挑戦者の気持ちを持ち続ける金メダリスト | 火ノ玉JAPANインタビュー #6:杉村英孝(BC2)

チーム・協会

【©︎日本ボッチャ協会】

パリ2024パラリンピック遂に開幕。ボッチャ日本代表「火ノ玉JAPAN」からは7名の選手が出場します。パリ2024パラリンピック火ノ玉JAPAN特別企画として、各選手のインタビューを通して、選手たちそれぞれのパーソナリティーに迫ります。

第6回となる今回は、リオ2016パラリンピックにてBC1/2チーム戦での日本ボッチャ界初メダルに貢献し、東京2020大会ではBC2男子個人戦で金メダリストとなり、「スギムライジング」という言葉も話題となった杉村英孝選手。ディフェンディングチャンピオンとして、挑むパリ大会には、向けてのインタビューをどうぞ。

挑戦者の気持ちを持ち続ける遅咲きの金メダリスト

ー まずは杉村選手がボッチャを始めたきっかけを教えてください。
学生時代に入所していた施設の生活指導の先生にいろんな障害者スポーツを教えてもらったりしていたんですけど、その中の一つでボッチャのビデオを見せてもらったのが一番最初にボッチャと出会ったきっかけです。そのビデオを見せてもらって、こういうスポーツがあるんだということを紹介してもらいました。

ー ボッチャにのめり込んだのはいつ頃なのでしょうか?
競技としてのめり込んで行ったのは、もっと後ですね。5、6年経ったぐらいで日本選手権に出てみようかって友だちと話をして出たんですけど、結果は三戦全敗の予選敗退で。予選を勝ち上がることがなかなか出来なかったんです。その当時から、廣瀬選手はトップで戦っていましたし「めちゃくちゃ上手いじゃん」っていう感想だったと思うんです。それでもやっぱりそういう強い選手と戦ってみたいとか、勝ってみたいという向上心がアスリートとしては大事だと思いますし、そういった気持ちがどんどん芽生えてきて、ボッチャを競技として考えていくようになったのかなと思っています。

ー では、パラリンピックを意識したのは?
始めた頃は、ボッチャがパラリンピック競技だったことも知らなかったので、日本選手権に出始めて、ようやく3位とかに入れたぐらいからですかね。強化指定選手として日本代表の合宿に参加をさせてもらえるようになった頃から、パラリンピックにも出場してみたいなっていう思いはどんどん強まったと思います。

ー 東京2020大会では金メダリストになりました。金メダリストとして意識することはあるでしょうか?
そうですね。自分としてはそこまでは意識はないつもりではあったんですけど、周りからは金メダリストっていう目で見られるだろうし、応援してくれる方々に「金メダリストなら勝つだろう」と、そういう目で見られる。見えないプレッシャーというか、そういったものも実際にはあったのかなって思います。そういう中で自分のボッチャをどうしていこうかという部分でちょっと悩んだ時期もありましたね。

でも、競技をしている以上は、いつまで経っても挑戦者の気持ちでありたいと思っています。だけど金メダリストとしての自覚だとか、誇りというものも持ち合わせて戦っていくことが自分に出来ることなのかなって思ったので、そういった部分で吹っ切れて、今は自分のボッチャに向き合うことが出来ているのかなと思っています。

【©︎日本ボッチャ協会】

得意のゲームメイクを武器に、目指す2つの金メダル。

ー 杉村選手には「自分のこのプレーを観てほしい!」というプレーはありますか?
そうですね、いっぱいありますね。「スギムライジング」もそうなんですけど、ファーストボールに注目してもらいたいなと思っています。自分はアプローチ(ジャックボールと呼ばれる的球にボールを寄せること)がそんなに得意ではないので上手い選手に比べたら成功する確率も低いとは思うのですが、成功すればもちろんそれは試合を優位に進めていけると思いますが、失敗をしても、その失敗を失敗に見せない。最終的にこの最初のファーストボールが効いてたって思わせるようなゲームメイクというものが自分は得意というか、好きなので、そういったところを見てもらいたいなと思います。

ー 杉村選手のルーティンは?
自分の中でやっているのは、試合コートに入って試合が始まる直前ですね。試合中はいつも右手にリストバンドを付けているのですが、そのリストバンドに手を添えて。そのリストバンドが地元でチームメイトで作ったリストバンドなんですけど、そういった仲間の想いですとか、自分がこれまでこの大会に向けて取り組んできたことに集中して、取り組もうっていう意味合いも込めて精神統一の一環として、ルーティンとして入れさせてもらってます。

ー パリでもそのシーンが見れたら、杉村選手のスイッチが入ったなと考えれば良い?
そうですね。そのように見て下さい(笑)。

ー ずばりパリでの目標は?
ズバリ言っていいんですか?パリでの目標は、もちろん出場する以上は、全世界、全ての選手が最高の成績を目指していると思いますし、私もその一人だと思っているので、個人では連覇、そして団体戦においては初めての金メダルというものを目指して戦っていきたいです。ただ、どこの国も強豪ですし、簡単な試合は一つもないです。日本チームとしては挑戦者として、胸を借りる気持ちで自分たちがやってきたこと、そういったものをコート上で発揮出来るように、また応援してくれた方々に見ていただけるように戦っていきたいなと思っています。

【©︎日本ボッチャ協会】

杉村選手はどんな人?

ー ここから少し杉村選手のパーソナリティーに迫りたいと思います。趣味はありますか?
趣味はスポーツ鑑賞です。スポーツは見るのはどんなスポーツでも結構見て、純粋に見て楽しんだり、いろんな選手のコメントとか、そういったものを見る中で自分の競技に参考にさせてもらっている部分もあると思います。スポーツの中で一番好きなのがサッカーですね。サッカーは小さい頃から大好きで、特に日本代表戦。日の丸を付けて戦う選手の姿はやっぱりかっこいいなと思いますね。

ー クラブチームのユニフォームもサッカーのユニフォームからインスパイアされている?
そうですね。某イタリアチームのユニフォームに似てますけど、チーム名が「ブラックホワイト」なのでああなっちゃいました。笑

ー 杉村選手が好きな食べ物は?
好きな食べ物はお肉ですね。お肉が大好きです。お肉ならなんでもという訳ではなくて、カルビとかハラミとか好きですけど、最近ハマっているのはタン塩かなぁ。さっぱり系が最近はいいですね。

あとは甘いものも好きで、あんことお餅の組み合わせが好きなんです。その頂点に立つのが赤福です!

ー 尊敬する人物はいますか?
三浦知良選手です。サッカーが好きというのはもちろんありますし、三浦知良選手は静岡県出身で同郷の選手でもあるので、そういった部分でもJリーグの開幕当初からずっと応援している選手の一人ですね。とにかく自分で新しい道を切り開くことですとか、その芯の強さとか、チャレンジする姿というものがかっこいいなと思います。多分今年で57歳という年齢になると思いますが、その年齢においても現役にこだわっている部分とか、全盛期のプレーというものがなかなか出来なくなってきていると思うのですが、その中でも自分が今出来るプレーというものに全力で取り組まれている。サッカーそのものを愛する情熱ですとか、カズ選手の存在感というものがやっぱりすごいな、キングだなと思いますね。尊敬もありますし、憧れの方ですね。

ー 杉村選手が人生を通して実現したいことは?
生涯ボッチャ選手でいれたらいいなぁと思ってます。自分が現役としてやれるまでは続けていきたいなというふうに思っていますし、アスリートとして、競技者として、ボッチャの面白さとか、魅力とか、また難しさもあるかもしれませんけど、そういったものを伝えられる人であり続けたいなという思いがあります。

ー 最後に、ボッチャを応援してくれる皆さんへメッセージをお願いします。
パリに向けて全力で戦っていきます。みんなでボッチャを盛り上げましょう!

盟友・廣瀬隆喜選手(右)と杉村選手(左) 【©︎日本ボッチャ協会】

プロフィール

杉村 英孝(すぎむら・ひでたか)
生年月日:1982年3月1日
出身地:静岡県
クラス:BC2
所属:TOKIOインカラミ
出身校:静岡県立中央特別支援学校


過去の戦績
【国際大会】
ロンドン2012パラリンピック - 7位(BC1/2チーム)
Beijing 2016 World Boccia Championships - 3位(個人・BC2男子)
リオ2016パラリンピック - 銀メダル(BC1/2チーム)/準々決勝敗退(個人・BC2男子)
Liverpool 2018 World Boccia Championships - 2位(BC1/2チーム)/3位(個人・BC2男子)
東京2020パラリンピック - 金メダル(個人・BC2男子)/銅メダル(BC1/2チーム)
【国内大会】
第14回日本ボッチャ選手権(2013) - 優勝(個人・BC2男子)
第15回日本ボッチャ選手権(2013) - 優勝(個人・BC2男子)
第17回日本ボッチャ選手権(2015) - 優勝(個人・BC2男子)
第19回日本ボッチャ選手権(2017) - 優勝(個人・BC2男子)
第20回日本ボッチャ選手権(2018) - 優勝(個人・BC2男子)
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著者プロフィール

 日本ボッチャ協会は「一緒があたりまえの社会にする」を合言葉に、日本国内の肢体不自由児者を中心とした障がいのある方の競技力向上と、すべての障がいのある方、及び障害がない方に対しても、広く一般的にボッチャの振興と普及を図りボッチャを通じて障がいの有無関係が無いインクルーシブな社会を実現を目指します。更に、より密接に共生することのできるように様々な活動を通じて社会を創造します。  「パラリンピックにおける金メダルの獲得」。そして「ボッチャを国民的スポーツへ」。それが日本ボッチャ協会が掲げるビジョンです。

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