〔スターツシニア・最終ラウンド〕 宮本勝昌が圧勝!兼本貴司と清々しい戦いで打った瞬間に音を聞いてサムズアップしたバンカーショット
表彰式を待つ間、宮本のプレーを見ていた選手たちがため息交じりにつぶやく。「ノーボギー? ひとりだけ別のゴルフ場でやっているみたいだな」。それもそのはず。これまでプラヤド・マークセンが持っていたパー72の54ホールの最多アンダーパーを1打更新するトータル21アンダー、しかもボギーフリーと記録尽くめの勝利となった。
「3日間素晴らしいスコアで大満足です」と宮本は満面の笑みを見せる。そして「なぜだかは分からないけど、今までで一番勝ちたいという気持ちが強かったかもしれない」と語る。
すると今度は宮本が魅せる。右ドッグレッグの2番パー5で、ドライバーでのティショットを狭いフェアウェイのど真ん中に運ぶと、残り235ヤードのセカンドは5番ウッドでピンを筋って手前5メートルに乗せる完璧なショット。これを沈めてイーグルでお返し。
「タイミングよく兼本さんが獲った次のホールで僕がバーディを獲れていたので、そこは流れが良かった。1打差になって、こっちがマゴマゴしているような状況だったら、また展開が変わったでしょうね。展開のアヤというか…そういうのに今回は恵まれました」
9番、10番でも宮本が連続バーディを奪って独走態勢に入るのだが、印象的だったのは兼本が9番でバンカーショットを打ったシーン。兼本のティショットは左に飛んでボールはツマ足下がりの木の中へ。そこから低く出したショットはグリーン右手前のバンカーにつかまった。今日のピンは左の一番奥で、兼本のボールからは40ヤード近く距離のある難しいバンカーショットだった。
兼本もまた、宮本のいいプレーには「ナイスショット!」「ナイスパット!」と大きな声で褒め称えていた。「やっていて気持ちがいいし、ナイスガイですよね」と勝者が言えば、「宮本と2日間回れて楽しかった」と敗者もいう。そんな2人の優勝争いは観ている方も清々しかった。
顔はまったく似てない2人がかぶってみえる、その理由は? 「ハリントンと僕は(ドライバーで)大体20ヤードくらいは違う。ちょっと失敗すると30ヤードは平気で離されるし、上手いこといくと少し縮まるイメージ。まさに兼本さんだなと思って(笑)。最高のスパーリングパートナーです」。宮本もシニアツアーでは飛ばし屋の部類に入るが、兼本もハリントンもドライバーでは軽く300ヤードを超えるシニア離れした飛距離を持つ。
その“日本のハリントン”から逃げ切り、「2日間一緒に回らせてもらって、最高の全米シニアオープン対策(笑)。ハリントンなんか怖くないくらい素晴らしいゴルフを見させてもらいました。自信を持って全米シニアオープンに行けそうです」と笑顔を見せる。今大会が終わると1週空いて、宮本は「全米シニアオープン」に出場する。
『アメリカに行きたい』と宮本が口にし続けるのにも意味がある。「気持ちの持ち方が上手くいかない時でもあえて言葉に出すようにしていますね。ゴルフの調子が良くても悪くても」。言霊のように、言い続けることで実際に叶うと考えている。
シニア3年目を迎える宮本勝昌の新しいシーズンが、いよいよ始動する。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ