バドミントン福島/松本、ペア結成4カ月で見えた「変幻自在」スタイルの片鱗

平野貴也

3月の全英オープンで銀メダルを獲得した福島由紀(右)と松本麻佑 【Photo by Shi Tang/Getty Images】

 大きな可能性を感じる新ペアの誕生を伝えてから、まだ半年も経っていないが、もはや可能性ではなく、確信に変わっている。24年11月にペアを結成したバドミントン女子ダブルスの福島由紀(岐阜Bluvic)/松本麻佑(ほねごり)は、早くも安定した強さを発揮している。デビュー戦となった熊本マスターズジャパンで準優勝の活躍を見せると、年明け1月には、ワールドツアー最高峰のスーパー1000の一つ、マレーシアオープンで初優勝。福島は「そのうち勝てたらいいなと思っていたけど、こんなに早く勝てるとは思っていなかった」と驚いていたが、3月の全英オープン(スーパー1000)でも、パリ五輪銅メダルの志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)との日本勢対決には敗れたが、スーパー1000で2大会連続の決勝進出を果たした。今後は、優勝候補の一角に名が挙がる勢いだ。

福島「数カ月で自信は持てて来ている」

 元々、互いに個の能力が高く、世界トップクラスの経験も持っている。福島は、廣田彩花(岐阜Bluvic)との「フクヒロ」ペアで、松本は永原和可那(北都銀行→引退)との「ナガマツ」ペアで、ともに東京五輪に出場してベスト8。2018年、19年の世界選手権では、両ペアが2年連続で決勝を戦った。新ペアだが、トップ選手同士の組み替えで対応力も高い。24年11月の大会では、松本が前に入る形を作っていたが、25年1月は、前後を入れ替えながらプレー。3月の大会では、守備の時間が長い中でも粘り強さと積極性の見えるレシーブで対抗した。中でも、相手の特長に合わせてプレーを変化させられた部分が収穫だった。

 福島は「相手の特長に応じて、作戦を2人で変えられるのは、自分たちの強みになるのかなと思った。安定したダブルスになるのに直結する部分。組み始めて最初は、気を遣ったり、遠慮したりする部分もあり、互いに自分の力でやっていた。1月くらいから、ペアとしてのプレーをどうするかを意識して話してきた。まだ2人で動くパターンが決まっていないけど、自分たちのミスが少なければ、どんな相手にもある程度戦える、この数カ月で自信は持ててきているかなと思う」と好感触をつかんでいた。

相手に合わせてスタイルを変える、松本「私たちならではの武器」

松本(左)は福島との連係面に手ごたえを得ていると明かした 【Photo by Shi Tang/Getty Images】

 松本も、連係面では少しずつ手ごたえを得ている。特に、守備から攻撃に転じる場面は、相手の特長に合わせながら変化させることができたという。

「徐々に、ダブルスとしての完成度やコンビネーションは、上がって来ているのかなというイメージがある。試合中に、どっちが取るのか迷う場面が、少なくなった。レシーブは、1月は、相手を後ろで(左右に)振って、自分たちが各々で前に行けるタイミングで攻撃に転じることが多かった。でも、全英では、この場面は、こうやって攻撃を仕掛けに行った方がいいねと話して、相手に合わせたプレーができたイメージはある」(松本)

 松本は、170センチを超える長身選手。後衛から角度をつけて決定力のある強打を繰り出すことができる。そして、前に出れば、相手はネット前で捕まるのを避けるため低い軌道の球を使いにくくなり、プレッシャーをかけることができる。福島は後衛から巧みなコースを突く強打を持っており、圧倒的な守備力があるため、前に出た場面で高速ラリーになっても対応力が高い。通常、ダブルスは前衛、後衛の役割が明確なペアが多い。相手が良い球を打てないと判断すると、各自の持ち場に分かれて前後に並ぶ。しかし、福島/松本の場合、相手や状況に合わせて、どちらを前に置くかを変えることができる。守備でも積極的に球を沈めたり、速い球の打ち合いに持ち込んだりして攻守交代を狙うか、しっかりと大きく返してチャンスを待つか。どちらも対応が可能だ。組んで日が浅い分、どのタイミングで何を選ぶか、連係面では難しい部分だが、2人は戦い方を多く持てることに、成長の可能性を感じている。

 松本は「どのペアにもスタイルがあって、それを出した方が強い。その分、どの相手には強いとか弱いとか、相性が出る。でも私たちのスタイルは、どういうものか一概に言えない。そこを逆にプラスに捉えている。相手に合わせてスタイルを変えて(相性による勝敗への影響を)限りなくフラットに持って行ける選手は、ほとんどいないし、難しいこと。でも、多分、それをできるのが、長年経験してきた私たちならではの武器」と話した。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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