【週刊グランドスラム253】日本生命が強固なディフェンス力で近畿第一代表に
第一代表をかけた熱戦を締めた日本生命のルーキー・谷脇弘起は、マウンド上で大きくガッツポーズ。 【写真=横尾弘一】
就任した2022年に苦杯を喫した梶田茂生監督は、若手にも積極的にチャンスを与えて投打にチーム力を底上げし、伝統の勝負強さも取り戻そうと腐心する。そうして臨んだ今予選では、一回戦でOBC高島を7回コールドの19対0と一蹴。二回戦では三菱重工Westに2対0で粘り勝ち、ミキハウスとの準決勝も9対1で快勝した。3試合で1失点の投手陣を、バックの守りも無失策で支えてきた。
対する日本製鉄瀬戸内も、1939年創部で都市対抗優勝2回の歴史を誇る。しかも、富士製鐵の時代から親しまれてきた広畑製鉄所が瀬戸内製鉄所広畑地区となったのに伴い、今季からチーム名称を変更した。そんな変化の年に着々と力を蓄え、今予選では一回戦でマツゲン箕島硬式野球部を3対0で振り切ると、二回戦では2年続けて第一代表のNTT西日本と延長11回の死闘を展開。2対1でものにして勢いづき、日本新薬との準決勝も3対2で制する。際どい勝負が続く中、投手陣が頼もしい安定感を披露している。
午後6時にプレイボールとなった試合は、日本生命が1回表一死から木倉朋輝の中前安打、竹中研人の四球で一、二塁とし、四番・竹村 陸も中前に弾き返して幸先よく1点を先制。さらに、立松由宇の中犠飛で2点目を挙げる。ただ、その後は日本生命の山本隆広、日本製鉄瀬戸内の藤野幹大が粘り強く投手戦を演じる。
次の1点をどちらが奪うか注目される中、5回裏の日本製鉄瀬戸内は二死三塁から遠藤秀太の右前安打で1点を返す。続く6回裏には川瀬剛志の右前安打、内倉一冴の犠打に失策も絡んで無死二、三塁のチャンス。ここで四番の重宮 涼が左犠飛を放って追いつくと、日本生命は山本から齋藤礼二に継投する。
山本隆広は、エースらしい気迫あふれる投球でゲームメイクした。 【写真=横尾弘一】
そうして、8回裏に日本製鉄瀬戸内が二死一、二塁から佐々木の右前安打で勝ち越したものの、9回表の日本生命は一死から立松と山田健太の連続二塁打で振り出しに戻し、二死から石伊雄太の右前安打で再逆転。その裏をルーキーの谷脇弘起が抑え、日本生命が近畿第一代表に名乗りを上げた。
選手たちとハイタッチしながら安堵の笑顔を見せた辻 太一コーチは、昨夏の都市対抗一回戦で敗れたあと、個別面談で山本に「先発をやってみないか」と聞いた。
山本隆広を中心に進化していく投手陣
すぐに首肯した山本は、日本選手権では一回戦の先発を担い、8回途中まで2失点で勝利投手に。二回戦では東京ガスを相手に6回途中まで3失点の力投で2勝目を挙げ、ベスト4進出の原動力となった。そして、シーズンオフもスタミナ向上など課題の克服に取り組み、今季はエースとして投手陣を力強く牽引している。
「新人の谷脇は、春のキャンプで約2週間、山本と同室で過ごしました。山本は惜しみなく自分の経験を伝え、谷脇はしっかりと吸収した。山本が柱になると、他の投手も自分の役割を果たそうと努力し、投手陣全体が底上げされたと感じています」
振り返れば、辻コーチも杉浦正則や土井善和ら実績のある先輩の背中を追い、1998年のシーズンはエースとして社会人ベストナインに輝く活躍を見せた。都市対抗予選や全国の舞台では、積み重ねてきた経験が生きることを、身をもって知っている。
試合後、主将の船山貴大(右)を先頭に、選手たちとハイタッチする辻 太一コーチ(左)。 【写真=横尾弘一】
第一代表決定戦に相応しい熱戦を繰り広げた日本生命と日本製鉄瀬戸内の対戦が、昨年は第五代表決定戦だったことが、近畿二次予選の厳しさを何よりも物語っている。日本製鉄瀬戸内は、6月4日に予定されている第二代表決定戦に臨む。
【取材・文=横尾弘一】
【左=紙版表紙・右=電子版表紙】
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