【ホクレンDC】わたしと振り返るホクレン・ディスタンスチャレンジ③

日本陸上競技連盟
チーム・協会

【JAAF】

7月6日(土)より、第1戦 北見大会(北海道・北見市東陵公園陸上競技場)が開幕する「ホクレン・ディスタンスチャレンジ2024」。

2003年からスタートした本大会には日本代表レベルから学生など、多くの選手が参加してきました。
21年間も同じ場所・同じ時季で開催している背景には大会を支えているひとは勿論、参加する選手にもきっと特別な想いがあると思います。
そこで、今大会は「わたしと振り返るホクレン・ディスタンスチャレンジ」と題した企画を実施。
ホクレンDCを選手の目線から読み解くことで、皆さんにも大会の魅力や特徴をお伝えいたします。

最終回は川内優輝選手(AD損保)です。

【JAAF】

――なぜホクレン・ディスタンスチャレンジ(以下、ホクレンDC)に参加しようと思いましたか?
私のホクレンDC初参戦は今から15年前の2009年7月に開催されたホクレンディスタンス網走大会です。大学を卒業して埼玉県庁に就職してからの数か月は慣れない仕事に苦戦してほぼ毎日残業しており、仕事と競技の両立が上手くいかずに記録が低迷していました。
特に7月第1日曜日に開催された猛暑の札幌国際ハーフマラソンでは大惨敗して、「もう大学時代の力は戻らないのかな」と弱気になりかけました。しかし、「秋前最後のレースがこの結果では悔しすぎるので、この悔しさをぶつけられる大会を探そう」とその日のうちにエントリーできる大会を探しました。
その結果、「ホクレンDC網走なら学校も夏休みに入るので夏季休暇を申請して出場できる」ということで当時練習を見てもらっていた学習院大学時代の監督に相談して、遠征が決まりました。
初めて訪れた網走は7月なのにストーブを焚くほどの寒さでした。寒い気候が得意だった私はペースメーカーのサイラス・ジュイ選手が引っ張る集団の流れにラスト1周の鐘が鳴るまで余力を蓄えながら乗ることができました。そしてラスト1周で飛び出した日清食品の丸山選手と皆倉選手には負けたもののラスト1周を59秒でカバー(私の400mのベストは56秒)して人生初の5000m13分台をマークして組3位に入って賞品の蟹まで貰いました。
この初参戦の記憶が強烈だったため、「夏にトラックで記録を出すならホクレンDCしかない」と私の脳裏に刻まれました。

――ホクレンDCだからこそ味わえる大会の特徴や魅力をお聞かせください。
一番の魅力は選手とファンの距離が近いことです。大きな競技場で行われるトラックレースと違って、かなり選手と近い位置で観戦ができますし、声援を受けることができます。また、音楽や会場やLIVE配信での実況もお祭りのような特徴があって気分が乗ってきます。
それに加えて、ほとんどの選手はホクレンDCで「順位」よりも「記録」を狙いに来ています。そのため、普段のレース以上に積極性のある殻を破るような走りができたり、ペースメーカーや同じ組の選手同士で「一緒に記録を出そう」というような連帯感ある熱い走りをしますし、そうした走りを見ることもできます。
また、選手目線ですと「ホクレンDCは平等」であることが特徴的で素晴らしいです。出場するためには標準記録を切らねばなりませんし、近年は標準記録を切っていてもターゲットナンバーから弾かれて出場できないこともあります。けれども「記録」さえ持っていれば「実業団」でも「大学生」でも「高校生」でも「市民ランナー」でも出場することができます。また、「記録」によって走る組が決まる点でも平等です。
他にも選手輸送の面でも平等です。駅や空港から宿泊先、宿泊先から競技場、ホクレンDC開催地間の輸送など、所属も何も関係なく、平等に無料で送迎してもらえます。
スタッフがいない市民ランナーが単独で遠征するときに、移動は費用面や労力面で負担になることが多いです。ですので、そうした送迎を無料でしてもらえる体制があることは本当に素晴らしいと思います。

ホクレンDC2019北見大会では5000mCで優勝した 【フォート・キシモト】

――今までのホクレンDCを振り返ってみて最も印象に残っている大会とその理由。
10000mの自己ベストの29分02秒を記録した2010年のホクレンディスタンス士別大会です。「28分台を必ず出す」と意気込んで挑みましたが、2秒ちょっと届きませんでした。9000m付近まで同じ集団で走っていたコニカミノルタの松宮隆行選手にラスト1000mだけで12秒も差をつけられて「なぜついていけなかったんだ」「旭川で前日の昼に食べたラーメンを大盛でなく普通盛にしておけば28分台が出たのではないか」とゴール後は悔しくて涙を流しました。余談ですが、それを見ていた箱根駅伝学連選抜のチームメイトでYKKの山田選手が「市民ランナーがこんなに悔しがっているのに実業団選手が奮起しないわけにはいかない」と思ったそうです。その後のレースで山田選手は28分台で走るなど長年にわたって活躍されました。
この時の10000mの自己ベストは14年経った今も更新できていないので苦い記憶として残っています。

ホクレンDC2023北見大会では5000mDに出場した 【EKIDEN NEWS】

――連戦中の過ごし方や楽しみをお聞かせください。
遠征の合間には北海道の広い道を走ったり、北海道の美味しいグルメを食べたりしています。そうしたこともホクレンDC遠征の楽しみの1つです。また、日本全国から多くの選手がホクレンDCに参加しますので、再会したライバルや友達とレース以外の日に一緒にジョギングをしながら情報交換をしたり、競技場などで話をすることも魅力の1つです。

――観戦予定の地元の方々やファンの皆さまにメッセージをどうぞ。
ホクレンDCは日本代表選手だけでなく、未来の日本代表選手も多数参加します。テレビに映るようなトップ選手を間近で見られることも大きな魅力ですが、そうした将来伸びそうな全国的には無名の大学生や高校生を見つけて、その後の活躍に注目してみるのも面白いかもしれません。
また、「北海道観光」と「ホクレンDC観戦」を組み合わせても楽しい想い出が残ると思います。例えば、千歳でしたら初日は千歳駅から競技場に向かう途中にあるモリモト本店のソフトクリームやベーカリーでスイーツ等を楽しんでからホクレンDCを観戦。翌朝は競技場のある青葉公園のクロカンコースでジョギングし、千歳駅から送迎バスのある支笏湖のしこつ湖鶴雅リゾートスパ水の謌でランチブッフェや温泉・散策を楽しみ、新千歳空港行きの送迎バスに乗って空港内でお土産を買ったりミュージアムを見学するようなプランでもギュッと濃縮された楽しい1泊2日になると思います。
ホクレンDCの熱い応援は力になります。一方でレース前の選手は集中していますし、選手によっては競技人生をかけて記録を狙いに行く選手もいます。ですので、レース前の選手に対するサインや写真撮影はなるべく控えていただければ幸いです。「1人くらいなら」と思うかもしれませんが、1人に応じたことで何人も応じなければいけなくなって、結果的に選手の集中力を削ってしまうかもしれません。
好記録でレースを終えた選手に対してサインや写真撮影を求めていただければ、ほとんどの選手が最高の笑顔で応じてくれると思います。
選手とファンの距離が近いことがホクレンDCの魅力でもあります。今後もそうした選手を身近に感じられるホクレンDCを守るためにも御理解いただければ幸いです。

【ホクレンDC2024 特設サイト】

※リンク先は外部サイトの場合があります

【JAAF】

【大会概要】

主催:日本陸上競技連盟
共催:日本実業団陸上競技連合、北見市、網走市、士別市、深川市、千歳市
後援:北海道新聞社、北海道文化放送、読売新聞社
主管:オホーツク陸上競技協会、空知陸上競技協会、道央陸上競技協会、道北陸上競技協会
特別協賛:ホクレン農業協同組合連合会
協賛:プーマジャパン株式会社
運営協力:ディスタンスチャレンジ実行委員会

【ホクレンDC2024大会情報】

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