功を奏した配置転換。杜の都の新守護神・則本昂大の変化に迫る

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東北楽天ゴールデンイーグルス・則本昂大投手 【(C)パーソル パ・リーグTV】

新たな持ち場で見事な適応力を見せている今シーズン

則本昂大投手 年度別投手成績 【(C)データスタジアム】

 昨季までの11年間で通算114勝を挙げるなど、エースとして東北楽天の先発投手陣をけん引してきた則本昂大投手。チームの絶対的守護神だった松井裕樹投手が昨オフにメジャーへ移籍したことに伴い、今江敏晃新監督から配置転換を打診され、今季はクローザーを務めている。

当初はエースのリリーフ転向を不安視する声もあったものの、現時点でセーブ失敗は1度のみで、リーグ2位の17セーブをマーク。見事な適応力で役割を果たしており、今では新たな持ち場もすっかり板についてきた。今季の則本投手の投球で注目したいのが、1イニング当たりに許した走者の数を示すWHIPが低い点で、このことが安定した成績につながっている。

与四球による余計な走者が減少

則本昂大投手 年度別与四球率 【(C)データスタジアム】

 許した走者の数が少なくなっている要因は、与四球率の低さにある。もともと安定した制球力を持つ投手ではあるが、今季は特に与四球が少なく、ペースとしては昨季から半減。被打率.245とヒットによる出塁はある程度許しているのだが、その中で失点を少なく抑えているのは、余計な走者を出さない投球ができているからだろう。

リリーフ転向を機にストレートの球威が復活

則本昂大投手 ストレートの平均球速・奪空振り率 【(C)データスタジアム】

 ここからは少し話題を変え、ストレートにまつわる変化について見ていきたい。今季はストレートの平均球速が3.7キロ上がって150キロ台に達し、奪空振り率もそれに伴ってリーグ平均の6.6%を上回る9.0%までアップ。近年落ち込んでいた球威が復活している。先発からリリーフへの転向で短いイニングに力を集中できるようになったことが、球威向上の1番の要因であるだろう。

ただ、例えば昨季両方の役割をこなしたオリックス・山岡泰輔投手と福岡ソフトバンク・藤井皓哉の先発時とリリーフ時の平均球速差が、それぞれ1.6キロと1.8キロであることを踏まえれば、役割の違いだけが影響しているわけでもなさそうだ。クローザーを務めるにあたってキャンプから瞬発系のトレーニングを増やすなど、意識して球速アップに取り組んでいたという則本投手。こうした努力の成果が数字として表れているといえるだろう。

自信を持ってストレートをストライクゾーンへ投げ込める

則本昂大投手 ストレートのストライクゾーン投球割合 【(C)データスタジアム】

 則本投手本人がストレートの球威向上に手応えを感じているためか、今季はストレートの使い方にも変化が見られる。これまでストレートをストライクゾーンへ投じる割合はリーグ平均をやや上回る程度だったが、今季は60%台と高い数値を記録。過去11シーズンで同割合が60%以上となったことはなく、例年以上にゾーン内で打者と勝負していることが分かる。

リーグで最もストライクを奪える球種に

2024年 パ・リーグ ストレートのストライク率ランキング 【(C)データスタジアム】

 球威が上がった直球をゾーン内に積極的に投げ込むようになったことで、同球種のストライク率は昨季の65.3%から11.1ポイント上昇。則本投手のストレートは、リーグ屈指のストライクを奪えるボールとなった。このストレートを軸に投球を組み立てることで、これまで以上に安定してカウントを整えることができている。例年であれば対戦打者の約5人に1人はカウントが3ボールとなるところが、今季は約8人に1人とカウントを悪くするケースが非常に少なくなっている。前述したように今季は与四球率が非常に優れているが、その背景にはリリーフ転向を機に球威が復活したストレートの存在があるというわけだ。

 先日まで行われていた「日本生命セ・パ交流戦2024」では、球団創設20年目にして初優勝を果たした東北楽天ゴールデンイーグルス。中心選手として長年チームを支えてきた則本昂大投手は、守護神という新たな役割で快進撃に貢献した。今江監督が全幅の信頼を寄せる右腕は、今後も力強いストレートを武器に最終回のマウンドに君臨するだろう。

※文章、表中の数字はすべて2024年6月25日終了時点

文・データスタジアム
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