【Baseball5を学ぼう】「教育現場を助けられるのがBaseball5」競技の枠を超え、ジャンク5が切り拓く新たな道と世界の頂
【若松氏提供】
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Baseball5界を引っ張るチームの一つ「ジャンク5」。
競技が日本に上陸した黎明期から野球との二刀流でチームを結成し、「WBSC Baseball5ワールドカップ2022」から日本代表を輩出するなど、地道に階段を登ってきた。
23年からは競技の枠を超えた分野に進出し、新たな普及の形を築き上げてきた。
前編に引き続き、チームの代表で侍ジャパンBaseball5日本代表監督の若松健太氏に話を伺い、昨年から今年にかけての活動を追った。
Baseball5 × 教育の道を開拓
ジャンク5からも若松氏含め選手3名(大嶋美帆・島拓也・三上駿)がワールドカップに出場し、世界の舞台で戦った。
この経験を次に活かしていくためにも、Baseball5の更なる普及は重要なミッションであると、日本代表メンバー全員が共通認識を持っていた。
23年、ジャンク5としてはその普及に向けて新たな挑戦の年になった。ジャンク5だからこそできること、それは「教育」への参入だった。
というのも若松氏は、桜美林大学の准教授を務めている。教員という立場から、Baseball5を教育現場に導入することを各所で提案していった。
教育分野でBaseball5の活用を提案した 【©白石怜平】
「ファンパークがすごく良かったんですよ。子どもたちもたくさん来てくれたので。これを機に教授会の場で『Baseball5という競技を授業として行うのはどうか』と提案しました」
Baseball5の魅力は数あるうち、道具など費用を多くかけずにボール一つで始められること・男女が一つのチーム共にプレーできることがあり、その点が教育現場での共感を得た。
23年度から桜美林大にて日本で初めてBaseball5の授業が開講となり、早速TV取材が入るなど反響を呼んだ。合わせてBaseball5部として部活動が発足するなど、教育分野への道を開拓していった。
桜美林大ではBaseball5部として活動が行われている(写真奥) 【©白石怜平】
日本選手権制覇、そしてアジア一の原動力に
2月4日には初の日本選手権が開催。オープンの部(15歳以上)では全国から32チームが参加した中、ジャンク5は決勝トーナメントで5STARs・Hi5 Tokyo・GIANTSと熾烈な戦いを勝ち抜き、見事初代チャンピオンの座に輝いた。
若松氏は「優勝する自信はありました」と即答した。そこには確かな根拠があった。
「メンバーが20人以上いるので、とにかく試合を多くこなしました。そこで課題が見つかったら実戦のなかで改善する。シチュエーション的に練習が必要な場合はそこを補うようにしていました。試合感覚が鋭くなっていたと感じています」
どこにも負けない実戦経験の数が優勝の要因となった(写真は島拓也) 【若松氏提供】
「桜美林大学の部活と合同で活動をやっています。練習環境やメニューに困ることはないので、Baseball5では世界一の環境と自負しています。選手権でも”この環境を作り出すからこそ強い”ことを証明しようと思っていました」
自信を持って獲得したチャンピオンの座 【若松氏提供】
選手としては島・三上そして唐木恵惟子が加わり、若松氏はこの大会から日本代表監督に就任した。
22年のアジアカップで日本は決勝でチャイニーズ・タイペイに敗れ、惜しくも優勝を逃していた。そして今回も再び決勝で対することとなった。
第1セットを落とす展開になるも「誰も焦ってなかったです」と振り返る若松氏。その言葉通り、第2・第3セットを連勝した侍ジャパンは初のアジアチャンピオンという栄誉を勝ち獲った。
「チーム練習を1ヵ月で徹底して行いましたし、22年より特に男子のレベルが上がっているので絶対優勝できるなと。誰もが『このチームで負けるわけがないよね』と自信を持って臨めました。チーム作りがよかったです」
10月、世界一に向けた戦いへ
その傍らで、前年形をつくった教育の面でも発展を見せている。
8月に特集した町田市および周辺地域の小中学生を対象にした教育プログラムの他、特別支援学校へ訪問し体験を通じた出張授業を展開している。
講師も若松氏のほか侍ジャパン戦士や桜美林大学のBaseball5部員が務め、競技の楽しさと運動の大切さを伝えている。
「他にも中学や高校など、教育現場から『講師をやってもらえませんか』と、たくさんの依頼をいただいています。一般社団法人ですので、社会貢献活動を今後も地道にやっていくのが我々の役目だと思っています」
8月末に行った特別支援学校での体験授業 【若松氏提供】
ジャンク5からは、チーム別で最多の5人を輩出。アジア一のメンバーである監督の若松氏と代表主将を務める島・三上・唐木そして前回大会以来、大嶋が代表復帰を果たした。
9月7日に桐生市でエキシビジョンマッチを行った侍ジャパン 【©白石怜平】
「2年前に悔しい思いをしているので、世界一を獲って帰って来たい。その先に日本でどのようにBaseball5の普及、そして浸透させていくかを大切にしています。
また、教育現場においても費用の面や運動機会といった面で課題があることはリアルに感じているので、その現場を助けることができるのがBaseball5だと考えています。そこから普及へも繋がっていくと思うので、教育者として挑戦を続けていきたいです」
約4年にわたる地道な活動を続け、地位を築いてきたジャンク5。これからも競技と教育を通じて日本のBaseball5のトップを走っていく。
(取材 / 文:白石怜平)
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