【週刊グランドスラム273】名古屋アジア競技大会制覇に向けて強化を続ける社会人日本代表
第5回U-23ワールドカップで優勝に導いた社会人日本代表のスタッフ。左から山田幸二郎コーチ、加藤 徹ベンチコーチ、川口朋保監督、玉野武知コーチ。 【写真=宮野敦子】
石井監督が就任した2017年から、社会人日本代表は大きな変革に取り組んだ。まず、監督を中心に強化委員会で実施していた選手選考を透明化。各地区の委員が目立つパフォーマンスの選手をリストアップし、その選手を日本代表のスタッフが視察した上で全日本ジュニア合宿に招集する。場合によっては11月下旬から1か月間、台湾で開催されているアジア・ウインター・ベースボール(AWB)に派遣し、総合的な判断で選出する流れを作った。
また、コロナ禍で多くの公式戦が中止となった2020年には、地域を跨いだ移動ができないことを逆手に取り、全日本ジュニア強化合宿を東日本、西日本の2か所から6か所に拡大。さらに、弾道測定器・ラプソードなどを用いて投手、打者の持てる力や特長を数値化し、それを公表して選手たちの目標設定を明確にした。加えて、選手強化を進化のサポートと位置づけ、スポーツ医学、スポーツ心理学も含めたあらゆる部門のエキスパートをスタッフに登用する。
そうして、2022年の第4回U-23ワールドカップに初めて社会人だけで出場し、見事に優勝して若い世代の成長を確認。ただ、昨年の第19回アジア競技大会は攻撃面が振るわずに銅メダルだったため、川口監督は自身の経験も踏まえて選手選考や戦い方をアップデートする。そうして、アジア競技大会から2か月後の第30回アジア野球選手権大会では王座を奪還し、今年も第5回U-23ワールドカップで連覇を達成している。
11月23日からは例年通りAWBで34名の選手が異文化でのプレーや生活を経験し、来年は第31回アジア野球選手権大会、2026年には名古屋市で開催される(野球競技は岡崎市・豊橋市の予定)第20回アジア競技大会に臨む。
チーム編成も勝利を目指す戦いも“人の力”
「社会人野球は、かつてのプレーヤーが引退後も後進の指導に尽力し、発展させてきた歴史があります。それは、もちろん加盟企業の深い理解があってこそ。現在も、日本代表スタッフに入っていただく際には、所属企業にお願いに伺うわけですが、その際には『うちの○○を使っていただいて』と協力を快諾していただくのと同時に、彼らが企業人としてもしっかり貢献していることを確認できる。社会人野球OBは本当に立派だなぁ、と感心しながら、後輩たちのために汗をかいている姿を見ています」
自身もバルセロナ五輪を経験している坂口裕之アスリート委員長は、「人の力」を引き出して社会人日本代表の活動を活性化している。 【写真=宮野敦子】
日本代表候補に選出されている選手は、強化合宿などに招集される際、所属チームの指導者から「日本代表で経験したことをフィードバックしてほしい」と指示されるケースが多い。そうした空気が、社会人野球の活性化にもつながっており、ファンに向けても『Players Card』の制作などで新たな社会人野球の魅力を作り出している。日本選手権の終了後もAWBに出場するように、社会人野球はシーズンオフも動き続けている。
【取材・文=横尾弘一】
【電子版はオールカラーになります】
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