苦境にある王者を救えるか。新加入のタイトルホルダー・ペルドモの特徴にデータで迫る

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オリックス・バファローズ ペルドモ投手 【(C)パーソル パ・リーグTV】

前年に最優秀中継ぎ投手を獲得した右腕が、パ・リーグに帰還

 5月28日、オリックスにルイス・ペルドモ投手が入団した。ペルドモ投手は2023年に千葉ロッテでプレーし、41ホールド1セーブを挙げて最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得している。実績十分の助っ人右腕には、新天地でもリリーフ陣の柱となる活躍が期待されるところだ。

 今回は、MLB時代を含めたペルドモ投手の球歴や、各種の指標に基づく投手としての特徴について紹介。新天地でも安定した投球を続けている前年のタイトルホルダーに期待される役割について、より深く掘り下げていきたい(成績は6月27日の試合終了時点)。

デビュー当時は先発で奮闘したが、リリーフ適性の高さも随所で示してきた

ペルドモ投手がMLBおよびNPBで記録してきた、年度別成績は下記の通り。

ペルドモ投手 MLB年度別成績 【(C)PLM】

ペルドモ投手 NPB年度別成績 【(C)PLM】

 ペルドモ投手は2010年にカージナルスと契約してプロ入り。翌2011年からマイナーリーグで研鑽を積んでいき、パドレスに移籍した2016年に23歳でメジャーデビューを果たす。同年は35試合で146.2イニングを投げ、9勝10敗と2桁勝利まであと一歩に迫る活躍を披露した。

 続く2017年は29試合に先発して自己最多の163.2イニングを消化し、勝ち星こそ1つ減らしたものの、防御率4.67と前年に比べて安定感を向上させた。若くして先発の一角に定着しつつあったが、2018年は12試合で1勝6敗、防御率7.05と苦しみ、2019年からはリリーフへと転向した。

 2019年は47試合で72イニングを消化して7ホールドを挙げ、ロングリリーフとして奮闘。防御率も4.00と先発時代よりも改善させ、ブルペンの一角としてチームを支えた。2020年途中にトミー・ジョン手術を受けて2021年は全休となったが、2022年にブルワーズでメジャー復帰を果たし、14試合で防御率3.80と長期離脱からの復活をアピールした。

 翌2023年にNPB挑戦を選択して千葉ロッテに移籍すると、53試合に登板して防御率2.13と安定した投球を披露。故障による離脱もありながら53試合に登板して41ホールドを挙げ、来日1年目にして最優秀中継ぎ投手のタイトルを受賞。異国の地で自らの実力を存分に示し、チームの2位躍進にも大きく貢献した。

 続く2024年はMLB復帰を目指してナショナルズとマイナー契約を結んだが、開幕ロースター入りはならず。同年5月に日本球界復帰を選択してオリックスに加入すると、3試合に登板した時点で無失点、奪三振率9.00と、早くも期待に応える見事な投球を披露している。

リリーフ転向を境に安定感が高まったが、運に恵まれなかった側面も?

続いて、ペルドモ投手がMLB時代に記録した各種の指標を確認しよう。

ペルドモ投手 MLB年度別指標 【(C)PLM】

 通算の奪三振率は6.63と決して高い数字とは言えず、とりわけ来日前年の2022年の奪三振率は4.56とキャリア最低の数字だった。その一方で、通算の与四球率は3.15とまずまずの数字で、チームの主力投手として活躍した2016年と2018年には与四球率2点台を記録。2022年には与四球率1.14という素晴らしい数字を残し、制球力の高さを示していた。

 三振を四球で割って求める「K/BB」は通算の数字が2.10と、一般的に優秀とされる3.50という水準には及んでいない。しかし、与四球率を2.25に抑えた2019年にはK/BB3.06と一定以上の数字を残し、与四球率1.14を記録した2022年にはK/BB4.00という素晴らしい成績を記録している。

 これらの数字からも、優れた制球力がペルドモ投手の投球を支える生命線となっていることがうかがえる。また、2019年のリリーフ転向以降は与四球率2点台以下を記録した回数が3シーズンで2回と、先発時代に比べてコントロールがさらに向上を見せている。

 1イニングに出した走者の平均を示す「WHIP」は通算1.50とやや高いが、2019年以降の3シーズンは全てキャリア平均の数字を下回っている。2019年はロングリリーフを務めながらWHIP1.21と大きく数字を改善し、2022年はキャリア最高のWHIP1.14という数字を残すなど、リリーフ転向後は走者を出す頻度自体が減少している点もポイントだ。

 また、ホームランを除くインプレーの打球が安打になった割合を示す「BABIP」に目を向けると、また違った側面が見えてくる。この指標は投手の実力に左右される要素が少なく、運の影響を受けやすいと考えられており、投手の被BABIPは一般的に.300が基準値とされる。

 しかし、ペルドモ投手の通算被BABIPは.327と、基準値を大きく上回る数字となっている。リリーフ転向後の2019年以降の被BABIPは3年連続で.300を下回っているとはいえ、ペルドモ投手はMLBのキャリアを通じて運に恵まれなかった傾向にあったことがわかる。

 被BABIPの高さもあってか、通算の被打率も.289とかなり高い水準にあった。MLB時代のペルドモ投手は通算防御率5.12と安定感を欠くきらいがあったが、投手にとってコントロールが難しい要素の影響で安打が増えていたことが少なからず響いていた可能性はありそうだ。

投球スタイルに大きな変化はないが、安定感は飛躍的に高まっている

次に、ペルドモ投手が2023年のNPBで記録した各種の指標を見ていこう。

ペルドモ投手 NPB年度別指標 【(C)PLM】

 2023年の奪三振率は7.28とやや控えめながら、同年の与四球率は2.66と優秀だ。MLB時代に比べて奪三振率はやや向上したものの、海を渡る前と同様に優れた制球力と多彩な変化球を活かし、打たせて取る投球を展開していたことが数字にも示されている。 

 2023年のK/BBも2.73とMLB時代の通算の数字を上回る数字を残し、WHIPに関しても1.26と一定以上の数字を記録。ただし、2023年の被BABIPは.316と、MLB時代と同様に高い数字となっており、不運な傾向はNPB挑戦後も続いていたことが示唆されている。

 打たせて取る投球を持ち味とするペルドモ投手にとって、被BABIPの高さは致命的となりかねない要素だ。にもかかわらず、同年は防御率2.13と安定した数字を記録し、被打率も.259とMLB時代よりも低く抑えている。すなわち、NPBにおいては運を実力でねじ伏せるほどの投球を披露して好成績を残していた、という考え方もできるのではないだろうか。

投手陣に故障者が相次ぐ王者を救う、文字通りの「救世主」となるか

 質・量ともに充実した強力リリーフ陣の存在は、オリックスのリーグ3連覇を支えた大きな強みの一つだった。しかし、今季はクローザーの平野佳寿投手をはじめ、山崎颯一郎投手、山岡泰輔投手、比嘉幹貴投手、小木田敦也投手といった、リリーフとして連覇に貢献した投手が相次いで故障で戦列を離れる事態となっている。

 昨季のパ・リーグで最優秀中継ぎ投手に輝いたペルドモ投手の加入は、苦しい台所事情にあるブルペンにとっても大きな助けとなりうる。NPBにおける経験も有している即戦力の補強として、文字通りの「救世主」となる可能性も大いにあるはずだ。

 さらに、ペルドモ投手は三振を多く奪うというよりは、ゴロを多く打たせるタイプの投手である点もポイントだ。奪三振率の高い本格派の投手が多いオリックスのリリーフ陣にあって、タイプの違う実力者が加入する意味合いは大きいといえよう。

 苦境に陥る王者を救うために大阪にやってきた新戦力は、昨季と同様にハイレベルな投球を見せ、試合終盤の試合運びに安定感をもたらせるか。後半戦でのV字回復を狙うオリックスにとっても、ペルドモ投手の加入が持つ意義は非常に大きなものとなってきそうだ。
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