【週刊グランドスラム262】第95回都市対抗野球大会は横浜市・三菱重工Eastが初優勝!! 社会人野球のさらなる発展には守備や走塁にも光を!!

チーム・協会

横浜市・三菱重工Eastの初優勝で幕を閉じた大会は、グラウンドもスタンドも熱い12日間だった。 【写真=松橋隆樹】

 第95回都市対抗野球大会は、7月30日に横浜市・三菱重工Eastと仙台市・JR東日本東北による決勝が行なわれた。この日が30歳の誕生日だった主将の矢野幸耶が、2本塁打3打点と活躍した三菱重工Eastが3対1でJR東日本東北に勝ち、悲願の初優勝を果たした。
 両チームとも一発勝負を勝ち上がってきた勢いだけでなく、普段からしっかりと練習を重ねてきたことがわかるプレーを披露し、頂上決戦に相応しい緊張感。惜しくも敗れたとはいえ、JR東日本東北のアグレッシブな姿勢も強く印象に残った。
 熱いのはグラウンドだけではなく、スタンドの応援合戦も大いに盛り上がる。試合中やインターバルに実施された各種イベントを含め、社会人野球ファンはもちろん、はじめて都市対抗に足を運んだ人も強く引きつける12日間だったと感じた。
 そんな素晴らしい大会だったからこそ、表彰式を終えて真っ先に考えたのは表彰選手のことだ。プロではベストナインやゴールデングラブ賞を記者投票で選出しているが、都市対抗や日本選手権、社会人ベストナインの選考委員は大半がOBである。つまり、自身も一発勝負の厳しさを肌で感じ、大舞台でプレーすることの価値を十分に理解している人たちが選考にあたっている。東芝府中OBの落合博満氏(元・中日監督)はこう語る。
「記者投票が悪いということではないけれど、社会人では野球を熟知した先輩が自分の経験や時代の流れも考慮しながら選んでいる。私自身も、個人賞が日本代表やプロ入りにつながったと思っているし、現役選手にとっては自信や励みになるもの。だからこそ、ひとりでも多く選手を表彰してほしいし、迷ったら選んであげてもらいたい。歴史に名を残すのは、その選手の野球人生にとっても社会人野球の未来にとっても意義のあることだから」

数字以外の部分ももっと評価されていい

 そんな落合氏の言葉も借りれば、橋戸賞の本間大暉をはじめ、投手陣を好リードした対馬和樹捕手は打率が.200でも、数字には表れない“好リード”を評価して大会優秀選手に選んであげたい。実際、多くの監督が「2~3人の捕手を併用しているならともかく、ひとりで5試合にマスクを被ってチームを優勝させたら、それだけで優秀選手でしょう」と語っている。

仙台市・JR東日本東北の新人・浦林祐佑は、歴代の新人遊撃手を上回るパフォーマンスを見せた。 【写真=藤岡雅樹】

 また、今大会の若獅子賞は史上2度目の『該当者なし』であったが、JR東日本東北の浦林祐佑は一番ショートで5試合にフル出場し、打率.318をマークした。しかも、全5試合で安打を放っている。過去に若獅子賞を手にした大学出ルーキーの遊撃手で、5試合連続安打は2010年の安達了一(東芝=現・オリックス)しかいない。2012年の田中広輔(JR東日本=現・広島)も、2018年の小深田大翔(大阪ガス=現・東北楽天)もできなかった離れ業だ。そして、同じJR東日本東北の橋本吏功は、2度も強く正確な本塁返球で相手の得点を阻止した。どちらも、橋本の好返球がなければ失点し、試合の流れはどうなっていたかという場面。それに加えて、二回戦ではダメ押しの本塁打を放つなどバットでも勝利に貢献している。
 プロが目を見張る個人技でファンを沸かせるなら、社会人の最大の魅力はチームの勝利を目指して一丸となって戦うこと。ならば、勝利への貢献は数字以外の部分でももっと評価されていいだろう。
 来夏の都市対抗、その前に今秋の日本選手権では、勝敗をも左右した好守備や好走塁の選手も、野球を知る選考委員ならではの視点でクローズアップしてほしい。そうしたアクションも、確実に社会人野球の魅力向上につながると思うから。
【取材・文=横尾弘一】

【左=紙版表紙・右=電子版表紙】

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著者プロフィール

1949年に設立した社会人野球を統轄する(公財)日本野球連盟の公式アカウントです。全国の企業、クラブチームが所属し、中学硬式や女子野球の団体も加盟しています。1993年から刊行している社会人野球オフィシャル・ガイド『グランドスラム』の編集部と連携し、都市対抗野球大会をはじめ、社会人野球の魅力や様々な情報を、毎週金曜日に更新する『週刊グランドスラム』などでお届けします。

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