【ラグビー/NTTリーグワン】アイスタ最多観客動員を記録した中での後半の猛攻。 観て楽しいラグビーを展開した静岡BR<静岡BR vs S東京ベイ>

静岡ブルーレヴズ ヴェティ・トゥポウ選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
静岡BR 31–31 S東京ベイ


「(不出来だった)前半は『ホストゲームでみっともない試合をしていたらやばいな』と正直なところ思っていました。後半は自分たちの強みを生かして挽回することができて、最後の盛り上がりや静岡コールの一体感というのは選手に届いていました。ホスト感がすごく伝わってきたので、勝てなかったのは残念ですけど、あの声援が最後に追いつく力になったと思います」

静岡県中部のIAIスタジアム日本平(以下、アイスタ)でホストゲームを開催する意義について、試合前から熱く語っていた日野剛志は、31対31の激戦をこう振り返った。

前半の7対31という劣勢から、後半は一気に流れを変えてクボタスピアーズ船橋・東京ベイを無得点に抑えつつ徐々に点差を詰めていった静岡ブルーレヴズ。80分の終了を告げるホーンが鳴ったあとに相手ボールをターンオーバーして同点トライを決め、最後のコンバージョンゴールキックが入れば大逆転勝利という状況となり、アイスタの盛り上がりは最高潮に達した。

【©ジャパンラグビーリーグワン】

結局、そのコンバージョンゴールキックは決まらず勝利には至らなかったが、年に一度のアイスタ開催で同スタジアムでのジャパンラグビー リーグワン過去最多の6,423人が詰めかけた中、静岡BRを応援した人の多くは「楽しかった! また観に来たい」と心から感じたことだろう。

2トライを挙げてプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたチャールズ・ピウタウも「今シーズンで一番スタンドからの大きな声援やエナジーを感じましたし、ピッチも素晴らしかったです」と言う。

Jリーグのベストピッチ賞を9回受賞したことのあるアイスタは、カーペットのような美しくて強い芝が自慢だが、それが後半の怒とうの追い上げにも貢献した。

「(後半に)自分たちのリズムを出して流れを変えるにはスクラムで主導権を握っていくしかないと思っていました。踏ん張っても芝がめくれないので、スクラムという僕らの強みをすごく生かすことができました」という日野の言葉どおり、特に後半はスクラムで優位に立って何度もペナルティを獲得し、自分たちの流れを取り戻していった。

また、後半序盤の選手交代により、ハーフタイムで3人を代えて攻勢に出たのもプランどおりだった。

「(今週は)後半のメンバーだけでトレーニングしたりして、後半どう戦うかというところをやってきました。プランどおりに彼らが遂行してくれて、良いインパクトを与えてくれたと思います」と藤井雄一郎監督も振り返る。

シオネ・ブナ、ヴェティ・トゥポウ、ショーン・ヴェーテーという3人の若い外国人フォワードが強烈なパワーと推進力を発揮し、スクラムハーフ・岡﨑崎航大のハイテンポなゲームコントロールも流れを変える意味で大きな役割を果たした。

シーズンが進むにつれてインパクトメンバーの充実が進み、後半は自分たちの強みを生かしながら観て楽しいラグビーを見せつけた静岡BR。プレーオフトーナメント進出は容易ではなくなったが、「静岡県全体から応援されるチームに」というクラブの目標に向けては、大きな手ごたえのある一歩を踏み出すことができた。

(前島芳雄)

【©ジャパンラグビーリーグワン】

静岡ブルーレヴズ(D1カンファレンスA)

静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督

「前半は少ない点差でしっかりついていって、後半はインパクトのあるプレーヤーを入れて今日の後半のような形にすることを想定して練習してきましたが、前半に点を取られ過ぎたのと、最後のあのコンバージョンキックが入らなかったのは、キッカー不在ということで、しょうがないかなと。選手は最後まであきらめずにしっかりと戦ったので、そこを十分評価して、次の東京サントリーサンゴリアス戦で良いゲームができるように準備していきたいと思います」

――前半に失点が重なってしまったところで、どういう面でやりたいことができてなかったと感じていますか?
「前半はちょっとボールを持っていけたところで簡単なミスが出て、またディフェンスになったときにちょっとバタついて、コミュニケーション不足のところを突かれていた。自分たちのシステムのエラーがあったと思います。あと体が動けていない選手もいたので、早々に代えて、後半は修正できたと思います。前半には脳震盪の選手もいたりして、コミュニケーション不足が出て、ああいうディフェンスになったのだと思います」

――後半に入った若い外国籍選手3人それぞれがパワーを非常に発揮していましたが、そこは期待どおりでしたか?
「そうですね。前半からしっかりそこ(インパクトプレーヤーを入れた後半)につなぐというプランができれば、もう少しうまくいったかもしれないですが、インパクトある彼らが、しっかり自分たちのフィジカルを使って前に出たので、その点は良かったと思います」

――最後の時間帯で、相手がイエローカードにより二人少ないことを考えると、スクラムにしたほうがよりコントロールした中でトライが取れたのではないかとも感じました。その時点での判断に関しては、ベンチから指示があったのでしょうか?
「ベンチからかなり指示はしたんですけど、早い段階でトライを欲しかったというのもあって、相手もちょっと崩れたりしていて時間をちょっと掛け過ぎているかなというのがあったので、もうクイックタップで(いきました)。パワーのある選手もスピードのある選手もいたので、それを使っていくというのは間違っていなかったと思います」

――チームとして、特定のスペシャリストというよりも、いろいろな選手がいろいろな部分をカバーして戦っているという印象がありました。
「そうですね。ウチの選手は一つの面ですごく長けてても一つの面がものすごく弱いとか、そういう選手がたくさんいるので、彼らの強みだけを出せるように日々考えています」

――プレーオフトーナメント進出は難しくなりましたが、残りの試合への意識はどうですか?
「勝ちたかったですが、今日も本当にサポーターのみなさんがたくさん応援してくれていましたし、その人たちのためにも家族のためにもチームのためにも、目の前の相手に一つずつ勝っていくというのが、ウチのスタイルだと思います。多少なりとも(プレーオフトーナメント進出の)可能性が残っているなら、最後まで一生懸命やりたいと思います」

――たくさんキャリーしたヴェティ・トゥポウ選手ですが、彼を起用した理由を教えてください。
「ボールキャリーも本当に強いですし、スピードもありますし、頭の良い選手です。どこかで使いたいというのはずっと(頭の中に)あったんですけど、外国籍選手にけがも出たりして今日はチャンスを(与えました)。後半のメンバーだけでトレーニングをしていたので、後半どういうふうに戦うかというところで、プランどおり彼らが遂行してくれて、良いインパクトを与えてくれたと思います」

静岡ブルーレヴズ
庄司拓馬バイスキャプテン

「ゲームプランとしては藤井(雄一郎)監督に言ってもらったとおりですが、前半で点数を取られ過ぎた。フィジカルバトルになると分かっていた上で、少し後手に回ってしまったと思います。そういう面で前半のところを修正すれば、もっともっと良くなってくると思っています。後半のインパクト(インパクトプレーヤー)に関しては、自分たちの役割をしっかり遂行できて、良いプレーができていたと思うので、前半のところをしっかり修正して次節に挑みたいと思います」

――後半になって一気に流れが変わった中で、スタジアムの盛り上がりはどう感じていましたか?
「後半、僕が交代してから、本当にスタジアムの一体感というのはすごくて、会場のみなさんから発せられる『レヴズコール』などの盛り上がりは、もう鳥肌が立つような感覚でしたし、本当にサポーターの人たちに支えられてつながった同点トライだったと思います」

【©ジャパンラグビーリーグワン】

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「今日の試合に関しては、明らかなところではありますけど、前半はしっかりコントロールができていましたが、逆に後半は自分たちのリズムがつかめませんでした。静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)がボールやエリアをしっかりコントロールしてきて、良いクオリティーを出されました。ペナルティを取られて、エリアを取られて背走させられてしまいました。ただ残り10分のところでは、(二人のイエローカードが出ながらも)13人で一つになってやることができていましたし、どれだけタフな状況でもギブアップせずにしっかりやってくれたところ選手を褒めたいところです。ただ、全体をとおして言えば、今日は勝つべき試合だったと思います」

――前半はうまくラインブレイクしてトライにつなげられていたと思いますが、静岡BRのディフェンスを研究したという成果もあったでしょうか?
「おっしゃるように良いプランを前半は遂行できていたと思います。瞬間、瞬間の判断も良かったですし、ラインブレイクも基本的には全部トライにつながりました。選手の落ち着きも良かったですし、過去数試合の課題だったところをしっかり克服して、前半はエンジョイしていたと思います。後半はボールをキープしている場面をあまり見せられなくて残念でしたし、モメンタムや危機感というのが後半は足りなかったと思います。ただ、アタックのところで言うと、メッセージとして伝えたかったアタックマインドを持つことを見せられたと思うし、特に前半は良かったと思います。

最後の10数分が、チームの姿そのものだと思います。スクラムからしっかり立ち上がってコントロールしました。勝ち負けにつながるところは本当に少しの差だと思いますが、自分の中では選手たちがああいう判断をしてボールをキープするというところに対しての後悔はまったくありません。いつもと一緒で学ぶところをしっかり学んで、同じ状況になったらスマートに対応できるようにやっていきたいと思います。あとは選手の努力のところは疑うところはありません」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン

「(フラン・ルディケ)ヘッドコーチが言うように本当に勝つべき試合だったと思いますし、最後の20分ぐらいですかね、ずっと相手のペースになってペナルティが多くなって、13人になって勝ち切れなかったことは、大きな反省が残る試合になったと思っています。ただ、本当に素晴らしいスタジアムの中で、素晴らしい静岡BRの応援の中で、そうした素晴らしい環境で試合ができたことはすごく良かったと思っています。

自分たちのペナルティのところに関しては、やっぱりレフリーとのコミュニケーションの部分も大事だと思っています。まだ試合が終わって間もないので、しっかりと分析をしないといけないですが、レフリーとの関係性も大事だと思っていますし、しっかりとコミュニケーションを取りながら、ただ批判するだけではなくて、しっかりと意見を言い合いながら、分析するというものを作っていくことが必要になると思っています。すごくフラストレーションは溜まっていますが、その原因はすべてレフリーにあるわけではないですし、自分たちにも非があると思っているので、しっかりとそれを受け止めて、次につなげていくということが重要になると思っています」

――最後の時間帯での体力的な部分やマインドのところはいかがでしたか?
「追いかけられている状況の中で、やはりプレッシャーはすごく掛かっていたので、一番大事なことはみんなで同じ絵を見て戦うことだと思っていました。ディフェンスもアタックも何をするのかというところが大事な部分だと思いますが、そこが規律の部分も含めて、アタックすれば簡単に相手にボールを渡してしまいましたし、ディフェンスも簡単に穴を開けられてしまい、それが大きくなってしまった時間帯で、相手にペースがいってしまったと思います。しっかりとみんなが同じような絵を見て戦うことが重要になると思っていたので、言い続けてはいましたけども、なかなか最後まで統一することはできなかったのかなと思います」

――残り1分半、あそこでボールキープしてリードを守り切るというのは、リスクマネジメントや自信という面でどのように考えていましたか?
「あの場面はスクラムからスタートしましたが、スクラムがスタートした時点では残り2分あったので、キックを蹴ってもいいとも思いました。(イエローカードが二枚出て)13人でしたし、スクラムハーフの岸岡(智樹)と、10番(の役割)をやっていた僕と、ラピース(ピーター・ラピース・ラブスカフニ)と3人でボールキープしていこうということを話しながら、実際にもホーンが鳴るところまでキープできたので、悪くなかったと思っています。本当に最後のボールを出して蹴り出すだけのフェーズでペナルティになってしまったので、何とも言えないというか、結果だけを見れば蹴り出しとけておけばよかったというのはありますけど、そこの判断に関してはそこまで悔いはないです。ボールキープのところでどうすれば自分たちがもっと良くできたのかというところもありますし、ペナルティを取られてしまった時点でどうやって次に守るのかというところに切り替えられなかったというのは、反省かなと思います」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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