【週刊グランドスラム270】U-23ワールドカップで世界一を目指した、もうひとりの社会人選手
U-23オーストラリア代表の投手キャプテンを務め、中国戦で力投するジャクソン海(日本通運)。 【写真=宮野敦子】
オーストラリア人の父親と日本人の母親を持つジャクソンは、小学2年生から3年間は日本で生活し、その時に野球と出合う。そして、何度か観戦したプロ野球に夢中になり、オーストラリアへ帰国後もプレーを続ける。U-12、U-15とオーストラリア代表に選ばれるなど、順調に力をつけたことで日本でのプロ入りを目指すようになり、仙台大へ進学。3年時には主にリリーフでリーグ戦にも登板し、神宮大会のマウンドにも立つ。ちなみに、この試合に先発した1年上の長久保滉成(NTT東日本)、二番手の佐藤亜蓮(TDK)は、いずれもU-23日本代表だ。
そして、さらなるスキルアップを目指して、今春に日本通運へ入社する。2月の沖縄・宮古島キャンプを取材した際には、やや緊張した面持ちのルーキーたちの中で、明るくムードメーカーのようになっていた。
リスペクトできる仲間たちと日本一を目指して
今春、4名の同期とともに日本通運へ入社したジャクソン(右から2人目)。着実なスキルアップを見せている。 【写真=松橋隆樹】
「オープニング・ラウンドの1、5戦と、最終戦の先発を務めることになりました」
9月6日、開幕日のコロンビア戦に先発。力強いストレートを軸にした投球で6回途中まで2失点と粘り、4対2で勝利を挙げて自身も勝ち星を手にする。続く第2戦では、前日に日本を倒したプエルトリコと延長に及ぶ熱戦を繰り広げ、9回サヨナラの5対4でグループ首位に立つ。第3戦の相手は日本だ。
第1戦でプエルトリコに敗れた日本は、オーストラリアにも黒星を喫すると大会連覇が難しくなる。そんな緊張感の中でオーストラリアは1点を先制するも、なかなか追加点を奪うことができず、5回に一挙4失点で敗れてしまう。そして、この勝利から日本は勢いづき、オーストラリアは失速した。
3勝1敗で迎えたオープニング・ラウンドの第5戦は、2勝2敗の中国と激突。負ければともに3勝2敗となり、直接対決の勝敗で4位、すなわちスーパー・ラウンド進出を逃す危機だ。そんな試合で先発を担ったジャクソンは、1回裏を3者凡退で立ち上がる。直後の2回表に1点を先制したが、その裏に同点ソロ本塁打を浴びる。
さらに、5回裏には先頭を三振に打ち取るも振り逃げで出塁され、2四球で満塁に。三ゴロで勝ち越されたところで、ジャクソンはマウンドを降りた。その後、スクイズとパスボールで2点を追加され、1対4で敗れたオーストラリアはスーパー・ラウンド進出を逃した。
「味方の守りにミスが出た時こそ、僕が粘らなればいけなかった。悔しい結果になりましたが、反省すべき点を忘れず、次はプレミア12でもオーストラリア代表に呼ばれるように頑張ります」
2025年は、ジャクソンにとってドラフト指名が解禁になる大切なシーズンだ。
「日本通運は本当にいいチームですし、同期の冨士隼斗はライバルでもありますが、心からリスペクトできる存在。勝利に貢献し、お互いに目標を達成できるように努力します」
【取材・文=横尾弘一】
【左=紙版表紙・右=電子版表紙】
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