史上初の偉業に挑戦 辻梨恵『心を尽くす』
辻 梨恵 【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】
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《グリーン=スティンプ:11 1/2フィート コンパクション:22mm》
心を尽くすラウンドだった。それは、この日ばかりではない。前日、そして、あすも同じである。辻梨恵の表情は実に穏やか。気がつけば、首位に立っていた。
忍耐が好スコアを運んでくる。特に印象的だったのはパー5・13番だろう。第1打を右に曲げて、第2打は目前の木がじゃまをする。PWで出すだけ-の状況。「もう、バタバタでした。それでも落ち着いていたことが良かったです。さすがに、1.5メートルのパーパットは緊張したけど…」と振り返る。
しかも、同組でプレーする安田祐香は12番から3連続バーディーを決めていた。プレッシャーのかかる場面でも、まったく動じるそぶりがない。「後半、スタートからひたすら耐える、ばかりでした。10番のパーセーブ、11番は3メートルのパーパットをカップインですから…」と、フーッと思い出しながらため息をつく。
ただし、流れを切らさないことが終盤、連続バーディーを呼び込む。15番、スライスして、フックになる超がつくほど難しい7メートルのバーディーを決めた。続く16番も6メートルのバーディーである。全身全霊のプレーは多くのギャラリーが共感したのだろう。1ホールごとに声援が大きくなっていった。
【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】
シード権を失って6シーズンぶりの復帰を目指す。もっかのメルセデス・ランキングは95位。確かに一発逆転はVしかない。「秋口になって、調子が良くなってきたのは、やはりパッティングです。いいスコアでプレーしていると、カップに入れたい、と気持ちが先走っていた」と、言葉を区切り、「良かったり、悪かったりするのは気持ちというか、精神面を一定に保っていないからでしょう。だから、基本中の基本、1ストロークを大事に、を徹底。そのためにはベストの準備をすることに尽くす。気持ちが大きく変わった」と、内面の変化を強調する。
「今年の春、吉田松陰先生の心を尽くす-という言葉に感銘を受けた」。集中は当然のことのように、心まで尽くさなければ、物事を成し遂げられないからだろう。こちらまで、良い響きが耳に残る。取材をしてちょっと得をした心持ちになった。
(青木 政司)
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