早大競走部 【特集】新体制対談【第1回】伊藤大志駅伝主将×石塚陽士

チーム・協会
取材・編集 廣野一眞、草間日陽里

 主力としてチームの柱を担ってきた伊藤大志駅伝主将(スポ4=長野・佐久長聖)と石塚陽士(教4=東京・早実)。昨年からは世界を見据え、国内のみならず海外でのレースにも出場しさらなる高みを目指してきた。下級生時代からチームを支えてきた二人も今年、最終学年を迎える。再び強豪へ返り咲くべく長距離ブロックを引っ張る二人の心境に迫った。

「チームの層は厚くなってきた」(伊藤大)

対談中の伊藤大駅伝主将 【早稲田スポーツ新聞会】

――他己紹介をお願いします。

伊藤大 1年生の最初の対談からセットだったので、聞く人も読む人ももう飽きたかなと思いますが(笑)、ネジが外れているというか、良くも悪くも常識を逸脱した思考と行動をするので、飽きないですね。大学4年間という、人生の中でも濃い時間を一番多く共に過ごしてきたと思います。練習の面でも生活の面でも、かなり一緒の時間を過ごしたおかげで、良くも悪くも深いところまで知ることができました。競技でも生活でも、石塚がいないとなんか少し落ち着かないなというくらいまでになりました。寮や練習で、「今日石塚いないじゃん」と僕以外にもみんながなるくらいには、チーム全体にも影響力が強い選手なのかなと思います。

石塚 (伊藤大は)何回もネジが外れている人間だと言ってきますが、そんなことは全くないと否定させてもらって(笑)、彼も相当ネジが外れていることを申したいです。常識と変人は両立するらしいですが、彼もその人種の一人だと確信しています。どの対談を見ていただいてもお分かりの通り、おしゃべり好きですし、タイムクラッシャーでもありますので本日もお気を付けください(笑)。まあこれくらいにして、彼からいろんな話をしてくれるので、彼の高校時代、人間関係はもちろん真面目な競技の話もたくさんしてきました。僕も、彼からの僕に対する感情と同じように、一緒にいて飽きないなと思います。

伊藤大 それ褒めてるのか(笑)。

石塚 本当に褒めてます。そういう印象かなというところです。

――学年内でお互いに対してどのような印象をお持ちですか

伊藤大 うちの学年は、(長距離に)スポーツ推薦が僕しかいない状態が2年くらい続いていて、僕と石塚が主軸となってチームや学年を引っ張っていく雰囲気があったので、すごく頼もしかったです。昨年も僕と石塚と山口(智規、スポ3=福島・学法石川)で3本柱という風に言われていて、走力もそうですし、雰囲気や言動もチームの中心になりいい意味で注目されていったと思います。だからといって、縮こまったりだとか、悪いように捉えたりするようなことはなく、臆せずに自分らしくやってくれています。それがすごく駅伝主将としてもありがたいですし、一人の人間として確実にチームに必要な存在なのかなと思っています。

石塚 大志は今年駅伝主将という立場でもありますし、先ほど言ったように今となっては、学年で唯一のスポーツ推薦入学なので強豪校の勝つマインドをチームにもたらしてくれます。強豪の佐久長聖高出身で、僕は早実高でそういう強い組織出身ではなかったので、組織論というか強いチームのマインドを部に積極的に発信してくれることに関しては、駅伝主将としても着いていきやすいのでありがたい存在です。大志がいなければうちの学年で勝つマインドをつくることはほぼできなかったと思うので、一人でありながら頑張ってくれたなと思います。

――昨シーズンを簡単に振り返っていただけますか

伊藤大 一言でいうと、少し足踏みをしたシーズンだったかなと思います。大学2年の時は、高校生ぶりに自己ベストを更新して、苦手意識があった駅伝に対しても少しそれが払拭できたかなという風なことがあって、とっかかりができたシーズンだったと思います。それに対して、昨シーズンはトラック、駅伝ともに足踏みをしてしまったかなと。トラックでは安定したタイムは出てますが、勝ち切れなかったりとかタイムもくすぶったりする状態が続きました。駅伝シーズンでもゲームチェンジャーとしての役割を求められているにも関わらず、無難な走りしかできなかったと反省しています。一番注目されている箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝)では最終的に出走することができなくて、トータルで見ても物足りなかったシーズンでした。

石塚 一言で表すと、天と地をどちらも経験したかなと。前半のトラックシーズンでは六大学(東京六大学対校)の優勝から始まって、1万メートル27分台を出せたり5000メートルでは13分33秒と10秒くらいベストを更新したりして、いけいけどんどんという調子でしたが、迎えた駅伝シーズンでは思った走りができなかったです。三大駅伝とも本当に苦しい走りでしたし、精神的にも結構きつい時もありました。なかなか辛いシーズンだったなと思います。

――伊藤大志駅伝主将は箱根駅伝欠場となりましたが、チームメイトの走りはどのように見てらっしゃいましたか

伊藤大 率直にすごく感動したな、と飾らずに言える試合だったのかなと思います。大きい試合を外から見たのは競技を始めてから初めてのことでしたが、仲間がタスキをつないでくれているのを見た時に、頑張ってくれていたのがうれしかったです。本来であれば往路の主力として、ゲームチェンジャーとなるような走りをしなければならなかったのに、走ることすら叶わず、それによってチームへの罪悪感も強く感じていました。それでもみんながお前がいなくても頑張れたぜって言ってくれるかのような走りを全員がしてくれたので、罪悪感を払拭してくれたというか率直に感動しました。自チームということを抜きにしても、タスキをみんなでつないでいくのってこんなに美しかったんだなと、飾りなしに思える試合で、改めて陸上競技をやってて面白いなと実感しましたし、幅が広がりました。自分の生き方というか一つの感性として、すごく大きな経験になりました。

――新体制になって、チームの雰囲気はどうですか

伊藤大 試合の結果や、走りとかによって上下してしまう部分はありますが、チームの流れ自体は悪くないのかなと思います。主力としてグランプリを狙っていくもの、関東インカレ(関東学生対校選手権)を狙っていくもの、そこの段階まではいかないけど記録会で自分の記録を更新していくもの、みたいにパターンが別れていますが、どの選手も頑張ってくれているというかチームにいい影響を与える走りをしてくれていると思います。僕個人として、ここ3年間でチームの層がかなり厚くなってきたと思っていて、主力でも主力でなくてもチームの雰囲気を上げてくれる走りをしてくれるようになってきました。その反面、当たり前ですけど上級生と下級生の意識や目標の設定、マインドの持ち方に乖離(かいり)が起きてしまうものです。僕ら4年生はラストイヤーということもあり、かなりまとまってきていると思いますが、一方で初めて後輩を持つ学年もいるので、そこの部分で足りないところやもっと頑張らないといけないところが少しずつ見えてきています。それらを成長材料と考えてこれを機にトラックシーズン、夏合宿を経て駅伝シーズンに向かう流れの中で、強みにしていきたいです。

石塚 大志が駅伝主将として、しっかりやってくれてますので自分から特にやることはないのですし、そもそも役職にもついてないんで(笑)。というのも大志が、うちの学年は(駅伝)副主将みたいなものをつけなくても、全員がそういう役割をできるよねという判断の上で、このような体制をとってます。実際、この体制でできているので現状は基本的に大志に投げて全然問題ないです。もし大志に何か問題があったりとか、悩み事があったりとかしても学年全員で考えて解決していくぞ、という雰囲気があるので学年内でのまとまりはすごくあると感じています。個人個人で仲の良い後輩とか話しやすい後輩とかも違いますし、それぞれの4年生が下級生の意見を吸い上げた上で大志に報告するというシステムができていて、連携もとれているので、いいチームにまとまってきているのではないかと思います。

――花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)から何か話はありましたか

伊藤大 僕だけではなくて、代々の駅伝主将に対して花田さんが言ってきたことだと思うんですけど、チームをどうにかしようと思って小手先だけで頑張るのではなく自分の走りに集中するというのは、一番大事にしなければいけないのかなと思います。先ほども話したように試合の結果によって、チーム内の雰囲気も左右されてしまう一方で、駅伝主将は意外と個人の結果が伴わないこともよくあるので、自分の成績でチームの雰囲気や流れを落としたくないなと思っています。うちの学年は他の選手や、相川(賢人駅伝主務、スポ4=神奈川・生田)を始めとするマネジャー、と信頼できる人しかいないので走りに集中しないといけない時は自分の走りに集中して、他のことは他の4年生や相川を始めとするマネジャーに任せるという風に割り切っていこうと思います。そういうのができるチームにどんどんしてくれているかなと思うので、花田さんから言ってもらったことはしっかりと胸に刻んで、肝に銘じてやっていかなければと思います。

石塚 花田さんから直接何か言われるというのは、特に役職についているわけでもないのでないのかなとは思いますが、花田さんがよくおっしゃられるのは、うちの学年が一つの勝負の年だよということで、僕らもそのことを感じていてどこかしらの駅伝では勝っていきたいと思ってます。そこの点に関しては花田さんとある程度共有しながら練習を積んでいるところだと思います。

――4年生はどういった学年ですか

伊藤大 良く言えばすごくまとまりがありますし、悪く言えばパンチがないというのは多分自他ともに認めていることです。昨年や一昨年の4年生は癖が強いというか、パンチがある選手がそろっていて、個性派の学年でしたが、うちの学年はスポーツ推薦が僕だけというにもありますし、印象深い学年ではありませんがその分学年のまとまりは強いです。つながりの強さは引退された先輩方や他の下級生たちには負けない自信があります。駅伝主将としてすごく頼もしいですし、個人としても好きな雰囲気だと思います。

石塚 僕もまとまりがある学年だなと感じますが、それ以上にわちゃわちゃしてる学年だという感覚もあります。通常、学年内のスポーツ推薦組が固まって、その外に一般組がいることがありますが、うちの学年は大志しかスポーツ推薦がいないですし、一般で入ってきた伊福(陽太、政経4=京都・洛南)や菅野(雄太、教4=埼玉・西武文理)など、いろいろなバックグランドを持っている人が学年の核として活動しているので、意見の偏りもない学年になっていると思います。そこの部分が学年としてまとまる一つの要因になっていて、すごく面白いのかなと思います。

――新入生の印象を教えてください

伊藤大 僕らの代と比較してパンチがあるというか粒ぞろいな学年だと思っています。スポーツ推薦で入ってきた3人もそうですし、それ以外の選手も含めて一人一人が、これから磨けば絶対強くなって日本を代表する選手になる、というものを持っている選手が多くて、楽しみでもあり、すごく怖い学年だと思っています。ただそれを生かすも殺すも、先輩である僕らだったり、指導してくださる花田さんであったりなので、改めて頑張らなければいけないかなと思います。

石塚 概ね大志と同じような意見ですが、それぞれが僕らの学年にはないセンスを持っていると感じて、特にこれから世界で戦うには大事になってくるスピードを持っている人が多いので、うらやましいと言ったらダメですけど、いいものを持っているなというのが正直な印象です。それを前半1、2年でどれだけ自分で磨けるか、もしくは磨けるような環境づくりをしていくかが大事になってくると思うのでどんどん上の学年に関わりに来てほしいですし、僕らも何かできることがあればします。どんどん原石を磨いていってもらえると、化け物がそろっていくのかなと感じます。

――学年に関係なく注目している選手を教えてください

伊藤大 竣平(山口竣平、スポ1=長野・佐久長聖)だとありきたりなんで(笑)。もちろん高校の後輩として応援はしてますし、気にはかけてますが僕が気にかけなくても勝手に頑張ると思うんで特に触れないです(笑)。僕はナヤブ(吉倉ナヤブ直希、社1=東京・早実)かな。吉倉ナヤブ直希という早実高出身の選手なんですけども、高校時代から活躍していて名前も通っている選手です。すごくアグレッシブな走りをする選手で、先日の六大学でも最初から最後まで自分でレースをつくって、横綱レースだなと見て感じました。チームに入ってきてまだ3カ月くらいで、強豪校も出るレースでやるというのは率直にすごいと思いました。走りを見ていてもダイヤの原石と言うにはもうおこがましいくらい、すごく綺麗な走りをする選手だと思ってます。高校では中距離の選手で、六大学でも1500メートルで出てはいましたが、将来的に距離を伸ばしても絶対に化けると思うので、個人的に注目していきたいです。

石塚 同期の和田(悠都、先理4=東京・早実)をここで推そうかなと思います。1、2年目に関してはなかなか本人的にも思うようにいかなかったところもあったと思いますが、3、4年目にかけては理工学部で忙しい中でも自分の練習をやっていてウエートとかにも積極的に取り組んでいました。ジョグとかも自分よりも競技力の高い山口智や間瀬田(純平、スポ3=佐賀・鳥栖工)に積極的についていって、いろいろ吸収しようとしています。そして4年目の今シーズンに入って記録も安定してきて、メンバー入りのボーダーラインが見えてきたのかなと思います。もう1、2歩進んでいかないとチームに貢献するまでにはいかないかもしれないですけど、ラストイヤーですしずっと同じ理工で3年間頑張ってきたので、期待したいというかぜひ頑張ってチームに貢献できるようになってほしいなと思います。

「インパクトのある走りを」(石塚)

対談中の石塚 【早稲田スポーツ新聞会】

――今年のチームの強みを教えてください

伊藤大 強みは、例年の早稲田に比べてもかなり層が厚く、まとまりが出てきているチームであることかなと思っています。僕が駅伝主将に就任して最初に掲げた目標は、『チーム全員が勝ちたいチームを僕が作る』です。そのためにまずは自分たちで頑張れる環境作りが大事だなと思い、色々な選手に声をかけたりだとか、僕自身が練習や、練習以外の面でも引っ張ったりということを頑張っていたのですが、それが少しずつ響き始めているように感じます。逆に、他のチームさんもかなり手強いですし、さらに頑張っていかないといけないとも思っています。直接関わった大学さんだと、創価大学さんとは2月に一緒に合宿をさせてもらって。やはり箱根や大きな大会で安定した結果を出すチームはこういうチームなんだなというのを、合宿に行ったメンバーや僕自身も非常に感じました。だからこそもっと頑張っていかないと今僕たちより上にいるチームに追いつけないかなと思っています。特に今年は、全日本(全日本大学駅伝対校選手権)の予選が6月に控えています。例年よりも早く駅伝で戦えるチームを作っていかなければならないので、これからトラックシーズンにも入るのですが、駅伝のことも考える必要があると思っています。駅伝は早稲田の伝統であり、チームの雰囲気として、各々の走力をかけ合わせたうえでの駅伝というところがキーワードになってきます。それをチームにも発信していって、駅伝で勝てるチーム、トラックでも勝てるチームというものを目指していきたいです。

石塚 競技に貪欲な人がかなり増えたような印象があります。今までは出されたメニューをそのままやる人が多かったように感じていましたが、出されたメニューにアレンジする人が増えたり、今の自分に合ったメニューを花田さんに提案したり、また、補強やウェートの部分で自分で考えながらやる人が増えたりなど、色々な人を頼りながら、周りを巻き込んで競技に取り組める人が増えたのかなと思っています。そこは、当社比ではあるのですが、強みになっていると思います。

――チーム内で話し合った目標を教えてください

伊藤大 今年のチームは目標の決め方を変えようという話をしました。以前は4年生が話し合って、今年のチームは「駅伝〇番にしました」と作るのが流れではありました。しかし、それだと下級生や駅伝から少し距離が遠い選手はどうしても実感が湧かなかったり、チームの当事者意識が薄れてしまいます。なので、今年は全員で目標を決めたいと僕から提案しました。4年生の代で相談して駅伝やトラックシーズンの目標を決めて、他の学年に投げた状態で提案し、最終決定をしました。出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)は5番、全日本は3番、箱根は3番というのを具体的な目標としています。この目標にした理由は、去年出雲で意気込んだ割には、結果が伴わなくて、うちのチームは大丈夫かという雰囲気が流れたまま全日本に挑んだ末にシード落ちをして。出雲と全日本にかけての流れが良くなかったので、出雲は確実に戦える6人を作って5番以内に入る、そして、距離が伸びてくればその分早稲田の強みが活かせる区間が増えてくるので、全日本、箱根では狙っていきたいと思ったからです。決め打ちをしすぎないで、ベストを尽くした状態で3番以内に入りたいと思っているので、チームの雰囲気やチームのでき具合によって、目標を上方修正、下方修正することが必要だと思っています。僕らがこの目標を考えたのは、1年生が入ってくる前だったので、1年生が入ってきてどのような化学反応が起こるのかということを考えながら、夏合宿を経て駅伝シーズンに向かいたいと思っています。

石塚 ほぼ大志が言っていることと間違いはないです。付け加えるとすれば、今年は学年内の目標も決めています。例えば、『うちの学年は、5000メートルの平均タイムを14分15秒にします』という感じにするなど、全員が参画しないと立てられないような目標を各学年掲げて、それをトラックシーズンで達成していくという感じです。もちろん、出雲、全日本、箱根などチームとして主軸となる目標はあるのですが。それとは別に全員が確実に参画できる目標を設定して、意識を持っていくという体制は特に目標の面ではやるようにしているので、その面が昨年とは大きく異なることかなと思っています。

――現在の調子を教えてください

伊藤大 調子自体は、昨シーズンと比べると少し一皮むけたと思われるくらいの良い練習は積めています。ニューヨークに遠征に行ってから、急ピッチでトラックに仕上げてはいるのですが、ニューヨークの遠征で得たものや、走った中で成長できたなと思ったところは非常にあって。それを経て、トラックシーズンへの準備というものができているのかなと思っています。ラストシーズンですし、戦える準備は少しづつできているのかなと思っている反面、ちゃんとしたトラックの初戦である金栗(金栗記念選抜中長距離大会)では少し足踏みをしてしまったので、そこについては僕自身も大丈夫かなと思ってはいます。何とか次の織田(織田幹雄記念国際大会)で個人やチームの勢いを上げれるような走りがしたいです。

石塚 7、8割かなといったところが正直です。短い距離に関しては比較的練習ができているのですが、距離が伸びていくにつれて自分の感覚と実体に乖離(かいり)がきてしまっている状態が少し続いています。僕があまり調子良くないときは、短い距離などのスピードから取っ掛かりをつけていって、長い距離を走るようにするというのが一番うまくいく方法だと思っています。前半シーズンの4月、5月に関しては5000メートル以下の距離がメインになってくるところでしっかり取っ掛かりをつけて、6月の23日には絶対に1万メートルを走らなければいけないので、そこに向けて練習していければいいかなと思っています。

――伊藤大志駅伝主将が、駅伝主将として心掛けていることを教えてください

伊藤大 一番は、チーム発足の時に話した「チーム全員が勝ちたいチームを僕が作る」という思いを持って色々なことに取り組もうとしていることです。その中での一環として、誰も取りこぼさないようにということを大事にしたいなと思っています。高校時代に佐久長聖高校の主将をやっていた時に悩んでいたのが、チーム内の意識の差でした。それを乗り越えるために、先ほど石塚が言っていた、学年ごとに目標の平均タイムを作って、それを1年間でクリアするということをやっていたので、大学でもそれを実践しています。また、早大競技会などはほとんどの者が出場するので、できるだけチームメイトが走っているような試合は見て、一人一人に声をかけるということは意識しています。一見ガツガツ行かないように見える選手もいるのですが、話をいざ聞いてみると、僕らが表面的に見ている以上に熱意のある選手がいるんです。そういった新発見もチームのまとまりや意識の右肩上がりの材料を見つける良いきっかけとなっています。これらはこれからも継続して取り組んでいきたいと思っています。

――池田海主将(スポ4=愛媛・松山北)が、今年は長短ブロックの壁をなくすようにしているとおしゃっていましたが、伊藤大志駅伝主将が長距離と短距離の隔たりをなくすために意識していることがあれば教えてください

伊藤大 確かに海君が言うように、僕たちの学年がそもそもブロックごとの間がそんなに大きくない学年で。むしろ海君と僕が非常に仲が良いですし(笑)。これを機により競走部を一体化させたいと思っています。こういった面で、僕個人が大きな一歩だったなと感じるところは、やはり六大学の集団応援でした。僕個人としてもすごく楽しかったですし、チームとして応援するということはこんなに熱いことなんだなと感じることができました。この雰囲気のまま関東インカレや全日本インカレ(日本学生対校選手権)も戦っていきたいです。また、チーム全体の雰囲気や流れとしても長距離のチーム内だけではなく、短長の中でも相乗効果というものがあるのかなと感じていて、それをすごく大事にしたいです。短長関わらず、当たり前のことは当たり前にするということを駅伝主将としてだけではなく、競走部の一幹部として正していきたいです。

――石塚選手は、今シーズン学業と陸上の両立という面ではいかがですか

石塚 おかげさまで単位を落としたことがないので。学部の授業のコマに関しては大幅に減って、ある程度自由が効くようにはなりました。その代わり、一応理系ではあるので、研究室で研究をしないといけないなど寮にずっといるわけではないです。しかし、水、土、日曜日のポイント練習に関して、重い練習にしっかり備えるということはできるようになったので、そういった面は昨年までと違っているところです。それ以外の日に関しては、もちろん練習もしますが、学業の方を重視して自分で調整できる時間が増えたので、そこは上手くできるようになりました。

――シーズンインしてから今までの試合を振り返っていかがですか

伊藤大 僕の個人的な区切りとしては、都道府県対抗駅伝で2023年のシーズンが終わり、そこからニューヨークシティハーフ(ニューヨークシティハーフマラソン)で準備の一環として走って、トラックシーズンへの切り替えとして早大競技会に出場して、金栗でシーズンインというようなイメージをしていました。ニューヨークシティハーフは、本当に挑戦しかないなと思っていて、棚ぼたで出場権を得た状態だったので、失うものはない状況でした。基本的に試合はすごく緊張するタイプなのですが、久しぶりに試合直前までワクワクしながら向かうことができたので、マインドとしては成長したかなと感じました。その反面、世界の壁は厚くて、3キロまでは先頭集団にくっついて「よっしゃ、賞金だ!」と思って走っていたのですが、途中にあった上り坂でしっかり突き放されました。他の選手よりは上りはそんなに苦手ではないかなと思っていても、やはり(世界は)格が違うなと感じさせられました。良くも悪くも経験ができた遠征でした。逆に早大競技会は、チームのほぼ全員が走っていたり、同じ組に高校の後輩が走っていたりなど、負けていられないというマインドで臨んでいた試合でした。よって緊張感があった試合ではあったのですが、蓋を開けてみれば、ある程度良い走りができたのかなと思っています。それに加えて、花田さんから「(3000メートルで)7分台を確実に出していこうね」という話をされた中で、ある程度自分で作ったり、ハイペースにくっ付いたりなど、昨年シーズンにできなかったラストスパートなどを珍しく効かせたレースができたので、及第点のレースだなと思っています。そのあとの金栗は、調子自体はいいなと感じてはいたのですが、レース展開はあまりうまくいかなくて。花田さんからも、「もう少しレース展開がうまかった方が良かったね」というお話をされました。それまで、我ながらレース展開に苦手意識はなかったのですが、今回は下手をこいてしまいました。一方でレース展開がうまくいかなくても、13分40秒台で走れましたし、経験だったと捉えて、次の試合に臨みたいと思っています。

石塚 表向きのシーズンインは3月末の早大競技会ではありますが、どちらかというと個人的には、本当のシーズンインは織田記念で、そこからが勝負かなと思っています。3月にあった早大競技会や、パリの10キロを走らせてもらったのですが、そこに関しては、早大では現状確認をして、パリの10キロではボコボコにされて帰ってきて。早大競技会の3000メートルや、パリの10キロでできなかった部分をこの2.3週間で修正しつつあるとは思うので、その修正できた箇所をしっかり織田記念で発揮できたらと思っています。

――改めてパリ遠征を振り返っていかがですか

石塚 忙しかったんですよね。現地に入って、その日は時差を直したり、軽くジョグをしたりして。ASICS主催のレースだったので、そのプロモーション用の撮影をしたり、シューズのプロモーションの講義を聞いたり、テクニカルミーティングがあったりなど非常にバタバタしていました。コースに関しては、雨が降った後でかなり滑りやすくなっていたりというのもあって、なかなか日本にない環境の中で走ることになったので、去年プラハで走った時とは違った刺激がありました。毎回違う学びを得られるので、そこに関してはありがたいなと思っています。

――最後に、お二人の大学ラストイヤーの目標を教えてください

伊藤大 目標は、個人としては勝ち切るレースをしっかりすることです。ぼちぼちの記録はもういらないと思っているので、グランプリも学生のレースも、駅伝もしっかり勝ち切って4年間を締めくくれるようにしたいです。駅伝主将として最大の目標は、チームで勝つことだと思っています。個人の結果ももちろん求めますし、花田さんから言われたように、個人の走りをしたうえの駅伝主将というスタンスがあるのですが、駅伝主将になった以上はこのチームを勝ちに連れていく駅伝主将にならなければならないと思っています。自分の走りもそうですし、自分の走り以外のチームを引っ張っていく面でも、やり切れるようにしていきたいです。

石塚 だいぶ被るところもあるのですが、勝っていきたいなと思っています。今までの大学3年間で勝てたレースというのが、六大学とホクレン(ホクレン・ディスタンスチャレンジ)の2つで。それ以外のいわゆる学生が目指す関カレというところでは、ぼちぼち点を取ることしかできず、インパクトのある走りというのがあまりできていないです。ラストイヤーですし、インパクトのある走りや勝っていくというところに焦点をおいていきたいです。記録の面に関しては、ベストを更新することが目標です。今(5000メートルは)13分33秒、(1万メートルは)27分58秒というタイムを持っていますが、そこのタイムを持っている人はたくさんいる状態です。それから1歩2歩抜け出さないと、日本を出て世界で戦っていくということができないのと思うので、タイムを出していくシーズンにしていきたいです。

――ありがとうございました!

他己紹介の順番を決めるためにじゃんけんをする二人 【早稲田スポーツ新聞会】

今年の競走部のスローガンである『早稲田人たる覚悟』を書いていただきました! 【早稲田スポーツ新聞会】

◆伊藤大志(いとう・たいし)(※写真左)

2003(平15)年2月2日生まれ。172センチ。長野・佐久長聖高出身。スポーツ科学部4年。自己記録:5000メートル13分28秒67、1万メートル28分37秒34。誕生日に石塚選手とトレーナーの方から加湿器兼ライトをもらったという伊藤大駅伝主将。今一番欲しいものは、レコードプレイヤ―だそうです。美容やインテリアなど多趣味な一面を教えてくださいました!

◆石塚陽士(いしづか・はると)

2002(平14)年4月22日生まれ。171センチ。東京・早実高出身。教育学部4年。自己記録:5000メートル13分33秒86、1万メートル27分58秒53。今年のプチ目標は「写真写りを良くすること」と答えてくださった石塚選手。そんな石塚選手ですが、対談中の温和な雰囲気や時折伊藤大駅伝主将と笑い合う姿がとても印象的でした!
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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