【ラグビー/NTTリーグワン】託されたバトン。偉大な先輩の“ラストマッチ”で 苦労人がリーグワン初先発をつかむ<クボタスピアーズ船橋・東京ベイ>

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 福田選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

必然めいた偶然と遭遇し、大きな喜びといくばくかの緊張をかみ締める男がいる。福田陸人がジャパンラグビー トップリーグ(当時)での活躍という将来を見据え、フランカーからフッカーへポジション転向を試みたのは明治大学ラグビー部2年生のときだった。だが、そこではBチームのスタメンには選ばれるも、そこから先には進めず、シーズン途中でフランカーに復帰。福田が明治大学の先輩でもある、あの選手の存在を意識するようになったのは、このころである。

「そもそも、フッカーに転向したところで試合に出ていないとスカウトの声は掛かりません。ヒロさん(杉本博昭)もクボタスピアーズ(当時)に入団してから(ナンバーエイトから)フッカーに転向されたという話を聞いて、そういう選択肢もあるんだと思いました」

卒業後、2022年に杉本が在籍するクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)に入団。同時に、本格的なフッカー転向を目指した。一度しかない人生において、結果が出るかどうか分からないことに挑戦するのは大きな勇気を要するものだ。そんな福田を支えたのがチームメートとコーチ陣。そして杉本も、自分と同じ道をたどる後輩を何かと気に掛け、アドバイスを送り続けた。

だが、時間は無情に過ぎ去っていき、同期入団の選手たちが次々とデビューしていく中、福田は試合出場のチャンスをつかめずにいた。一昨季も、そして昨季も、ピッチの外から仲間たちの戦いを眺め続けた。

「悔しさもありましたが、自分が成長しないことには試合には出られません。吸収できるものはすべて吸収して、早くみんなに追いつこうと思っていました」

そんな福田にとって自身をアピールする場となっていたのが、練習試合だった。“今季こそ”という思いで臨んだ昨年秋のプレシーズンマッチ。ところがその第2戦、早々の時間で福田は左のふくらはぎを負傷。活躍の舞台を失った。

「めちゃくちゃ悔しかったです。プレシーズンマッチ1戦目ではいいパフォーマンスを発揮できたので、『今季はデビューできるかも』と思っていた矢先の出来事でした。少し落ち込んでしまいました」

考え得るすべてのケアを施し、年内には無事にカムバック。練習試合で高いパフォーマンスを発揮し、3月に行われた埼玉パナソニックワイルドナイツとの練習試合では2トライを決めて勝利に大きく貢献。そして、そのときがついに訪れた。ホストゲーム最終戦となった前節の三重ホンダヒート戦。控えの16番に、福田の名があった。

「めちゃくちゃうれしかったです。ヒロさんにも『同じルートを辿ってきた選手が活躍するのはうれしい』と言っていただきました」

物語は、そこで終わりではなかった。控えでのメンバー入りは、あくまで序章。杉本が引退を表明した今季の最終節・東京サントリーサンゴリアス戦に福田は先発で出場する。

「選ばれたからには、やるしかないです。セットピースもフィールドプレーも全力でいきます。また来シーズンも福田を使おうと、(コーチ陣に)そう思ってもらえるプレーをします」

強いS東京ベイを創ってきた男から、これからさらにS東京ベイを強くしていく男へ。バトンは、託された。

(藤本かずまさ)
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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