【週刊グランドスラム275】第49回社会人野球日本選手権大会の開幕戦でNTT東日本のルーキー・石井 巧が躍動する

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7回裏に5点目のホームを踏んだNTT東日本の石井 巧(左)は、代打に向かう同期の池本真人(背番号23)と言葉を交わす。 【写真=古江美奈子】

 3安打1打点の活躍で、社会人での全国初勝利を味わったNTT東日本の石井 巧は、満面の笑みでダグアウトから引き上げてきた。「緊張で足が震えていた」という都市対抗とは違い、攻守ともに落ち着いてプレーすることができたのは、「しっかり準備してきた成果」だと言う。10月29日から京セラドーム大阪で始まった第49回社会人野球日本選手権大会の開幕戦は、6対0でNTT東日本がマツゲン箕島硬式野球部に勝利した。
 石井巧は、作新学院高2年春にショートのレギュラーをつかみ、夏の甲子園に出場。秋からは主将を務め、四番として2年連続で挑んだ3年夏の甲子園では、準々決勝でバックスクリーン左に3ラン本塁打を叩き込んだ。中央大へ進むと、さらに守備に磨きをかけて存在感を示す。そして、今春にNTT東日本に入社し、静岡大会から二番ショートで経験を積んでいる。順調なスタートを切ったように見えるが、石井巧自身は「周りが見えていない」と何度も口にする。
「春先から都市対抗までは、余裕が持てずに自分のことしか考えられませんでした。打席でも守備でも、あれこれと考えてしまうんです。都市対抗は、日本一を目指していたのに一回戦敗退。日頃から常に試合を想定した練習、相手をイメージしながらの練習が必要だと痛感しました。特に守備では、もっと冷静に状況を把握することが必要。NTT東日本の二遊間を守っているという意識を、しっかり持たなければいけません」
 そう語るように、石井巧は「NTT東日本の二遊間を守ること」を重く受け止めている。重圧ではなく誇りだからだ。
「歴史と伝統のあるチームですから、それだけの責任があります。また、新人だから多少のミスは仕方ないと思われるのは嫌なんです。守らせてもらうからには、それに相応しい人間にならなくては」

都市対抗は一回戦負け、U-23W杯は欠場を強いられたからこそ

 日本選手権で準優勝した2022年はセカンドに丸山雅史、ショートには主に中村 迅が入った。都市対抗を制した2017年は、下川知弥と福田周平(現・オリックス)が二遊間を組んでいた。常に目標は日本一。そんなチームの先輩たちが受け継いできたバトンだからこそ、大事につないでいきたい。都市対抗後は、セカンドも守るようになった。この試合でも8回からセカンドに回り、ショートには同期の池本真人が入った。「普段は丸山さんと二遊間を組んでいますが、僕の気づかないところで、さりげなくカバーしてくれていたのだと感じました」と言う。この気づきが、ステップアップのきっかけになることを期待したい。
 9月に中国・紹興市で行なわれた第5回U-23ワールドカップでは、初の日本代表に選出された。「日本代表は目標のひとつでした」と胸を躍らせていたのだが、現地入りして間もなく、市中感染症肺炎に罹患。発熱と強い倦怠感に襲われてしまう。快復しても出場機会のないまま、仲間たちが大会連覇を成し遂げるシーンを見届けた。
「やってやろうと乗り込みましたが、肺炎には勝てませんでした。出場できなかったのは残念だけど、選考合宿からみんなと仲よくなれて、本当にいい雰囲気でした。だから、優勝はみんなと同じように喜べた。ずっとスタンドにいましたが、決勝だけはベンチに入らせてもらって、僕も歓喜の輪に加わることができました」

5回裏にはリードを4点に広げる二塁打を放つなど、石井巧は3安打1打点の活躍で勝利に貢献した。 【写真=古江美奈子】

 そうして迎えた日本選手権。夏の悔しさを晴らすかのように溌溂とプレーした一回戦は、堅実な守備よりも打撃が目立った。積極的にバットを振り、2本の二塁打を含む3安打をマーク。だが、試合後に北海道日本ハムの実兄・一成から届いた連絡では「パワーがないな。もっと飯を食え」と突っ込まれた。4対0とリードを広げた5回裏、なおも一死二塁の場面で放ったフェンス直撃の左越え二塁打のことだろう。
 ほんの3か月前だが、石井巧は東京ドームで話を聞いた時よりも落ち着いていて頼もしく感じた。そして、責任感が増したようにも見える。作新学院高で主将を、中大では副将を担ったように、キャプテンシーも持ち合わせているからだろう。豊かな潜在能力を存分に発揮して、NTT東日本の、さらに社会人野球の顔になってほしい。まずは、ダイヤモンド旗を目指して二回戦に臨む。
【取材・文=古江美奈子】

次回は11月11日にリリースします。

【電子版はオールカラーになります】

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著者プロフィール

1949年に設立した社会人野球を統轄する(公財)日本野球連盟の公式アカウントです。全国の企業、クラブチームが所属し、中学硬式や女子野球の団体も加盟しています。1993年から刊行している社会人野球オフィシャル・ガイド『グランドスラム』の編集部と連携し、都市対抗野球大会をはじめ、社会人野球の魅力や様々な情報を、毎週金曜日に更新する『週刊グランドスラム』などでお届けします。

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