切れないバッテリー、魂の限り。 2024.11.03 FC東京 vs 湘南ベルマーレ マッチレビュー
【切れないバッテリー、魂の限り。 2024.11.03 FC東京 vs 湘南ベルマーレ マッチレビュー】
開始時の立ち位置 【ぺん】
各ポジションの嚙み合わせ 【ぺん】
■ハイライト
対するFC東京はGK野澤がスタメンに復帰。出場停止の安斎に代わってエヴェルトンが右WGに入った。そのほか9名は前節と同じメンバーとなる。
序盤はお互いに長いボールを使った展開。ともに左サイドからのアタックが多めで、東京は長友と遠藤、湘南は畑と平岡が目立っていた。
10分ごろからバックラインからの繋ぎに移行する両チーム。形になっていたのは湘南のほうで、畑の抜け出しを活用してチャンスを作った。東京はディエゴが中盤やサイドに降りてきて起点になろうとするが、孤立気味で苦し気な様子。
東京が糸口をつかみ始めたのは25分前後、プレッシングから。湘南がビルドアップに手ごたえを感じたのか、上福元からCBへの配球が増加。そこを見逃さずに前がかりのプレスをかけ、CBやWBのパスミスを誘った。しかし決定的なシュートにまでは至らない。
この試合最初の決定機は東京、39分のコーナーキック。エヴェルトンのキックをニアで遠藤がコースを変え、中央で東が合わせた。シュートは枠の外に飛んだが、シューターの身長が高ければ難なくネットを揺らしていたかもしれない場面だった。
42分の湘南、相手のプレスを受けつつも我慢しながらボールを繋ぐ。上福元のフィードが跳ね返されたところを再び拾い前線へ、章斗がボールを収めて田中が繋ぎ、平岡が反転。ハメ切ったと前がかりになっていた東京のプレスと入れ替わるように局面を打開した。外を走る畑が平岡からパスを受けて切れ込むと同時に、小野瀬と田中、平岡、福田がゴールに向かって走り東京守備陣を引き付ける。そして空いたスペースに遅れて入ってきた章斗がボールを引き取ると、ボックスの外から狙いすました右足でコントロールショットを決めて見せた。見事なゴールで湘南が先制する。
前半アディショナルタイムの東京。荒木のパスにエヴェルトンが抜け出し、上福元をかわしてシュートを放つが、ミンテがゴールカバーでクリア成功、その後オフサイドの判定となった。前半は0-1で湘南がリードして折り返す。
両チームともにハーフタイムでの交代なし。追いかける東京がエンジンをかけなおしたようにも見える立ち上がりだったが、試合を動かしたのは湘南。48分、ディエゴのパスを奪ってからのカウンター。田中から章斗を経由して福田と繋ぎ、上がってきた畑へ。ボックス内で中村と1vs1の状況を迎えると、カットインして右足を振り抜いた。シュートはブロックに入った中村の足に当たってコースが変わりつつも、サイドネットを揺らした。
58分も湘南。相手陣内右サイド、雄斗から中央の田中へ通すと、雄斗がカットインしてランニング。田中はミドルシュートを思わせる体制から裏を取った雄斗へスルーパス。ポケットでフリーになったが、シュートは野澤がセーブした。
65分に東京が3枚替え。左SB白井、CH小泉、右WG野澤零温が入り、長友、東、エヴェルトンがアウト。
対応するように湘南も選手交代。平岡に代えて奥野、章斗に代えて根本を投入。田中と奥野が横に並び、サイドに小野瀬と福田が出て1トップに根本を据える5-4-1に移行する。
東京は大きなチャンスが作れないまま試合終盤。85分は奥野が相手陣内でパスカットからそのままシュートまで持ち込むが、またも野澤のセーブ。
後半アディショナルタイム、東京のチャンス。ピッチ中央辺りからロングキック。途中出場の山下が競って流れたボールを遠藤が拾ってクロス、中で待っていた荒木が合わせるがシュートはポストにはじかれ、無人のゴールを目の前に高が押し込むがシュートは上空へ。絶好機を逃してしまう。
試合はそのまま0-2で湘南が勝利。98年以来26年ぶりとなるトップリーグでのリーグ戦4連勝を飾った。
■上がってきた基準
まずはFC東京の振る舞いについて。プレビューでも触れたが、前がかりで積極的なプレスからのカウンターに軸足を置いているチームである。DFラインは相手FWと同数を受け入れ、4-2-4のような陣形で圧力をかけてくる。SBも果敢に対面の選手にアプローチし、できるだけ高い位置でボールを奪う志向を表現していた。
ピッチ上の並びとしては荒木がやや後ろ気味で田中のマークを担当し、東が浮こうとする平岡をケア。畑に対しては中村が背後を消しながらアプローチし、チームとしてマンツーマンで守りボールを奪おうとする狙いが伺えた。
東京のプレス図。GKの広い守備範囲とCBの対人能力を拠り所にしたハイプレスからのカウンター。 【ぺん】
どちらもスペースでフリーの選手を作りゴールへ向かうという主目的を持っているが、副次的な効果として背後を狙う湘南の選手に相手が付いていくことにより、今度は手前にスペースが空く点がある。DFラインから中央でフリーになった選手へパスを通した場面がいくつか生まれたのは、背後を狙い続ける前線の選手たちが見せた頑張りの結果だろう。
湘南の狙い。相手が空けた背後を突いていき、相手下がったら今度は手前を使う。 【ぺん】
そしてこの試合の肝となったのは湘南のネガティブトランジション、つまりボールを失った瞬間の意識と動きにある。何度も触れている通り、東京が持つ最大の武器は前線4枚による速いカウンター。自陣からのロングカウンターでも完結させる技術と走力を兼ね備えており、湘南は相手の良さを発揮させないための対策が必要だった。
この点において輝いたのはアンカーの田中。相手がボールを奪った直後のパスを刈り取って二次攻撃につなげたり、遅らせて味方が帰陣する時間を稼いだ。福田も懸命なプレスバックで相手ボールホルダーを邪魔し続け、細かいファールでカウンターに持ち込ませなかった。
もちろん二人以外も集中した切り替えとさぼらないアプローチで東京の武器を封じ込め、監督が話す「自分たちができることをまずはやろうと。それを持ってFC東京さんに対してぶつけていこう、と準備してきたものをそのまま出してくれたからこそ、こういう結果になったと思います」という点に繋がったのだと推測する。特別な戦術や奇策、幸運なゴールではなく、攻守における約束事の徹底やピッチ上の状況に応じた判断といった、ベースとなる部分のレベルが底上げされて掴んだ結果だったといえるだろう。
最後に湘南のプレスについて。基本的には大きな変化はないが、内側を切りながら外へ追い込んでいくのが狙いであった(広島戦とは相手のシステムが異なるために動きは変わっているけども)。東京は外⇒外と徐々に追い込まれ、WGで手詰まりになるシーンが続く。単独で何とかできる安斎や俵積田がいれば状況は変わったのだろうが、個人任せにするには難しい状況だったようにも思えた。
田中とミンテがインタビューで話している通り、荒木のポジショニングが上手で注意を払う必要があったけれども、ディエゴと重なり気味で前線が機能しているとは言えないように見えた。東京にとって最大の決定機(後半アディショナルのシーン)は山下の競り合いから生まれているので、カウンター以外の形からチャンスを作る場合、FWはタイプが異なる選手を組み合わせる方がはまるのかもしれない。
湘南も2点リードして迎えた試合終盤は、5-4-1に移行してで相手がカウンターのために使いたいスペースを消す形で対応。田中と奥野の2ボランチで荒木をケアする策も機能していた。
湘南のプレス。外へ追い込んで縦切りで阻む。 【ぺん】
試合結果
J1リーグ第35節
FC東京 0-2 湘南ベルマーレ
東京:なし
湘南:鈴木章(43')、畑(49')
主審 上田 益也
タイトル引用:Official髭男dism/宿命
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