表彰台の一番上の景色をもう一度 小林 広夢&伊藤 礼博

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2024年1月に行われた全日本卓球の選手権大会男子ダブルスで優勝した小林 広夢&伊藤 礼博ペア 【日本大学】

 それはまさに破竹の勢いだった。2024年1月、全日本卓球の選手権大会男子ダブルスに出場した卓球部の小林広夢選手(スポーツ科学部・4年)・伊藤礼博選手(経済学部・3年)ペアは、準決勝・決勝と日本を代表する強豪ペアを次々と撃破し、本学ペアとして43年ぶりとなる日本一に輝いた。
 先輩後輩であり、幼馴染である両選手に、その決勝での戦いや今シーズンに臨む気持ちなどを聞いた。

(2024年3月取材)

“いつも通り”の気持ちで、たどりついた日本一

- 全日本選手権優勝おめでとうございます。約1ヶ月経ち、日本一になった実感や気持ちの面で変わったことはありますか?

小林 今でも「本当に優勝したんだな」といった感じです。周りの皆さんにお祝いをしていただきましたが、僕自身は目標としてもっと上の方をめざしているので、自分自身が変わったということはないです。
伊藤 優勝した時は実感もなかったんですが、お祝いのメッセージをたくさんいただいて、それで「本当に優勝したんだな」と、だんだん実感が湧いてきました。僕は全国大会の優勝というのが初めてだったので、すごくうれしい気持ちでいっぱいで、若干満足しちゃっているところもあるかもしれませんが、今からまた気持ちを切り替えて、頑張っていこうと思います。

- この大会をどう戦っていこうかとか、組み合わせを見て、2人で話し合ったようなことは?

小林 伊藤が入部してからずっと組んでいるので、全日本に向けて特別に何かやるというより、自分たちの課題に対していつも通りしっかりやるという感じでした。ダブルスはサーブレシーブが大事なので、それを見直して、いかに自分たちが優位になってラリーに持ってくかっていうところをメインに練習していました。
伊藤 広夢さんが言ったように、サーブレシーブを全部一からやり直す感じでしたが、それが今回の優勝につながったんじゃないかなと思います。組み合わせを見ても、その時は自分たちが上にいけるという確証もなかったですし、強い選手ばかりなので、一戦一戦、しっかり戦おうという気持ちで試合に臨んで、自分たちのプレーを貫こうというところです。

- 大きなヤマ場だった準決勝に勝利した後、決勝に向けて考えたことは?

小林 準決勝と決勝までの間が本当に時間なかったですし、僕らは決勝に出るのが初めてなので、技術的なことよりも、決勝の舞台で気持ちを飲まれないようにと、自分に言い聞かせることに時間を使いました。準決勝が終わった時、伊藤は大丈夫だなと思えたので、特に声は掛けずに自分のことに集中していました。
伊藤 準決勝は去年負けたペア(及川瑞基・松島輝空)だったので、結構きつかったですね。決勝は張本(智和)選手と森薗(政崇)選手の前回王者ペアでしたが、及川・松島ペアよりもラリー型のスタイルなので相性が良いのかなと話していて、技術的な対策をどうこうするより、気持ちで負けないように相手に向かっていこうという思いが強かったですね

日本を代表する実力者ペアを相手に、「ラリーで勝負して我慢比べをしよう」という戦術でわたりあった小林・伊藤ペア 【共同通信社】

- 決勝はゲームカウント1-1後の第3ゲーム、ゲームポイントを握ってから4ポイントを連取されて10-9になり、流れが相手にあるように見えましたが、あせりはありましたか?

小林 いえ、1ゲーム目を取れていたので、自分たちのプレーに迷う必要がないという自信があったので、さほどあせりは感じませんでした。
伊藤 いつもであれば、あの状況になればたぶんあせっていたと思いますが、あの時はいけるという自信があったのか、あせりは出ませんでした。3ゲーム目は広夢さんがすごい点を決めてくれていたので、僕はただ「広夢さんにつなごう」という気持ちでプレーしていました。

- 3ゲーム目を取ってゲームカウント2-1、この勢いのままいけそうだなと感じましたか?
小林 そうは思ってなかったですね。これまで、「いけるだろう」って思って逆転されたことが何回もあるので。どう点を取られたのかをしっかり考え、修正していくようにと心がけ、とにかく目の前の一本に集中し、どう点を取るかを考えていました。
伊藤 2ゲーム目を取られたのは、自分のレシーブが甘くなっていたからで、浮いたところを相手に打たれるというダメなパターンになっていました。第4ゲームはレシーブが甘くならないよう、集中してプレーしていたので、マッチポイントになった時も、正直覚えてないですね。
- 優勝が決まった時や表彰台に立った時、どんな心境でしたか?

伊藤 何も考えられなかったですね。衝動的に抱き合ってました(笑)。表彰式では、金メダルをもらった時より、表彰台の一番上に立った時のことの方が印象に残っています。去年のミックスダブルス3位で表彰台に昇った時は、上に人がいましたが、今回は自分たちの上に誰も人がいないので、そこから見る景色はやはり特別だなと感じました。
小林 表彰台に昇った時はまだ「本当に優勝したのか」っていうような気持ちでした。全日本の大舞台で表彰台の一番上に立てたことがすごくうれしかったし、「またここに立ちたい」と強く思いました。

伊藤選手とは小学生の頃から同じ卓球クラブで練習し、仲が良かったという小林選手。中学・高校は別々だったが「試合会場で会った時に少し話をするぐらいでした。伊藤が日大に入学してきたので、これで団体戦でも上位に行けそうだなと思いました。 【日本大学】

- 小林選手はTリーグでもプレーしていますが、大学のチームに還元することなどはありますか?

小林 みんなにも強くなってほしいので、プロの試合や練習を経験して吸収したもの、感じたことを、伊藤や試合に出る選手たちに伝えます。試合感とかは、実際に試合で自分が感じてみないと、口で言ってすぐできるわけではないので、特に技術面が多いですね。
伊藤 自分が考えている打ち方とか技術の方法より、遥かに上の技術の考え方を教えてくださるんで、それをとことん練習していきます。プロの方の指導が正しいと信じ、自分の考えに固執しないで習った通りに実行しています。

- この2年間での伊藤選手の成長をどう見ていますか?

小林 元々気持ちが強い選手なので、技術のある選手と練習していくうちに、技術も伸びてきました。試合でも、昔は頑張って勝つみたいな感じでしたが、今はちゃんと戦術がわかって、こういう時にはこうしたらいいというようなことで勝っていけるので、いろんな面で成長していると思います。
- では、小林選手はどういうところがすごいと思いますか?

伊藤 昔、一緒に練習している頃から卓球のセンスがあって、ボールタッチが柔らいんです。僕はそこが硬いし、練習すれば賄えるということではないので、元々持っているものが違うなと思います。大学でダブルスを組ませてもらってから思うのは、ボールへの嗅覚がすごいというか、選球眼がすごく良くて、相手が打つコースをわかっているかのようにその場所に広夢さんがいて、待っていたようにカウンター攻撃を仕掛けます。そしてバックハンドがすごく上手い。広夢さんのようなバックハンドを僕が持てたらもっと強くなれるなと思います(笑)」

「ボールが来る場所にいるというのは結構難しいことなので、自分が考えてどうこうするより、その時の試合勘が大事になってきます」と話す伊藤選手。「それを今から身につけるのは難しいと思うので、技術で補うために広夢さんのようなバックハンドを習得したいと思います」 【日本大学】

将来を考えて、日本大学でのプレーを決めた

- 日大への進学を決めた理由はどういうところですか?

小林 僕は元々、海外リーグに挑戦したいと思っていたのですが、日本大学は海外に行っていても単位が取れるように配慮していただけるということでしたし、将来的にも卓球を続けていきたいと思っていたので、強くなるなら日本大学がいいなと思って進学を決めました。先輩の金光(宏暢、2022年度スポーツ科学部卒)さんも海外リーグに行きながら、授業も受けていたので、その辺のことをいろいろとアドバイスを受けてやってきました。
伊藤 僕は高校が卓球の強豪校ではなかったので、1学年上に広夢さんがいて、その上にも強い先輩たちがいる環境の中で、一緒に練習したり試合に出たりすることで、個人としても強くなれるし、団体でも勝つことができるだろうと考えて志望しました。

- 大学での学びについてはどう思っていますか?

小林 スポーツ科学部では、競技だけではなく、栄養のことや体の仕組みのことなど、スポーツに必要なすべてのことが学べます。将来プロでやるなら卓球だけじゃなくて、その他のことも絶対必要になると思ったので、そういうところまで学べるのはとてもいいなと思っています。授業やゼミなどで他の競技の人と交流する機会もあって、僕よりも競技で結果を出している人が、どういう考えでその競技をやっているのかを知れたり、競技以外にも将来の人生を考えている人もいて、そうしたところはすごいなと思いますし、自分にはまだまだ足りていないと感じます。そうした環境で学べるというのは自分にとってとてもいい経験だと思います。
伊藤 僕は文武両道をめざしていたので、スポーツだけに偏らないようにと経済学部に入学しましたが、会計や簿記の授業も楽しいなと思います。卓球部に経済学部の先輩がいなかったので、1年目の履修をどうするか、結構難しかったですね。部活の先輩や同級生がいないからこそ、一般の学生の友だちができて、それはそれで良かったかなと思います。

【日本大学】

- ダブルスでペアを組むことになったのは監督の指示ですか?

小林 いえ、僕が伊藤と組みたいと監督に言いました。

- 今後もペアは継続されるのですか?

小林 継続してやりたい気持ちもありますけど、監督・コーチによっては意見が分かれることがあるかもしれないので、どっちになってもいいようにしっかり準備していきたいなと思います。
伊藤 変わるとしたら、自分か1学年下の強い選手かどっちかが出るということなので、自分が出ても出なくても、ダブルスとシングスの両方の準備をしていきます。もしダブルスに出させてもらえるなら、全日本で優勝したというプライドもあるし、周囲の目もあるので、日本大学の誇りを持って頑張ろうと思います。

- そうした中で、今後に向けて足りてない点、強化していかないといけないと思う点はありますか?

小林 相手が向かってきた時に受けるんじゃなくて、自分たちもしっかり向かっていく気持ちでやるということですね。技術面でも、台上がまだ甘いとこがあるので、台上から厳しくいって、少しでも自分たちが良い形でラリーに持っていけるようにしていくのが今の課題。シングルスでもそうですが、台上とサーブレシーブにこだわっていきたいと思います。
伊藤 僕たちが得意なのはラリーですし、実際、全日本でもラリーが光っていたと思うので、やはりその前の段階の台上ですね。特に僕は台上が苦手なので、そこが上手くなればもう1段階レベルアップできるんじゃないかなと思います。ダブルスに限らず、シングルスもラリー型なので、その前に相手に打たれてミスしてしまうことがよくあるので、そこがなくなるように自分から先に攻めてラリーにつなげていきたいなと思います。

- 今シーズンの目標としていることは?

小林 学生として最後の1年なので、学生の大会では1試合1試合を大事にして、全て優勝するというつもりでいます。その先に全日本があるので、全日本でもまた上位をめざせるように頑張っていきたいと思います。
伊藤 関東学生リーグ戦の春秋を連覇したものの、インカレは優勝することができず3年連続ベスト4なので悔しい思いがあります。広夢さんがいる最後の年で、インカレ優勝したいです。個人戦では全日本学生のシングルスでベスト4以上に入れるように頑張っていきたいです。

- 最後に将来の夢を聞かせてください。

小林 僕は「世界に出て活躍したい」というのがずっとあるので、世界選手権など世界の舞台でしっかり上位に入って活躍できるようなりたいです。五輪も卓球選手なら誰もがめざす場所だと思うので、そこにしっかり近づいていけるように頑張りたいと思います。
伊藤 僕は大学でのあと2年間で卓球をやりきろうという気持ちがあるので、トップをめざして全力で取り組み、行けるとこまで行きたいと思っています。卒業後は、また別のキャリアで頑張っていこうかなと考えています。

今シーズンも活躍を期待しています。ありがとうございました。

左・伊藤選手、右・小林選手 【日本大学】

Profile


小林 広夢[こばやし・ひろむ]スポーツ科学部・4年
2002年生まれ。東京都出身。愛工大付属名電高卒。ノジマTリーグ・T.T彩たま所属。高校3年時に全日本選手権一般の部でランクインし注目を集め、大学入学後はドイツ・ブンデスリーガにも参戦。’23年全日本学生選抜男子シングルスで初優勝。’24年の全日本選手権男子ダブルスでも優勝を飾った。

伊藤 礼博[いとう・あきひろ]経済学部・3年
2003年生まれ。神奈川県出身。安田学園高卒。中学3年生の時に東京選手権男子カデットシングルスで優勝し、高校でもエースとして活躍。本学入学後は1年次からインカレ団体戦に出場、’22年の全日本学生選手権は小林選手とのペアでダブルス準優勝。’24年1月の全日本選手権男子ダブルスを制し、日本一に輝いた。
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著者プロフィール

日本大学は「日本大学競技スポーツ宣言」を競技部活動の根幹に据え,競技部に関わる者が行動規範を遵守し,活動を通じた人間形成の場を提供してきました。 今後も引き続き,日本オリンピック委員会を始めとする各中央競技団体と連携を図り,学生アスリートとともに本学の競技スポーツの発展に向けて積極的なコミュニケーションおよび情報共有,指導体制の見直しおよび向上を目的とした研修会の実施,学生の生活・健康・就学面のサポート強化,地域やスポーツ界等の社会への貢献を行っていきます

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