【週刊グランドスラム275】第49回社会人野球日本選手権大会の開幕戦でNTT東日本のルーキー・石井 巧が躍動する
7回裏に5点目のホームを踏んだNTT東日本の石井 巧(左)は、代打に向かう同期の池本真人(背番号23)と言葉を交わす。 【写真=古江美奈子】
石井巧は、作新学院高2年春にショートのレギュラーをつかみ、夏の甲子園に出場。秋からは主将を務め、四番として2年連続で挑んだ3年夏の甲子園では、準々決勝でバックスクリーン左に3ラン本塁打を叩き込んだ。中央大へ進むと、さらに守備に磨きをかけて存在感を示す。そして、今春にNTT東日本に入社し、静岡大会から二番ショートで経験を積んでいる。順調なスタートを切ったように見えるが、石井巧自身は「周りが見えていない」と何度も口にする。
「春先から都市対抗までは、余裕が持てずに自分のことしか考えられませんでした。打席でも守備でも、あれこれと考えてしまうんです。都市対抗は、日本一を目指していたのに一回戦敗退。日頃から常に試合を想定した練習、相手をイメージしながらの練習が必要だと痛感しました。特に守備では、もっと冷静に状況を把握することが必要。NTT東日本の二遊間を守っているという意識を、しっかり持たなければいけません」
そう語るように、石井巧は「NTT東日本の二遊間を守ること」を重く受け止めている。重圧ではなく誇りだからだ。
「歴史と伝統のあるチームですから、それだけの責任があります。また、新人だから多少のミスは仕方ないと思われるのは嫌なんです。守らせてもらうからには、それに相応しい人間にならなくては」
都市対抗は一回戦負け、U-23W杯は欠場を強いられたからこそ
9月に中国・紹興市で行なわれた第5回U-23ワールドカップでは、初の日本代表に選出された。「日本代表は目標のひとつでした」と胸を躍らせていたのだが、現地入りして間もなく、市中感染症肺炎に罹患。発熱と強い倦怠感に襲われてしまう。快復しても出場機会のないまま、仲間たちが大会連覇を成し遂げるシーンを見届けた。
「やってやろうと乗り込みましたが、肺炎には勝てませんでした。出場できなかったのは残念だけど、選考合宿からみんなと仲よくなれて、本当にいい雰囲気でした。だから、優勝はみんなと同じように喜べた。ずっとスタンドにいましたが、決勝だけはベンチに入らせてもらって、僕も歓喜の輪に加わることができました」
5回裏にはリードを4点に広げる二塁打を放つなど、石井巧は3安打1打点の活躍で勝利に貢献した。 【写真=古江美奈子】
【電子版はオールカラーになります】
ほんの3か月前だが、石井巧は東京ドームで話を聞いた時よりも落ち着いていて頼もしく感じた。そして、責任感が増したようにも見える。作新学院高で主将を、中大では副将を担ったように、キャプテンシーも持ち合わせているからだろう。豊かな潜在能力を存分に発揮して、NTT東日本の、さらに社会人野球の顔になってほしい。まずは、ダイヤモンド旗を目指して二回戦に臨む。
【取材・文=古江美奈子】
次回は11月11日にリリースします。
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