【天皇賞・秋】「倍速で走っている」武豊騎手も驚いた、ドウデュース32秒5異次元末脚で4年連続GI制覇

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武豊騎手&ドウデュースが天皇賞・秋を制覇、32秒5の異次元末脚で大外一気の差し切りという離れ業を見せた 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 秋の中距離チャンピオン決定戦、第170回GI天皇賞・秋が10月27日に東京競馬場2000m芝を舞台に争われ、武豊騎手騎乗の2番人気ドウデュース(牡5=栗東・友道厩舎、父ハーツクライ)が優勝。道中後方2番手から直線大外を一気に差し切り、4つ目のGIタイトルを手にした。良馬場の勝ちタイムは1分57秒3。

 ドウデュースは今回の勝利で通算15戦7勝(うち海外3戦0勝)。重賞は2021年朝日杯フューチュリティステークス、22年日本ダービー、23年京都記念、23年有馬記念に続く5勝目。騎乗した武豊騎手は保田隆芳元騎手に並ぶ歴代最多タイの天皇賞・秋7勝目、春秋通算では歴代最多を更新する15勝目となった。また、同馬を管理する友道康夫調教師は同レース初勝利となった。

 1馬身1/4差の2着には松山弘平騎手騎乗の9番人気タスティエーラ(牡4=美浦・堀厩舎)、さらに半馬身差の3着には岩田望来騎手騎乗の8番人気ホウオウビスケッツ(牡4=美浦・奥村武厩舎)。1番人気に支持されていた川田将雅騎手騎乗のリバティアイランド(牝4=栗東・中内田厩舎)は直線伸びず13着に敗れた。

後方2番手からの競馬は武豊騎手の決め打ち

レース後のウイニングランではスタンドのファンから大歓声、武豊騎手は何度もガッツポーズをして応えた 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 鳥肌が立つ豪脚。ドウデュースが前を行く全ての馬を抜き去った瞬間、思わず声が出てしまった。凄い――そんな感想しか出てこない。主戦・武豊騎手もレース後の共同会見では同じフレーズで愛馬を手放しで絶賛していた。

「本当、凄い馬だなとあらためて思いました。一段と強くなった感じがします。凄かったですね」

 コンビを組んで3年。ダービー、有馬記念などをともに制し、その背中を誰よりも知る名人ですらドウデュースのさらなる奥深さを初めて知る――そんな秋の盾だっただろうか。そして、その奥深い懐からドウデュース本来の能力を引き出した鞍上の手綱さばきと度胸もまた、さすがとしか言いようがない。

 レースは勢いよくゲートを飛び出した最内のベラジオオペラを外から制する形でホウオウビスケッツがハナへ。先週の菊花賞とは対照的に隊列はすんなりと落ち着きはじめ、道中で目立った動きを見せたのは中団の外から3番手グループへと押し上げたリバティアイランドくらい。この時点でペースは上がっていないのかと感じたが、果たして前半1000mの通過は59秒9、このメンバーのGIとしては明らかなスローだった。その中でドウデュースはなんと後方2番手の控える位置。今春のドバイのようにスタートダッシュに失敗したわけではない。武豊騎手の“決め打ち”だったのだ。

「前につけるプランは全く考えていなかったです。ある程度は腹をくくって、ラストの末脚にかけるレースをと思っていました。ペースがちょっと遅いなと思っていましたが、もうこれしかないと思っていました」

「良い時のドウデュース。ダービーを思い出した」

スローペースで明らかな前残りの中、まるで違うスピードでインの馬たちをまとめてナデ斬った 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 いくら末脚にかけると言っても、スローペースで大外をブン回せば先頭まで届かない恐れもある。それでも武豊騎手はインを突く選択肢すらも最初から捨てていた。

「最後の直線で広い外に出せるポジションをと思って、あの位置に。馬込みに入れる選択肢もなかったですね。2コーナーで外に馬(ジャスティンパレス)がいて、これは下げ切った方がいいと思って下げたくらいですから」

 狙うは大外一点突破。「春は僕も上手くエスコートできないレースもあった。今回は絶対に結果を出さないといけないと、強い気持ちで臨んだ」。そんなレジェンドの気持ちに応えるように、ドウデュースは再び覚醒する。

「手応えが本当に良くて、ダービーを思い出したくらい。本来の、良い時のドウデュースだなと思いました」

 4コーナーをスムーズにコーナリングし、進路を遮るものは何もない。目の前にはビクトリーロードが広がっている。だが、まだ鞍上の手は動かない。ギリギリまで溜めに溜めて、全てを解き放たれたのは残り400mの標識を過ぎてから。そしてここから、ドウデュースの驚愕の末脚にレースを見守った全ての人たちが度肝を抜かされることになる。明らかな前残りで先行勢が粘り込む中、大外からまるでスピードが違う伸びで後方2番手からインの馬たちをまとめてナデ斬ってしまったのだ。

 それも、ようやく届いたわけではない。2着タスティエーラを1馬身1/4突き放してのゴールなのだから、ドウデュースが繰り出した末脚がいかに信じられないほど強烈だったか。計時したラスト3ハロンのタイムも極限を超えたのではないかと思う32秒5。異次元すぎるパフォーマンスを直に体感した武豊騎手は、らしいジョークを挟みながらこう振り返った。

「倍速で走っているような(笑)。前を走っている馬たちも強い馬ですが、届いたというわけではなく完全に差し切ったので凄い脚でしたね。ゴールした後も速かったので、あんまり片手で乗らない方がいいなと思って、すぐに(ガッツポーズを)やめました(笑)」

次はJC、友道調教師「今が一番強い」

武豊騎手は友道厩舎スタッフの手腕を絶賛、次走に予定しているジャパンカップでも万全の状態でゲートインしてくれるだろう 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 ダービーで3歳馬の頂点に立った後は凱旋門賞を含めて何度も苦杯を味わってきた。しかし、そのたびに何度も立ち上がってきた不屈の馬。そして、今回もまた力強いカムバックを果たした精神力、タフネスさはまさに特筆ものだ。だからこそ、2歳から4年続けてGIを勝てるのだろうし、その距離も朝日杯FSの1600m、ダービーの2400m、有馬記念の2500m、天皇賞・秋の2000mと多彩。武豊騎手も「普通、できることではない。GIの中でもトップレベルのGIを4年連続ですから」と強調したように、この実績を並べるだけも異能すぎることが分かるというもの。そして次はもちろん、このGIコレクションの中にジャパンカップを加えたい。

「馬の強さもさることながら、レースに向けた仕上げ、レース後のケアなど、長く良い走りの維持ができるのは友道厩舎スタッフの力。さすがだなと思いますね。ドウデュースもタフな馬なので引き上げてきた時にはもうケロッとした感じでしたし、次に向けてまた良い状態にしてくれると思います。次は強い海外馬も来るので、日本代表として迎えたいですね」

 武豊騎手からJCへ向けてのバトンを再び託された友道康夫調教師は春との違い、そしてここに来てのさらなる成長を次のように語っている。

「今年春のドバイ、宝塚記念では馬っけがひどくてイレ込んでいましたが、今日は装鞍所、パドックにかけてすごく落ち着いていました。夏の放牧から帰ってきた後もやんちゃな面がなくなっていましたし、大人になったのかなと思いましたね。本当に手がかからない馬で、調教でも好不調の波が少ない。今が一番強いと思いますね」

 ドウデュース、ラストシーズンの秋初戦。まずはこれ以上ない形の勝利を飾った。さあ、JC、有馬記念と残る2戦はどのような競馬で驚かせてくれるのだろうか。期待と楽しみしかない。(取材・文:森永淳洋)
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