〔スターツシニア・最終ラウンド〕 宮本勝昌が圧勝!兼本貴司と清々しい戦いで打った瞬間に音を聞いてサムズアップしたバンカーショット

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「第24回スターツシニアゴルフトーナメント」の最終ラウンドは、首位でスタートした宮本勝昌(51)が8バーディー・ノーボギーで回り、通算21アンダーとして2位との差を6つ広げ完全優勝を達成した。21アンダーはシニアツアートーナメント(54ホール)での最少ストローク数の記録を更新した。優勝賞金1400万円を獲得、シニア通算4勝目を挙げた。2週間後に全米シニアオープン(ロードアイランド州ニューポートカントリークラブ)へ参戦を控え、ゴルフの状態を上げて夢の舞台へ挑戦する。

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強いキングが帰ってきた! 昨季賞金王の宮本勝昌は開幕から2戦で53位、63位となかなか調子が上がらずにいた。今季3戦目となった今大会では、初日から単独トップで飛び出すと、2日目以降も各日のベストスコアをマークして、後続に6打差をつける圧勝劇でシニアツアー4勝目。トータル15アンダー・2位に兼本貴司、トータル12アンダー・3位に片山晋呉が入った。

表彰式を待つ間、宮本のプレーを見ていた選手たちがため息交じりにつぶやく。「ノーボギー? ひとりだけ別のゴルフ場でやっているみたいだな」。それもそのはず。これまでプラヤド・マークセンが持っていたパー72の54ホールの最多アンダーパーを1打更新するトータル21アンダー、しかもボギーフリーと記録尽くめの勝利となった。

「3日間素晴らしいスコアで大満足です」と宮本は満面の笑みを見せる。そして「なぜだかは分からないけど、今までで一番勝ちたいという気持ちが強かったかもしれない」と語る。

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結果的には宮本が独走した形だが、途中までは昨日に続いて最終組で回る兼本とつばぜり合いを繰り広げた。「兼本さんが1番のティショットとセカンドで雰囲気がムンムンに出ていた」と、朝のスタートホールは3打差で迎えたが、兼本がティショットをグリーンのすぐ手前まで飛ばすと、セカンドではピンの左2メートルにつけてバーディを先行。1番をパーとした宮本との差を2打に縮めた。

すると今度は宮本が魅せる。右ドッグレッグの2番パー5で、ドライバーでのティショットを狭いフェアウェイのど真ん中に運ぶと、残り235ヤードのセカンドは5番ウッドでピンを筋って手前5メートルに乗せる完璧なショット。これを沈めてイーグルでお返し。

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次は俺の番とばかりに、実測169ヤードの3番パー3では兼本がハイドローで奥のピンに突っ込み50センチにピタリ。楽々バーディを奪った。5番パー3でも3メートルを沈めて、再び宮本との差を2ストロークに詰める。今週の宮本はそれでも慌てない。6番、7番の連続バーディで再び突き放した。

「タイミングよく兼本さんが獲った次のホールで僕がバーディを獲れていたので、そこは流れが良かった。1打差になって、こっちがマゴマゴしているような状況だったら、また展開が変わったでしょうね。展開のアヤというか…そういうのに今回は恵まれました」

9番、10番でも宮本が連続バーディを奪って独走態勢に入るのだが、印象的だったのは兼本が9番でバンカーショットを打ったシーン。兼本のティショットは左に飛んでボールはツマ足下がりの木の中へ。そこから低く出したショットはグリーン右手前のバンカーにつかまった。今日のピンは左の一番奥で、兼本のボールからは40ヤード近く距離のある難しいバンカーショットだった。

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そんな状況で兼本はピンのすぐ手前にキャリーさせてピン奥1メートルにピタリ。そのボールが落ちるより先に、宮本がサムズアップで兼本のバンカーショットを称えていた。「おそらく30ヤード、40ヤード級の長いバンカーショットは兼本さんが一番上手いと思います。レギュラーでも3本の指に入るんじゃないかな。普通の人なら5メートル手前なんですよ。兼本さんがバーンと打った瞬間に音で寄ったのが分かりました。ピンまで来るだろうなって予想はできていました」と宮本は振り返る。

兼本もまた、宮本のいいプレーには「ナイスショット!」「ナイスパット!」と大きな声で褒め称えていた。「やっていて気持ちがいいし、ナイスガイですよね」と勝者が言えば、「宮本と2日間回れて楽しかった」と敗者もいう。そんな2人の優勝争いは観ている方も清々しかった。

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また、宮本は2日目に「僕は兼本さんを日本のハリントンだと思っている。全米シニアオープンに向けて“仮想ハリントン”でやっていますから(笑)」と話している。そのパドレイグ・ハリントン(アイルランド)は、「全英オープン」2勝と「全米プロ」1勝を含む米ツアー6勝を誇る世界のトップ選手。シニア入りしてからも「全米シニアオープン」をはじめ、7勝を挙げている。実際に宮本は、昨年の「全米プロシニア」の3日目に最終組でハリントンと回っているのだ。

顔はまったく似てない2人がかぶってみえる、その理由は? 「ハリントンと僕は(ドライバーで)大体20ヤードくらいは違う。ちょっと失敗すると30ヤードは平気で離されるし、上手いこといくと少し縮まるイメージ。まさに兼本さんだなと思って(笑)。最高のスパーリングパートナーです」。宮本もシニアツアーでは飛ばし屋の部類に入るが、兼本もハリントンもドライバーでは軽く300ヤードを超えるシニア離れした飛距離を持つ。

その“日本のハリントン”から逃げ切り、「2日間一緒に回らせてもらって、最高の全米シニアオープン対策(笑)。ハリントンなんか怖くないくらい素晴らしいゴルフを見させてもらいました。自信を持って全米シニアオープンに行けそうです」と笑顔を見せる。今大会が終わると1週空いて、宮本は「全米シニアオープン」に出場する。

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「来年に来たときに顔を覚えてもらえるくらいにはしたいです」。米シニアツアー参戦を目指す宮本は現在、YouTubeで英語を勉強中だ。「学生以来」というノートを使って、ネイティブの使う単語の意味や発音を書き出している。「全米プロシニアでもThank you だけじゃなしにAppreciateって感謝しますって向こうの人が言っているなと思って、そればっかり使いまくりました」と高い声で笑う。米シニア参戦をイメージしながら、英語の腕前も少しずつ上達させている。

『アメリカに行きたい』と宮本が口にし続けるのにも意味がある。「気持ちの持ち方が上手くいかない時でもあえて言葉に出すようにしていますね。ゴルフの調子が良くても悪くても」。言霊のように、言い続けることで実際に叶うと考えている。

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今回の表彰式ではこんなシーンも。ひと通り記念写真が撮り終って妻の朋美さんが駆け寄るとしっかりとハグ。こんなところも宮本がアメリカに影響を受けているところかもしれない。そして2人の薬指には、結婚20周年で今年新調したカルティエのペアリングが、白い歯とともに光っていた。

シニア3年目を迎える宮本勝昌の新しいシーズンが、いよいよ始動する。
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著者プロフィール

PGAはゴルフの正しい普及と発展を願い、誰にでも愛される「国民のスポーツ」「生涯スポーツ」となるため、日本ゴルフ界のリーダーとして活動しています。PGAの使命は、トーナメントプレーヤーの育成、ゴルフ大会の開催・運営に加え、ゴルフの正しい普及と発展を具現化するために、ティーチングプロ資格を付与したゴルフ指導者を育成しています。さらにPGAでは幅広い分野で積極的な取り組みを行い、地域に密着した社会貢献活動、ジュニアゴルファーの育成など多方面にわたる取り組みを日々歩み続けています。

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