一番長く今シーズンを戦った琉球はやっぱり「スーパーヒーロー」なのです【B MY HERO!】
今シーズンの琉球はプレシーズンマッチを含めて81試合を戦った 【(C) B.LEAGUE】
先日、映画オッペンハイマーを観ました。この映画は第96回アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演男優賞ほか7部門を受賞した素晴らしい作品。“原爆の父“と呼ばれた天才物理学者のロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた作品で3時間の大作。しかし、その歴史的背景や事前の予習無しに観た結果『長かったぁ…』という印象が強く残ってしまい、大気を巻き込む大きな爆発を生み出す兵器を扱ったアカデミー賞作品賞であるにも関わらず、私の中では不完全燃焼に終わってしまった…。『長かった』といえば、沖縄が誇る琉球ゴールデンキングスの今シーズンもとても長かった印象が残っています。
5月28日、キングスの今シーズンの日程が全て終了しました。レギュラーシーズン60試合。チャンピオンシップは全てGAME3までもつれる接戦で全9試合。天皇杯2試合、EASL6試合、9月の群馬クレインサンダーズと台北富邦ブレーブス(台湾)とのプレシーズンマッチを合わせると、全81試合を戦って52勝28敗1分(プレシーズン富邦ブレーブス戦GAME1は79-79の引き分け)どれだけ勝ったか負けたかというより、“しに”長かった!(※しに←沖縄の方言で“とても”という意味です)。とはいえ日本で一番バスケを楽しませてくれたことは間違いありません。
進化したポジションレスバスケを期待させた開幕
ホーム開幕でのリングセレモニー。2連覇を目指すシーズンがスタート 【(C) B.LEAGUE】
10月7勝2敗、11月4勝1敗、12月8勝3敗。シーズン序盤はまずまずの滑り出しではあるものの、その勝ち方に余裕は感じられませんでした。「まぁこれもリーグ戦のその先を見据えていろいろ試してみるが、上手くいかないこともある。負けるわけにもいかないのでギアを上げてギリギリで勝つ。連覇へ向け進化するための戦い方をしているのだろう」と思っていました。
2024年1月、新年明けて仙台とFE名古屋を相手に連敗スタート。その後も名古屋Dに1敗、宇都宮・京都に1勝1敗となかなか波に乗れず、重たくなりそうな雰囲気を感じました。
そんな不安を払拭したのが1月31日アレックス・カークが帰化選手となってのリーグ復帰でした。『3BIG』を使えるようになったキングスは相手を圧倒する勝ち方を見せ、天皇杯準決勝が行われた2月14日の川崎戦で98-70と勝利。3月2日、3日の三遠戦はGAME1で107-88、GAME2で98-89と2試合で205得点。続く3月6日の京都戦でも106-80と連日の大量得点勝利。
カークの帰化により、外国籍2人と同時にコートに入る『3BIG』が完成 【(C) B.LEAGUE】
しかしながら連覇へ向けて加速していくかに思えた矢先、3月16日の千葉Jとの天皇杯決勝は69-117と完敗…。キングスの強み、連覇の切り札と思われた3BIGにトラウマを植え付けるかの如く打ち砕かれたのでした。
1月の不調、2月の絶好調、天皇杯ショック、そして4連敗を喫し停滞した4月…レギュラーシーズンが終了したその日、琉球ゴールデンキングスは41勝19敗、勝率で名古屋Dと並ぶも、今シーズンは直接対決で4戦4敗しているため、順位決定のレギュレーションにより西地区2位となりました。2017-18シーズンからの連覇が途絶えましたのです。
シーズンを通して安定しなかったキングス、しかしEASLも天皇杯も敗退しようが、西地区7連覇を逃そうが、ピンチの時にこそ立ち上がるヒーローのようにチャンピオンシップを勝ち上がって優勝する! なんならレギュラーシーズン1勝もできなかった名古屋Dをファイナルで破って、最高のドラマを見せてくれるのが琉球ゴールデンキングスというチームだ! という捨てきれない期待に私は心躍らせる感覚を覚えていました。
連覇を目指したチャンピオンシップの激闘
SFの千葉J戦ではスラムダンク翔陽の藤真健司の「シケた顔するな! 海南が観てるぞ!」という名セリフを思い起こさせる「シケた顔してバスケするな、積み上げてきたものはこんなもんじゃないだろ!」という田代直希キャプテンの檄で、GAME1を落として沈みがちだった選手たちの心に火がつき、GAME2、GAME3を勝利し逆転でファイナル進出を達成。劇的な勝ち上がり方を見せたキングスでしたが、ファイナルで対戦することになった広島ドラゴンフライズも中地区1位の三遠、西地区1位の名古屋Dを破っての決勝進出です。こちらも大河ドラマになりそうな下剋上物語さながらの勝ち上がり方を見せていました。
CS SFでの千葉Jとの激戦を制してファイナルへ 【(C) B.LEAGUE】
5月28日、歓喜の金テープを笑顔で浴びていたのは広島ドラゴンフライズでした。
初のファイナルの舞台で初戦を落とした不利な状況を覆しての逆転優勝は、まさに下剋上での偉業達成となりました。選手それぞれがこのCSでステップアップしその才能を遺憾なく発揮した勝ち方、その内容はBリーグチャンピオンに相応しいものだったと思います。
最後まで戦って敗れたからこそ、来シーズンも期待しないわけにはいきません
「苦しみながらファイナルに辿り着くことができたことを誇りに思いたい」という桶谷大HC。
「気持ちの整理がついていないです」「必ず意味があると思うので、これからも胸を張ってバスケットボールと向き合っていきたいと思います」という岸本選手。
「今シーズンも最強の布陣でワクワクしていました」
「思うようなチームづくりができていなかった印象も、これは成長痛のようなものだと思う」というキングスファンの声。
最後に敗れた者だけが感じる複雑な感情がそこにはありました。
最後まで戦い抜いた琉球のメンバー 【(C) B.LEAGUE】
幾つもの苦難を乗り越え人々の希望の光となる琉球ゴールデンキングスは、まるで映画に出てくるスーパーヒーローのような存在。これからも沖縄を元気にし、沖縄を世界へ導いていくであろう今後の活躍に、やはり心躍らせてしまいます。
あったゆういち(B MY HERO!特派員)
【(C)あったゆういち】
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