私のミッション・ビジョン・バリュー2024年第2回 甲田英將選手「サッカー人生を楽しかったと思えるための挑戦」
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多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
2024年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2024年第2回は甲田英將選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
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「5回ぐらいですね。1時間の面談を1カ月に1回のペースで続けました」
Q.今まで自分の内面を第三者に話す機会はありましたか?
「本当になかったです」
Q.面談を行って、変化はありましたか?
「自分がやらなきゃいけないことが明確になって、面談をして良かったと思っています」
Q.取材をしていても感じるのですが、話をしていて、考えていることを言語化する力が上がったような気がします。
「自分のことを話すのは難しくて、面談をしていてもなかなかうまく話せなかったんですけど、徐々に慣れていって、考えがまとまっていって、考えていることを言語化することができるようになっていった実感がありました」
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「自分が楽しむためにはチームの勝利と個人の結果を出さないといけない。やっぱり結果を出さないと、楽しめないんですよ。チームの勝ちと個人の結果を出すことによって、人を楽しませることができる。そうすると、僕自身が楽しむことができる。そのすべてを達成できる選手になりたいと思って、この言葉にしました」
Q.サッカーで楽しさを感じるのはどういう時ですか?
「プロになるまではドリブルが楽しかったんですけど、プロになると結果が求められる。結果を残さないといけないということも含め、ドリブルではなく、ゴールやアシストといったことをより強く意識するようになりました」
Q.「人を楽しませる」ためにはどういうプレーが必要だと思いますか?
「結局、一番盛り上がるのは点が入る時だと思うんです。そこにプラスする形でドリブルを見せたいと思っています」
Q.甲田選手自身、誰かのプレーを見て「楽しい」と思った経験はありますか?
「子供の頃、名古屋グランパスの試合を見に行った時、永井謙佑選手や玉田圭司選手のプレーを見て『すごいな』と思っていました。2人のような個人で打開できるような選手になりたいと思うようになりました」
Q.プレーするにあたって、イメージしている選手はいますか?
「小さい頃からメッシのプレーは見ていましたし、マネをしていました。プレミアリーグなどの試合を見て、『この選手のドリブル、うまいな』と思ったら、採り入れるようにしています」
Q.今季水戸に移籍してきて多くの試合に出場しています。ただ、「楽しむ」と「結果」がリンクせず、もがいていた時期が長かったと思いますが。
「リーグ前半戦の早い段階で点を決められたことはよかったんですけど、その後、なかなか続かなかったですし、チームもなかなか勝てなかった。序盤戦は本当に苦しかったですし、どうやって乗り越えていこうかと常に考えていました。最近、自分のプレーを出せるようになっていますし、リーグ再開後は得点もアシストもできている。そういう結果を積み重ねていければ、もっと良くなると思っています」
Q.夏ぐらいから「楽しむ」と「結果」がリンクしはじめたと思うんですが、何かきっかけみたいなものはあったのでしょうか?
「フォーメーションが3バックになって、僕はシャドーで起用されるようになりました。よりゴールに近い位置でプレーすることが増えたので、今まで以上にゴールに貪欲にプレーするようになりました」
Q.「楽しむ」と「結果」がリンクし出して、自身に可能性を感じているのでは?
「自分がゴールするイメージが沸きやすくなっていて、自分自身のレベルアップを感じています」
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「スローガンでも『挑戦』という言葉を入れたんですけど、常に挑戦し続けることは練習や試合でも意識しています。そういう姿勢を見た人に『私も挑戦しよう』と思ってもらえるような活力を与えられるようになりたい」
Q.甲田選手自身、乗り越えた経験はありますか?
「今まですごくけがが多かったんです。手術を3回しましたし、けがをするたびにすごく悔しい思いをしてきました。家族や応援してくれる人に申し訳ない気持ちになりました。そういった経験を乗り越えたからこそ、今があると思えています」
Q.昨年東京Vに移籍した後に骨折してしまいました。
「プロ1年目も半月板を損傷するけがをしましたし、高校3年の時にも肘を手術しました。それ以外にも、中学校の時から体が小さくて、なかなかドリブルで抜けなくなって苦労することもありました。でも、家族や周りの人に支えられて乗り越えることができました。だから、自分が結果を出すことで、けがをしている人や身体的なことで悩んでいる人に勇気を与えられるようになりたいと思っています」
Q.それだけに今年水戸で結果を出したいという気持ちが強いのでは?
「過去の経験を自分の糧にできているという実感を得ることができています。そして、水戸に来てから大きな怪けがをすることなく、継続的に試合に出場することができている。自分の経験値も高まっているように感じているので、シーズン最後まで試合に出続けて、結果を残したいという気持ちが強いです。そして、プレーを見てくれる人にやる気や勇気を与えていきたいです」
Q.苦しんだ時、気持ちを高めるために取り組んだことや支えになったことはありますか?
「今やらなかったら後で後悔するだろうなという考えですね。今は毎晩1日の振り返りをするようにしています。『ああすればよかった』と思うことをなくすことを意識して取り組んでいます」
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「見ている人をワクワクさせるためにも、自信を持って仕掛けないといけない。そうじゃないと、自分の持ち味を出せなくなる。何回も何回も仕掛ける姿を見せて、見ている人に乗り越える活力を与えられるようになりたいです」
Q.自信を失ってしまうことはありますか?
「何回もボールを取られると、『今回は仕掛けない方がいいんじゃないか』という弱気な考えが頭の中によぎることがあります。そこで負けたら、自分の特長がなくなってしまう。そういう時こそ、自分を励まして、常にチャレンジすることを意識しています」
Q.試合の中でも自分を奮い立たせている?
「そうです」
Q.仕掛ける回数が甲田選手の調子のバロメーターですね。
「なかなかボールを触れない時はプレーが上がっていかない。何回もボールを触って、『自分がやってやる』『自分が試合を決めるんだ』という気持ちを高ぶらせるようにしています」
Q.いい形で仕掛けるために、ボールをもらう位置にこだわっているように感じます。
「オフ(ボールを持っていない)のところでダッシュすることによって、いい位置でボールをもらえるようになる。そのために頭を使わないといけないということをプロになってからすごく感じています。頭を使うことやオフの動きを高めることによって、仕掛ける回数を増やすことができるし、得点に絡むことも相乗効果で増えていくと思っています」
Q.仕掛ける時は何を意識していますか?
「どうすれば最もゴールにつながる可能性が高いかということですね。相手を抜くことよりもゴールを意識していますし、まずはどうやったらシュートを打てるかを考えています」
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「後から振り返って、『こうすればよかった』と後悔することがないように、1日1日を楽しむというか、終わった時に悔しいと思わないようにしたい。積み重ねが結果につながると思うので、楽しかったと思えるような挑戦をし続けていく。僕はサッカーに人生をかけてきました。だからこそ、後悔したくないという思いを込めて、このスローガンにしました」
Q.まだ若いのに、人生を振り返ることを考えていることに驚きました。学生時代から、そういうことを考えていたのでしょうか?
「最近、練習や試合を振り返るようにしているんですけど、『妥協してしまった』と思うことがあって、それがすごく嫌だったんです。昨年からサッカー日記をつけるようになったんですけど、そういうことはその時は分からなくても、後から分かるんですよ。だからこそ、後から見た時にそういうことを思わないように、すべてのことをしっかりやろうと自分を鼓舞するようになっています」
Q.日記を書くようになって、変化を感じるようになりましたか?
「練習で妥協することが本当に少なくなって、水戸に来てから、すごく成長していると感じることができています。妥協だけでなく、プレーで『もっとこうした方がいい』と客観的に見る機会も増えているので、振り返る作業が自分を成長させていると実感できています」
Q.具体的にどういったところに成長を感じていますか?
「ゴールやアシストにつながるプレーへの意識が高まってきている。以前はドリブルで抜くことを第一に考えていました。でも、得点やアシストにつながるプレーを常に意識できるようになったところに成長を感じています」
Q.残り7試合に向けて意気込みを聞かせてください。
「残り7試合しかない。すぐにリーグ戦が終わってしまう。最近は今までより1週間のサイクルが早く感じるようなっています。だからこそ、1日1日をより大切にしたいと思うようになっていますし、『この1試合で人生が変わる』という気持ちで毎試合挑んでいこうと思っています。リーグ再開後、勝ち点を取れるようになってきて、順位も上がってきています。だからこそ、ここからチームも個人も落ちていかないようにしないといけない。そのために自分を妥協させないように、日々の練習に向き合っていきたい。さらに上のステージに行くために、もっともっと結果を残していきたいと思います」
Q.甲田選手は昨年まで年代別日本代表に選ばれ続けてきました。日本代表への思いも強いのでは?
「昨年FIFA U-20ワールドカップアルゼンチン2023の日本代表メンバーに選ばれなくて本当に悔しかったです。そういう悔しい気持ちを乗り越えて、自分が同年代の選手を追い抜いて、日の丸をつけたい気持ちが強いです」
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