【週刊グランドスラム255】ENEOSが東芝を破って都市対抗32代表が出揃う
8回表にダメ押しの2ラン本塁打を放ったENEOSの四番・丸山壮史(左)。好投を続けていた東芝の西村王雅(右)もヒザをつく。 【写真=佐々木 亨】
第95回大会の第一代表を射止めたのは、三菱重工Eastだった。6月11日の第1戦、4回表に山中稜真、小栁卓也の2者連続本塁打が飛び出すなど試合を通じて主導権を握り、村上裕一郎の一発で追いすがるENEOSを4対2で振り切った。翌12日の第2戦では、前日の勢いそのままに1回表から強打が炸裂。無死一、三塁から山中の右犠飛で先制点を奪うと、六番に座る江越海地がライトスタンドへ3ラン本塁打を放つ。さらに、3点リードの3回表には、不動の四番・小柳が2試合連続のソロアーチをレフトスタンドまで運び、流れは完全に三菱重工Eastのものだ。
果たして、終盤にかけても確実に加点して12安打11得点。投げては、大野亨輔が6回2失点とベテランの味を見せ、7回裏は3年目の池内瞭馬が3者連続三振、8回裏はルーキーの池田陽佑が2三振を含む3者凡退に抑える快投だ。9回裏は、四番手の長島 彰が意地を見せる東芝に4点を奪われるも、最後の打者を見逃し三振に仕留め、2年連続14回目となる本大会出場を決めた。激闘の2試合で4本塁打と、破壊力のある攻撃が目立つ一方で、要所で見せた精度の高い犠打が印象深い。ENEOS戦では5回、東芝戦では8、9回と、2試合で7回の犠打を完璧に決めた。パワーを誇示しつつ、緻密さも存分に発揮する三菱重工Eastのスキのなさには、チームとしての成熟度の高さが感じられた。佐伯 功監督はこう語る。
「ゲームを進めていく上で、犠打は非常に大事にしています。その通り、選手たちはきっちりと決めてくれました」
序盤から犠打で得点圏に走者を進めたENEOS戦から一転、東芝戦では1回表無死一塁から強攻策に打って出る。汐月祐太郎の右前安打で一、三塁とし、先制点へとつながるのだが、「前日のENEOS戦の勢いもあったので、ヒッティングのほうが得点の確率が高くなると思って」とは佐伯監督。この予選では、そんな三菱重工Eastのベンチワークも際立った。
第一代表を勝ち取り、佐伯 功監督を胴上げする三菱重工Eastの選手たち。 【写真=佐々木 亨】
黒獅子旗12回と7回の名門による最後の代表争い
「チームに勢いをつけてくれた」とは、ENEOSの大久保秀昭監督。ルーキーの積極果敢な姿勢が一気にグラウンドの空気を変えると、川口 凌の四球で一死一、二塁とし、丸山壮史の右中間への適時打で先制点を奪う。なおも一、三塁から、瀧澤虎太朗が初球を左中間へ運ぶ2点二塁打を放って3点目。相手のミスから得たチャンスで先手を取り、しかも複数得点につなげたENEOSの強かな攻撃が光った。主将で四番の丸山は言う。
「初回に先取点を取らなければいけないと思っていた。ベンチの声やスタンドの声援のおかげで、勇気を持ってバットを振ることができた」
2回表には、松浦の右中間フェンスを直撃する2点二塁打などでさらに3点。ENEOSが、序盤から大量リードを奪って東芝を呑み込んだ。中盤から試合は膠着したものの、勝負を決定づける一打が飛び出したのは8回表だ。二死二塁としたENEOSが、丸山の豪快な2ラン本塁打で突き放す。直後の東芝は、山田拓也がソロ弾をライトスタンドへ突き刺すも、反撃もそこまでだった。先発の阿部雄大から加藤三範へつなぎ、9回裏はベテランの柏原史陽がきっちりと抑え、ENEOSが5年連続54回目の本大会出場を決めた。大一番での勝利を噛み締めるように、大久保監督は言う。
磐石の試合運びで5年連続出場を決め、笑顔で記念撮影するENEOS。 【写真=佐々木 亨】
その目に薄っすらと浮かぶ涙が、都市対抗への強い思いを物語る。黒獅子旗最多(優勝12回)のENEOSと2位(優勝7回)の東芝が、32代表の最後となる東京ドームへの切符を争った。西関東二次予選の厳しさと、そこに観る者の胸を熱くするプライドをかけた戦いがあることを、今年も痛いほどに感じた。
【取材・文=佐々木 亨】
【左=紙版表紙・右=電子版表紙】
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