年4月の大阪杯で約10カ月ぶりに復帰したが8着に敗れ、続くヴィクトリアマイル9着、GIIIのクイーンステークスでも6着と、3戦続けて結果を出せていなかった。ただ、着順こそ奮わなかったものの、1着との差は0秒5、0秒8、0秒2と悪くはない。

「今回は調教通りのパフォーマンスを出してくれました。やっと実戦に結びついてくれましたね」

 海外出張で不在だった高野調教師に代わり、報道陣の取材にそう答えたのは小川陽一調教助手。秋華賞を勝った2年前から特別に大きな変化はなかったものの、調教ではずっといい時計が出ていたという。だから、結果が出ていない時期も出来が悪かったというわけではない。

「ずっといい状態ではあったのですが、前走はトップハンデの斤量だったり、競馬では歯車がかみ合わなかったのだと思います」

 そうした中で迎えたエリザベス女王杯。1週前の坂路ではラスト1ハロンで11秒6を叩き出すなど変わらず好時計を連発し、「競馬前の雰囲気としてはかなり良かった。最終追い切りに乗ったクリスチャンも満足してくれたくらいでしたし、何の不満もなく送り出すことができました」。そしてC・デムーロ騎手の手腕が、最後のスパイスとして復活を後押しした。

残り少ないチャンスで再びバラの大輪

来年3月の引退までの残り少ないチャンスをつかんだスタニングローズ、さらにもう一花を咲かせたい 【photo by Shuhei Okada】

 サンデーレーシング所属の牝馬は6歳の3月が引退となるため、現役生活もあとわずか。スタニングローズは残り少ないチャンスを見事にものにし、再びバラの大輪を咲かせた。もし引退までにもう1走あるとしたら香港か、有馬記念か。

「5歳の牝馬ですが、フィジカル、コンディションは凄く良いです。この先はオーナーが決めることだと思いますが、この後も良いレースができる状態だと思います」

 引退までにさらにもう一花を、ジョッキーも笑顔で太鼓判を押している。また、C・デムーロ騎手と高野厩舎と言えば、次週のマイルチャンピオンシップでは昨年の覇者ナミュールでコンビを組む。2週連続でのGI勝利も十分に視野に入っているだろう。この日は高野調教師不在で勝ったことから、「もう1週間ぐらい、そのまま海外に残っていてもいいんじゃないかな(笑)」と、世界の名手の口も滑らかだった。

ルメール騎手「いい騎乗ができませんでした」

圧倒的1番人気に支持されたレガレイラは5着に敗れた 【photo by Shuhei Okada】

 一方、単勝1.9倍、圧倒的な支持を集めていたレガレイラは5着に敗れた。ゲートを上手に出て中団を確保したものの、鞍上のルメール騎手はもっと前のポジションが理想だったという。

「好きなポジションを取れませんでした。クリスチャンの後ろに行けたら絶対にいい競馬ができたと思いますが、良いスタートを切ってもいつも通りの走りだったので、ちょっと後ろ過ぎましたね」

 ならば、これまで通りに末脚にかける競馬となったが、馬群の中に閉じ込められる形となり前方の進路も開かなかった。

「直線でぶつかってしまい、スムーズな競馬ができませんでした。あらためて、この馬はアンラッキーです。絶対にGIレベルの馬なのですが、いい騎乗ができませんでした。ごめんなさい」と肩を落としたルメール騎手。狭いスペースを強引に割る形で最後は脚を伸ばしたものの、5着が精いっぱいだった。

 なお、最後の直線のルメール騎手の騎乗に関して、十分な間隔がないのに先行馬を追い抜いたとして過怠金50,000円(被害馬:シンティレーション、ハーパー)、同じく最後の直線でコンクシェル騎乗の岩田望来騎手が外側に斜行したとして過怠金30,000円(被害馬:シンティレーション)の制裁が下っている。(取材・文:森永淳洋)
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