「全国の子どもたちの運動量や機会の確保を」侍ジャパン 唐木恵惟子 競技と教育から描くBaseball5の未来像
【©白石怜平】
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「第2回 WBSC Baseball5 ワールドカップ 2024」の侍ジャパンBaseball5代表である唐木恵惟子選手(ジャンク5)。
野球やソフトボールへの”恩返し”から始まった競技人生は、チームへの愛着そして高い目標の設定などから高みへと登ってきた。
今年4月のアジアカップでは優勝メンバーの一員となり、さらにステップアップして帰ってきた。
そこからすぐに真剣勝負の舞台が揃い、このワールドカップへと進んでいく。
リーグ戦では代表経験をチームに還元
「アジア一を獲ったからこそ次は世界一をとりたいと思ったので、”優勝して良かった”で終わるのではなく、もう一度ワールドカップでの代表入りに向けてすぐに気持ちを切り替えました」
そんな中、日本のBaseball5では新たな取り組みが始まった。初のリーグ戦である「B5.LEAGUE KANTO 2024」が開幕。5STARsなど代表選手が所属するチームと定期的に真剣勝負する場ができたのだ。
「B5.LEAGUE KANTO 2024」では代表選手同士で対戦機会がある 【©白石怜平】
「日本選手権の優勝チームという自覚を全員が持ってスタートしました。今リーグ戦は負けなしで6戦全勝(2戦は不戦勝)なのですが、ここで”勝ち続けること”に意味を感じながら来年2月の日本選手権に臨めるので、いい流れができています」
日本代表を経験し、唐木も視野が広がったという。ここで得た経験をチームに還元している。
「日本は女子選手が強くて勝てた試合があったので、ジャンク5でも自分たちが六角(彩子)さんや數田(彩乃)さんみたいに、『女子選手が強いからチームが強いよね』と言ってもらえるようになりたいと感じました。2人を見習って(大嶋)美帆さんと『こうしたらいいよね』などと話しています」
大嶋(写真左奥)とは共有しながらスキルを高めている 【©白石怜平】
自身が感じているソフトボールとBaseball5の違いとは?
「グラブを使えばハンドリングで捕球できるのが、Baseball5では通用しないです。Baseball5では打球を両手で捕らないといけないので、基本が大事になってきます。この点で、ソフトボールでも守備で捕球も基本に忠実になりました。
また、ソフトボールの経験が活きた点として野球にはないスピード感があります。打球の速さもそうですが捕った後のステップも、野球はソフトボールより1回ステップが多いと思うのですが、それだとBaseball5はセーフになってしまう。
ソフトボールはステップを少なく投げられるので、そのメリットは活かせると感じています。
私は大学生の時にソフトボールとBaseball5の両方をやっていたのですが、それぞれが活きるというのがあったので、どちらをやってもプラスでした」
それぞれの競技が互いにスキルを高める相乗効果をもたらしていた 【©白石怜平】
「バッティングだと味方が出塁したらいかにチャンスを広げるか、ランナーを確実に還して1点を取ることに重点を置いています。
守備では特に男子3人で出たら私はファーストなので、送球が少し逸れていても捕らないと務まらないです。みんなのいいプレーを無駄にしないように心かげています。
守備では一塁手を務める 【©白石怜平】
なので、私は声を出していい雰囲気をつくることが自分の役割だと考えています。守備に就く時はみんなに声をかけて、アウトカウントは目を合わせて確認することを意識してプレーしています」
チームのムードメーカーの役割も担っている 【©白石怜平】
「私はソフトボール部で監督兼選手だったので、教えながら試合でも指揮も執っていました。なので、試合では自分を表現することができました。
一方、Baseball5で私の役割は自分を犠牲にしてでも後ろに繋ぐことだと考えています。チームが勝つために素直に役割を全うするだけなので、抵抗などは一切ないんです。打席向かう時にネクストの『島さん任せるからね!』と声をかけたりもしています」
ジャンク5が行う教育での普及に共感
毎月同大学で行われている地域の子どもたちを対象にした教育プログラムや、特別支援学校での体験会などにも参加した。唐木はその意図や想いについて語った。
「Baseball5は勝負としての競技性もそうですが、教育の観点でも大きな魅力があります。
野球やソフトボールは道具などでお金がかかるというのは私も感じていたので、ボール一つでできるBaseball5は最初にやってみる競技としては、親御さんにとってもハードルが低く始められるスポーツだと思います。
運動量が確保できるスポーツなので、ボールを触ったり運動を始めるきっかけにもなるのではないかと。
ジャンク5でもユースやキッズで勝てる選手を将来輩出することがあったらとても嬉しいことです。加えてBaseball5を通じて、子どもたちの運動量や機会の確保を全国でできたらと考えています」
9月の「新川公園野球フェス2024」でも多くの子どもたちが競技を体験した 【©白石怜平】
「アジアカップに行って感じたのですが、会場が韓国のオリンピックパークで行ったので、競技を観に来ていない人の目につくところだったんです。『ここで何をやっているの?』と聞かれたことも多かったんです。
場所にとらわれずどこでもできるのが魅力なので、多くの方の目に留まる場所でできると知るきっかけが増えると感じています」
ワールドカップ、その先を見据えて
「キューバといった世界トップレベルの国と日本との違いは何か。戦術でも違いがあると思うので、それを現地で直接知れる機会だと思います。
私も相手をリスペクトしながら、その違いを吸収したいです。それを日本で参考にするのか、対抗するものを考えるのか。大会からその先に繋がるようにしていきたいです」
競技そして自らの未来を見据えている 【©白石怜平】
「ジャンク5のユニフォームを着てプレーすることは、これからもずっと大事にしていきたいです。競技が広がるほどたくさんの方の力が集まってくると思うので、環境を整えてくださる方たちに感謝の気持ちを持ち続けたいです。
私も六角さんや數田さんのように『唐木がいるからこのチームは強い』と思ってもらえるよう、打撃も守備も高みを目指していきます」
決戦の地・香港へと飛び立った。世界の頂に立った先にも明確な未来の姿を描いている。
(写真 / 文:白石怜平、本文中敬称略)
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