鷹「育成三銃士」川村友斗、仲田慶介、緒方理貢の現状は?

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福岡ソフトバンク・川村友斗選手、仲田慶介選手、緒方理貢選手 【(C)パーソル パ・リーグTV】

開幕前に揃って支配下に昇格し、現在に至るまで一軍で活躍中

 2024年の福岡ソフトバンクでは、川村友斗選手、仲田慶介選手、緒方理貢選手の3選手が、開幕前に「育成三銃士」と称されて話題を呼んだ。この3名は3月19日に揃って支配下昇格を果たし、シーズン開幕後も一軍に帯同してチームに新たな風を吹き込んでいる。
 今回は、川村選手、仲田選手、緒方選手がそれぞれ残してきた球歴と、各選手の過去2年間における二軍成績を紹介。各選手が昨季まで積み重ねてきた成績の傾向を見ていくことによって、若き有望株たちの選手としての特徴をより深く掘り下げていきたい。(成績は5月19日の試合終了時点)

与えられたチャンスを生かし、一時は打率4割を超えるブレイクを果たす

 川村選手が今シーズンに記録している、一軍成績は下記の通り。

川村友斗選手 一軍成績 【(C)PLM】

 川村選手は仙台大学から、 2021年の育成選手ドラフト2位でプロ入り。1年目の2022年は二軍と三軍を中心に試合出場を重ねたが、二軍では39試合で打率.193とプロの壁に跳ね返された。それでも、続く2023年はオープン戦で12試合に出場して打率.357を記録し、着実に地力をつけていることをアピールした。

 開幕後も二軍で68試合に出場して6本塁打を放ち、4本の三塁打を記録するなど持ち前の脚力も随所で発揮。打率.260、出塁率.332、長打率.492と大きく成績を向上させ、大きな成長の跡を示した。

 そして、2024年の開幕前に念願の支配下登録を勝ち取り、そのまま開幕一軍にも名を連ねた。自身初のスタメン出場を飾った4月6日の東北楽天戦でプロ初安打を記録すると、4月24日の千葉ロッテ戦ではトップバッターとしての起用に応え、3安打1打点で勝利の立役者となった。

 その後も外野の主力として奮闘し、4月23日11試合連続安打を記録。5月5日の時点で打率が.405に達するなど持ち前の打撃センスを存分に発揮し、柳田悠岐選手、近藤健介選手といったリーグを代表する好打者が居並ぶ、外野のポジション争いに堂々と加わっている。

選球眼の向上と三振の減少が、一軍での活躍にもつながっている

 川村選手がこれまで記録してきた、二軍での年度別成績は下記の通り。

川村友斗選手 二軍成績 【(C)PLM】

 2022年は打率.193に加えて39試合で36三振と、打撃の確実性に大きな課題を抱えていた。さらに、打率と出塁率の差を示す「IsoD」という指標も.061とやや低い水準であり、選球眼にも少なからず難があったことがうかがえる。

 続く2023年は打率が.260と大幅に向上し、出塁率.322、IsoD.072と選球眼も改善。それに加えて、二塁打が15本、三塁打が4本、本塁打が6本と長打の割合も多くなり、長打率も.492と十二分に優秀な水準へと到達している。

 課題だった三振数も2023年は68試合で48個とやや減少し、三振率も2022年の.305から2023年には.235に改善。バッティングの粗さが徐々に解消されたことによって、持ち前の俊足を活かせるシーンが増えたことが、現在のブレイクにつながっている側面もありそうだ。

打席に立つ機会は少ないものの、“打率10割”という完璧な数字を記録

 仲田選手が今シーズンに記録している、一軍成績は下記の通り。

仲田慶介選手 一軍成績 【(C)PLM】

 仲田選手は地元の福岡大学から、 2021年の育成選手ドラフト14位でプロ入り。ルーキーイヤーの2022年は二軍で36試合に出場し、打率.268と1年目から一定の数字を記録。守備では二塁手で34試合、外野手で3試合に出場し、内外野をこなす柔軟性の高さを示した。

 続く2023年は二軍で打率.274と前年同様にシュアな打撃を披露し、8盗塁に加えて3本の三塁打を記録するなど脚力もアピール。チームトップタイの12犠打と小技も堅実にこなし、守備では二塁手として65試合、遊撃手として9試合に出場するなど、攻守にわたってマルチな才能を発揮している。

 2024年の開幕前には支配下登録を勝ち取り、開幕一軍メンバーにも名を連ねた。開幕後は代走を中心に内野のバックアッパーもこなし、2打席に立って1安打1四球の打率1.000と打撃面でも完璧な成績を記録。今後も与えられたチャンスを生かし、さらに活躍の場を広げられるかに注目だ。

好球必打のスタイルが最大の特徴

 仲田選手がこれまで記録してきた、二軍での年度別成績は下記の通り。

仲田慶介選手 二軍成績 【(C)PLM】

 1年目は打率1割台と苦しんだ同期入団の川村選手とは異なり、仲田選手は同年に二軍で打率.268を記録し、早くから適応力の高さを発揮していた。その一方で、シーズンを通じて選んだ四球はわずか3個と少なく、IsoDも.016と極端に低い数字を記録していた。

 続く2023年も打率.274と安定した打撃を披露し、前年はわずか1個だった盗塁も8個に増加。出塁率.307、IsoD.033と四球の少なさは前年と同様で、ボールをじっくり見るというよりは、好球必打でアベレージを残すタイプの選手であることが示されている。

 その裏返しとして、三振率は2022年が.176、2023年が.112と、いずれも一定以上の水準に達している。三振を恐れずに深いカウントにも勝負を持ち込む川村選手とは異なり、仲田選手は三振も四球も少ない積極果敢なアプローチを持ち味としている点も興味深い要素だ。

2022年には二軍の盗塁王に輝き、一軍でも代走として出場を重ねている

 緒方選手が今シーズンに記録している、一軍成績は下記の通り。

緒方理貢選手 一軍成績 【(C)PLM】

 緒方選手は駒沢大学から、2020年の育成選手ドラフト5位でプロ入り。プロ1年目は二軍での試合出場はなかったが、続く2022年には二軍で68試合に出場し、打率.259、出塁率.331と一定の数字を記録。17盗塁を記録してウエスタン・リーグ盗塁王のタイトルを手にするなど、持ち前の俊足を活かして大いに存在感を示した。

 続く2023年はさらなる飛躍が期待されたが、二軍での50試合で打率.140と絶不調に陥り、盗塁数も前年の17から4に激減。守備では本職の外野に加えて一塁と二塁もこなすマルチな能力を示したものの、支配下への昇格を果たすことはできなかった。

 4年目の2024年はオープン戦で14試合に出場して打率.333と好成績を残し、ついに支配下登録を勝ち取る。開幕後は抜群の脚力を武器に代走としての起用を重ねており、まだ一軍での盗塁こそ記録できていないものの、試合展開に応じて外野の守備固めとしても出場。試合終盤における貴重なピースとして、身体能力の高さを随所で発揮している。

打撃と盗塁の確実性が2022年の水準に戻れば、さらなる活躍の可能性も

 緒方選手がこれまで記録してきた、二軍での年度別成績は下記の通り。

緒方理貢選手 二軍成績 【(C)PLM】

 2022年は出塁率.331、IsoD.072と、選球眼に関する指標がいずれも一定以上の水準に達しており、出塁の多さが盗塁の機会増加にもつながっていた。さらに、158打数で3本の三塁打を記録するなど、持ち前の脚力で先の塁を奪う機会が多かった点も特徴的だ。

 2023年はIsoD.091と優れた選球眼こそ維持したものの、8本の安打のうち長打が二塁打1本のみで、打率.140に対して長打率.158と、長打力不足が顕在化。さらに、2022年の盗塁成功率は.773だったのに対し、2023年は盗塁成功率.571と盗塁の精度も低下していた。

 今季も一軍での打率は.111と打撃面では苦しんでいるが、2022年のように打撃と盗塁の確実性を高めることができれば、より活躍の場を広げられる可能性はあるはず。同じく俊足を武器に育成からチームの主力に定着した周東佑京選手のように、バッテリーに強く揺さぶりをかけられる存在となりたいところだ。

俊足好打を持ち味としながら、選手としての特性は異なる点も興味深い要素に

 優れた打撃センスを発揮して一軍の舞台で着実に結果を残している川村選手、積極果敢な打撃スタイルが持ち味の仲田選手、二軍の盗塁王に輝くほどの脚力を有する緒方選手。3選手ともに俊足好打を持ち味とする打者ながら、各選手の細かな特性や長所はそれぞれ異なる、という点も、「育成三銃士」が持つ魅力の一つとなっている。

 いち早く一軍の舞台でブレイクを果たしつつある川村選手に続いて、仲田選手と緒方選手もより多くの出場機会をつかみ取り、これまで以上に存在感を発揮することができるか。話題性だけにとどまらない働きを見せている「育成三銃士」たちの活躍に、今後もぜひ注目してみてはいかがだろうか。

文・望月遼太
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