最終戦9回は菅野か、大勢か。(CS継投考察)

note
チーム・協会
【これはnoteに投稿された三木田龍元さんによる記事です。】
野球談議をする指導者コミュニティの中で、とある高校の先生から、

「私は9回は大勢かなぁと思っていたのですが、菅野を引っ張りました。絶対勝つなら、9回1死2塁で大勢かなと。菅野に気を使ったのか、大勢が連投だったからなのか。事情はもちろんあるかと思いますが、 三木田さんはここはどうお考えでしょうか?」

とご質問をいただきました。

今回のセ・リーグ クライマックスシリーズ(以下:CS)のベイスターズvsジャイアンツは、継投について学びになることがたくさんあり、考えをまとめようにも長くなりそうだったので、久々にこのnoteを使って書いてみようと思います。

結論から言うと、(私がもし決断する立場だとしたときに)
9回表は阿部監督と同様の判断で菅野投手を続投させたと思います。

理由は大きく下記3点。
1、4連投は絶対に避けたかったから
2、延長を見越したときに投手が残っていなかったから
3、日本シリーズや将来を見据えたときに無理をさせられなかったから


データも交えつつ詳細に書いてみます。

1、4連投は絶対に避けたかったから

まずは1点目の「4連投は絶対に避けたかったから」について。
ここ数年、リリーフ陣の運用については千葉ロッテマリーンズの吉井監督を筆頭に、丁寧なマネジメントが行われるようになりました。

その中で、昨今のNPB界で共通認識としてあるのが
というものです。
データで見ても明らかです。(いくつかXの投稿を引用させていただきます)
上記2つはペナントレースでのデータにはなりますが、「3連投」というものをすべての球団が明確に避けていることが見て取れると思います。
ましてや4連投・5連投などはめったになく、もし発生すると批判が集まるでしょう。

今回のCSという短期決戦においては、どうしても一定のブルペン陣(いわゆる「勝ちパターン」)に負荷がかかりやすいです。
その中で「3連投を避ける」という部分が実際に遂行できていたのか見てみます。

(①=第1戦で登板、②=第2戦で登板、、、)

【DeNA リリーフ】
・山崎 ①③⑤ →0連投
・坂本 ①②④⑥ →2連投
・堀岡 ①⑤ →0連投
・伊勢 ①②⑤⑥ →2連投
・森原 ②③⑥ →2連投
・佐々木 ③ →0連投
・中川 ③④⑥ →2連投
・ウェンデルケン ④⑤⑥ →3連投

【巨人 リリーフ】
・高梨 ①③⑤⑥ →2連投
・赤星 ①③ →0連投
・横川 ① →0連投
・バルドナード ②④⑤⑥ →3連投
・ケラー ②③④⑥ →3連投
・船迫 ③④⑥ →2連投
・大勢 ③④⑤ →3連投
・菅野 (①)⑥ →連投なし

両軍ともにリリーフ登板した投手は合計8名ずつでしたが、
3連投となったのは、DeNAが1名だったのに対して、巨人は3名。
そして仮に、第6戦で大勢投手を起用してしまうと異例の4連投となる形でした。

大一番での第6戦を迎えたときに、
DeNAは、結果的に3連投となったウェンデルケン投手を除いた上記7名の誰が投げても3連投にはならない状態。特にクローザーの森原投手は④⑤で投げていないフレッシュな状態でした。

対して巨人は、クローザーの大勢投手を第3~5戦で3連投。
迎えた第6戦を、先発して中3日の菅野投手・中2日のグリフィン投手をリリーフに回さなければいけない状況で、大勢投手も登板すれば4連投という疲弊した状態で迎える形になりました。

以上、1点目から長くなりましたが、菅野投手の続投理由=大勢投手を投げさせなかった理由の1点目をまとめると、
【3連投すら避けられている昨今の投手事情において4連投を避けたかったから】ということになります。

2、延長を見越したときに投手が残っていなかったから

今回のCSはロースコアの展開が多く、リリーフ陣の負担が大きくなるシリーズでした。そんな中で迎えた最終第6戦も終盤まで2-2と重たい展開で、延長も視野に入れなければならない状況でした。

特に巨人においてはレギュラーシーズンのアドバンテージにより、12回引き分けでも通過できる状況だったため、勝ち切ること以上に守り切る意識が働いていたと思います。

ここで8回終了時での両軍の残っているリリーフ陣はどうだったか。

【DeNA】4名
・吉野  →③で先発(3イニング)
・佐々木 →③でリリーフ
・堀岡  →①⑤でリリーフ
・森原  →②③でリリーフ

→吉野投手以外の3名は、疲労の少ない状態でマウンドに上がれる状況

【巨人】3名
・赤星   →①③でリリーフ
・グリフィン→③で先発(4イニング)
・大勢   →③④⑤でリリーフのため4連投リスク

→疲労の少ない状態でマウンドに上がれる状況だったのは赤星投手のみ


上に述べた延長12回を守り切るという展開を見越したときに、9回頭もしくは9回途中から大勢投手を使ってしまうと、
そもそも大勢投手が4連投になることに加えて、グリフィン投手・赤星投手の2名で10~12回の3イニングを戦わなければいけない状況でした。

ですので、
・8-9回 菅野
・10/11回 グリフィン/赤星 (戸柱選手など左打者の打順巡りに合わせて順番を決める)
・12回 大勢
というプランだったかと思います。

実際に試合後にこんな記事も出ていました。

その点、DeNAはもし9回表に勝ち越せなくても森原投手を9裏に投入したのではと思います。森原投手は4・5戦での登板がないため、延長になっても回跨ぎが可能な状態だったと推察されます。

・9-10回 森原
・11回 佐々木
・12回 堀岡 (吉野)
こんなプランだったのではないか、と勝手に予想しています。

加えて、菅野投手の1イニング目となった8回表は文句のつけようがない完璧な投球での三者凡退でした。
8回が危ない内容だったらまた話も変わったかもしれないですが、あの投球内容+上記の懐事情を考えれば菅野投手を迷いなく9回に送り出すのは納得感のある決断だったと私は思います。

ということで、菅野投手の続投理由の2点目は、
【延長を見越したときに残っている投手枚数が厳しく菅野投手に9回もいってほしかった+菅野投手の8回の投球が完璧だった】ということになります。

3、日本シリーズや将来を見据えたときに無理をさせられなかったから

上に述べた2つの理由とも付随しますが、
今回CSを通過すると1週間も空かずに日本シリーズを迎える日程でした。

となると、今回のCSでリリーフ陣を酷使してしまうと日本シリーズが非常に苦しくなり、特に大勢投手が日本シリーズで投げられない・状態が悪いという形になると巨人の日本一の確率はがくっと落ちてしまいます。

巨人はレギュラーシーズンも首位通過し、目指すところは当然「日本一」だったはずです。だからこそ、日本シリーズでの運用をCS中から考えるのは首脳陣として必然の考えです。だからこそ大勢投手の4連投やグリフィン投手の中2日は極力避けたかった。
菅野投手には負担がかかるものの回跨ぎをしてもらい、9回で決め切りたかったというのがベンチの思いだったと推察されます。

また、チームを中長期的に見据えている首脳陣の立場からすると、来年以降も勝ち続ける組織でなければいけません。だからこそ若い大勢投手に今年に限って無理をさせる選択は避けたかったのではないでしょうか。

ということで、最後の理由としては【日本シリーズや将来を見据えたときに、若い大勢投手に無理をさせられなかったから】となります。




さいごに



こうしてデータも踏まえて見てみると、DeNAは初めから第6戦までもつれることも見越した運用ができていたと思います。

もちろん第1-3戦を勝てたことで精神的ゆとりが大きかったでしょうが、
負けた第4・5戦では森原投手を起用せず、坂本投手・山崎投手・伊勢投手・中川投手などの主要リリーフ陣はどちらか1戦で投げていません。
そうした状況で第6戦を迎えられたためリリーフ陣のパフォーマンスが非常に高かった。

対して、巨人は予想外に3連敗からスタートし、もう一戦も落とせないという状況になってしまったことで、すべての試合をベストのリリーフで手札を切っていかなければならず、
・第3戦の1点負けの9回
・第4戦の3点勝ちの9回
という展開でも大勢投手を投入せざるを得なかった。

そのしわ寄せが最終第6戦に響いた形となりました。


偉そうに書いてきましたが、野球とくに継投については「たられば」がつきもので、私も今の立場で継投をするときは日々後悔・反省ばかりです。

今回は推測で書いている部分も多く、あくまで一個人の意見であり、実際の現場での緊張感や事情については計り知れないばかりです。

あくまでも特定の球団やシーンの批判をしたいわけではなく、個人的な意見をつらつらと書かせていただいたことをご了承いただいたうえで、楽しくここまで読んでいただけたのなら嬉しいです。

日本シリーズもどのようなブルペンの駆け引きが見られるか、を楽しみに待ちたいと思います!野球はやっぱり面白い!
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