【UFC】UFC 300に登場するチャンピオンたち

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UFCのマッチメーカーたちはUFC 300のために、これまでの歴史を振り返ってみても最大級に充実していると言える対戦カードを組み上げた。そこには12人のチャンピオンが登場し、最初から最後まで、注目の試合が目白押しだ。この記念すべきイベントに誰が出場するかについては多くの推測が飛び交い、ファンによる型破りな理論が展開され、多くのドリームマッチが夢想されていた。

日本時間2024年4月14日(日)にアメリカ・ネバダ州ラスベガスのT-Mobileアリーナで実施される予定の、信じられない試合のラインアップは次の通りだ。

デイブソン・フィゲイレード vs. コーディ・ガーブラント
ボビー・グリーン vs. ジム・ミラー
ジェシカ・アンドラージ vs. マリナ・ロドリゲス
ジェイリン・ターナー vs. ヘナート・モイカノ
ソディック・ユサフ vs. ディエゴ・ロペス
ホリー・ホルム vs. ケイラ・ハリソン
カルヴィン・ケーター vs. アルジャメイン・スターリング
イリー・プロハースカ vs. アレクサンダル・ラキッチ
ボー・ニッカル vs. コーディ・ブランデージ
チャールズ・オリベイラ vs. アルマン・ツァルキヤン
ジャスティン・ゲイジー vs. マックス・ホロウェイ
ジャン・ウェイリー vs. ヤン・シャオナン
アレックス・ペレイラ vs. ジャマール・ヒル

簡単に言おう。このカードは「美しい」。すべてのファイトファンを引きつける何かがある。大一番となるタイトルマッチ、ファン人気の高いファイターたち、これから名を挙げようとする有望なプロスペクトたち。立派な経歴を持つオリンピアンがUFCデビューし、1試合を除くすべてにトップ15に入るファイターが出場する。

ここでは、UFC 300に登場する戦士たちの中から、UFCのベルトを手にしたことのある面々を取り上げ、その傑出したキャリアを紹介する。

コーディ・ガーブラント
コーディ・ガーブラントの台頭は目を見張るものがあった。そのエキサイティングなスタイルとノックアウト力、そして親しみやすい人柄で、“ノー・ラブ”ことガーブラントはこのスポーツに旋風を巻き起こした。初参戦から5連勝を飾ったガーブラントは、続けてドミニク・クルーズに圧勝してバンタム級王座に就いている。

ライバルのT.J.ディラショーに連敗を喫したガーブラントは、そこから厳しい道のりを歩むことになり、2021年にフライ級に転向。だが、ガーブラントがこの階級で戦ったのは1度限りで、慣れ親しんだバンタム級に復帰してからは、トレビン・ジョーンズとブライアン・ケレハーを倒している。これらの勝利により、ガーブラントはビッグファイトを要求できる立場になり、新たな階級での挑戦を続ける元フライ級王者、デイブソン・フィゲイレードとの対戦が組まれた。

デイブソン・フィゲイレード
UFC 212でオクタゴンデビューを果たしたデイブソン・フィゲイレードは、観客を魅了するスタイルで瞬く間にフライ級のランキングを駆け上がった。2020年のはじめにジョセフ・ベナビデスとの王座決定戦に臨んだが、計量に失敗してベルトを手にする資格を喪失。だが、この試合でテクニカルノックアウト勝利を収めたフィゲイレードは、ベナビデスと再び対戦する機会を獲得した。フィゲイレードはこのチャンスをものにし、第1ラウンドでベナビデスに1本勝ちして、誰もが認めるUFCフライ級王者となった。

アレックス・ペレスを相手に王座防衛を果たしたフィゲイレードは、UFC 256でブランドン・モレノと対戦。フィゲイレードとモレノの初戦では、判定勝ちでフィゲイレードが王座を保持した。この試合は名勝負と称され、ここからモレノとの4試合にわたるチャンピオン争いが始まる。結果は1勝2敗1分とモレノが優勢となり、体重を維持するのに苦戦してきたフィゲイレードはバンタム級に転向。そこで長年コンテンダーの地位を維持してきたロブ・フォントとの対戦に挑む。フィゲイレードはフォントを倒し、バンタム級の強豪と渡り合えることを証明してみせた。

フィゲイレードにはUFC 300でバンタム級の大物を退け、タイトル戦線に名乗りを上げるチャンスがある。

ジェシカ・アンドラージ
ジェシカ・アンドラージが約11年間のUFCキャリアで対戦した相手のリストを一目見れば彼女が侮れない存在であることがすぐに分かる。アンドラージは女子バンタム級から女子ストロー級に転向し、ランキングを上げてきた。

最初の王座決定戦でヨアンナ・イェンドジェイチェクに敗れたアンドラージは、そこから4連勝を果たして女子ストロー級チャンピオンに登りつめた。アンドラージはローズ・ナマユナスを相手にワイルドな投げ技でノックアウトしてベルトを手にしており、それを見届けたブラジルの観衆は熱狂の渦に包まれた。

アンドラージはジャン・ウェイリーとナマユナスに敗れたのちに女子フライ級に転向し、この階級の王座を目指して戦ってきた。それ以来、アンドラージはフライ級とストロー級を行ったり来たりしながら、新鋭からベテランまで、さまざまな選手と対戦している。

直近ではマッケンジー・ダーンをノックアウトで倒したことで、今回のマリナ・ロドリゲスとの女子ストロー級マッチが決まった。

ホリー・ホルム
世界的なボクサーとしてUFCに参戦したホリー・ホルムは、たちまちロースターの中で最も著名な女子ファイターのひとりとなった。UFC 193でホルムはロンダ・ラウジーをノックアウトしてUFC女子バンタム級王者の座を手にしている。これはUFC史上最大の番狂わせとも言われ、ホルムは一躍スター選手となった。

ラウジーを倒したホルムは初めての防衛戦でミーシャ・テイトに敗れる。それ以来、再び女子バンタム級王者になることを目指して戦い続けたラウジーは、女子フェザー級でも2試合に出場。現女子バンタム級王者のラケル・ペニントンに勝利したことのあるホルムは、新鋭ケイラ・ハリソンとのUFC 300での対戦を、タイトル戦線復帰への布石としたいところだろう。

アルジャメイン・スターリング
UFCのロースターに10年以上在籍しているアルジャメイン・スターリングは、バンタム級で数々の栄誉を積み重ねてきた。2014年2月にデビューしてから数年の間で着々とランキングを上げ、やがて9連勝を達成。その連勝の最中にピョートル・ヤンを破り、UFCバンタム級王者となった。“ファンク・マスター”の異名を持つスターリングは、ヤンを再び倒し、T.J.ディラショーとヘンリー・セフードにも勝利して、3度の防衛に成功している。

これらの勝利によって、スターリングはオクタゴンに足を踏み入れた最高のバンタム級選手のひとりとして、そのレガシーを確固たるものにした。UFC 292でショーン・オマリーに敗れたのを機に、スターリングは何年も迷い続けてきたフェザー級への転向に踏み切る。今回、スターリングはUFC 300でフェザー級デビューを果たし、筋金入りのコンテンダーであるカルヴィン・ケーターと対戦する。

イリー・プロハースカ
イリー・プロハースカのような選手は他にいない。そのルックスからファイトスタイル、そして性格に至るまで、プロハースカはファイトファンの間で瞬く間に人気を博した。プロハースカがライトヘビー級王座に挑戦するために必要だったのは、前王座挑戦者のヴォルカン・オーズデミアとドミニク・レイエスにノックアウト勝ちした2試合だけだった。

シンガポールで開催されたUFC 275で、プロハースカはグローバー・テイシェイラと2022年のベストファイトのひとつに挙げられる試合を戦った。プロハースカのための試合だったと言っても過言ではない。第5ラウンドの終盤でテイシェイラに1本勝ちしたプロハースカは、UFCライトヘビー級王座へと上りつめている。

残念ながら、プロハースカはその数カ後に、ケガによってタイトルを手放さざるを得なかった。それによって、プロハースカの負傷がこの階級を停滞させることはなく、他のコンテンダーがタイトルに挑戦する道が開かれている。UFC 295で復帰したプロハースカは空位になっていた王座をかけてアレックス・ペレイラと対戦するも、第2ラウンドで敗北。早期の巻き返しを誓ったプロハースカは、UFC 300でアレクサンダル・ラキッチとの重要な一戦に臨むこととなった。

チャールズ・オリベイラ
“ドゥ・ブロンクス”ことチャールズ・オリベイラのUFCキャリアは、まさにおとぎ話のようだ。

オリベイラのUFCデビューは2010年8月1日にまでさかのぼり、オクタゴンの上ではフェザー級とライト級を行き来しながら両階級で大成功を収めてきた。フェザー級の体重を維持することに苦戦したオリベイラは、2017年にようやくライト級に専念することにし、そこからキャリアが一気に飛躍する。

オリベイラはすべての試合でフィニッシュを決めながら11連勝を果たし、UFC 262でマイケル・チャンドラーをノックアウトしてライト級王者にまで登りつめた。オリベイラはパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを13回とファイト・オブ・ザ・ナイトを3回獲得しており、どちらもUFC史上最多を数えるフィニッシュ(20回)と1本勝ち(16回)を誇る。

オリベイラはUFC 280でイスラム・マカチェフに敗れ、ライト級のベルトを取り戻すことは叶わなかった。シュートボクセ・アカデミーの顔として、オリベイラは次の対戦でベニール・ダリウシュをノックアウト。その後、マカチェフとの再戦が予定されていたが、負傷によって欠場を余儀なくされた。オリベイラはその再戦を待つよりも、UFC 300で新鋭のコンテンダーであるアルマン・ツァルキヤンと対戦することを選んでいる。

マックス・ホロウェイ
当時20歳だったマックス・ホロウェイはUFC 143でダスティン・ポワリエを相手にUFCデビューを果たした。

キャリアを3勝3敗でスタートさせたホロウェイは、ポワリエとのデビュー戦の他にコナー・マクレガーとの試合も落としている。マクレガーとの対戦後、ホロウェイはフェザー級の強豪たちを次々と倒しながら12連勝という驚異的な記録を打ち立てた。ホロウェイはUFC 212で偉大なるジョゼ・アルドをノックアウトし、圧倒的な強さでUFCフェザー級王座を獲得。その後、3度の防衛に成功している。

チャンピオンシップをかけた試合でアレキサンダー・ボルカノフスキーに3度敗れ、ホロウェイはフェザー級のトップからは遠ざかっているもの、その勢いはいささかも衰えていない。ボルカノフスキーとの対戦を除けば、タイトルを失ってからのホロウェイはオクタゴンに足を踏み入れたフェザー級選手をことごとく倒してきた。

ホロウェイはフェザー級で史上最多を数える勝利数(20回)、ノックアウト数(9回)、フィニッシュ数(11回)に加え、UFC史上最多となる打撃数(3,197回)を積み上げ、その名はUFCの記録のいたるところに刻まれている。

UFC 300でホロウェイはライト級に転向し、ジャスティン・ケイジーとBMFベルトを賭けて戦い、ライト級の王座争いに食い込むことを狙う。

ジャスティン・ゲイジー
ジャスティン・ゲイジーがオクタゴンに足を踏み入れたその瞬間から、純然たるバイオレンスとカオスの世界が始まっていた。

18勝0敗という輝かしい戦績とともにUFCにやってきたゲイジーは、すぐさまライト級にインパクトを与えている。ファンが見たこともないようなクレイジーな試合でマイケル・ジョンソンを倒したゲイジーは、次々とビッグネームとのバトルに挑んでいく。2020年、ゲイジーはトニー・ファーガソンとのUFCライト級暫定王座決定戦に挑戦。そこで、キャリア最高のパフォーマンスを見せた。同じ年にハビブ・ヌルマゴメドフとも対決したものの、王座統一には至らず。2度目のライト級タイトル戦のチャンスは2022年にやってきたが、チャールズ・オリベイラに敗れている。

“ザ・ハイライト”の2つ名を体現するゲイジーは、ラファエル・フィジエフおよびダスティン・ポワリエに2連勝を収め、後者との試合では空位となっていたBMFタイトルを手にしている。ゲイジーはその試合にヘッドキックで勝利しており、その活躍によって、現ライト級王者イスラム・マカチェフの挑戦者候補に数えられている。

UFC歴代最多タイとなる7度のファイト・オブ・ザ・ナイトを獲得したゲイジーは、パフォーマンス・オブ・ザ・ナイトにも5回選ばれている。

マカチェフがラマダンによる休止期間に入ったため、ゲイジーはそれを待つ間にUFC 300でのマックス・ホロウェイとのBMFタイトル戦のオファーを受諾。ホロウェイを打ち破れば、ゲイジーはBMFベルトを防衛した初めてのファイターになる。また、マカチェフの挑戦者候補という位置づけも、より強固なものになるだろう。

ジャン・ウェイリー
中国初のUFCチャンピオンは、とてつもないスーパースターになった。

ジャン・ウェイリーは2018年にUFC 227でオクタゴンに初登場したときから、MMA界隈に嵐を引き起こしていた。中国・深圳ではジェシカ・アンドラージをノックアウトし、UFC女子ストロー級王者に輝く。“マグナム”ことジャンは、その衝撃のパフォーマンスに続き、UFCの歴史に残る、最高の戦いを披露する。元女子ストロー級王者であり、2024年にUFC殿堂に迎えられるファイター、ヨアンナ・イェンドジェイチェクとの大激戦は、カミソリ1枚の差でジャンに軍配が上がった。

ローズ・ナマユナスとのタイトルマッチに2度敗れ、イェンドジェイチェクと再戦することになったジャン。2度目の対戦では、実に鮮やかなスピニングバックフィストでノックアウトを決めている。続いてカーラ・エスパルザを破ってUFC女子ストロー級チャンピオンに返り咲いたジャンは、昨年にUFC 292でアマンダ・レモスと対戦し、圧倒的なパフォーマンスでレモスを退けてタイトルを防衛した。この試合でジャンは、女子ストロー級における最多打撃数を記録している。

UFC 300ではヤン・シャオナンを対戦相手に迎え、中国人同士のタイトルマッチに臨む。

ジャマール・ヒル
ライトヘビー級のジャマール・ヒルは、デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズのシーズン3で輝きを放ったことで契約を勝ち取り、UFCの道を歩み始めた。

以来、“スイート・ドリームズ”ことヒルは、オクタゴンで信じられないような活躍を見せ、敗戦は1本勝ちのスペシャリストとして知られるポール・クレイグとの対戦のみ。ミシガン州出身のヒルはジミー・クルート、ジョニー・ウォーカー、チアゴ・サントスを連続でノックアウトし、ブラジルでグローバー・テイシェイラとライトヘビー級のタイトルをかけた試合に臨むことになった。

この試合は、イリー・プロハースカが負傷によりタイトルを返上し、空位の王座をめぐってヤン・ブラホビッチとマゴメド・アンカラエフが対戦した試合がドローに終わるという波乱の展開の末に決まった。ヒルはこの試合を受け入れ、テイシェイラを相手にこれまでで最高のパフォーマンスを発揮。何度もテイシェイラを仕留めかけ、ユナニマス判定で勝利を手にしている。その結果、ヒルはデイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ出身者として初めてUFC王者に輝いた。

残念ながらヒルは2023年にアキレス腱を痛め、プロハースカと同じ選択をすることが最善だと判断し、ライトヘビー級が自身の回復を待たずに済むよう王座を手放した。UFC 300の目玉となる試合を模索していた時、UFCが電話をかけたのが、そんなヒルだった。ヒルにはアレックス・ペレイラと対戦して、王座を奪還するチャンスが与えられている。

アレックス・ペレイラ
アレックス・ペレイラがキックボクシングからMMAに転向したとき、誰もがその重大さに気づいていた。ペレイラはすぐさまUFCに進出。その類まれな才能と、長年チャンピオンに君臨してきたイズラエル・アデサニヤとのライバル関係が相まって、ペレイラにはビッグファイトが次々と舞い込んできた。

“ポーアタン”ことペレイラは、ショーン・ストリックランドをノックアウトしたことで、マディソン・スクエア・ガーデンでアデサニヤとミドル級王座を争うチャンスを得た。アデサニヤをノックアウトしたペレイラは、オクタゴンで戦い始めてからわずか4戦目でUFCミドル級王者になった、初めての選手となる。その後、ペレイラはアデサニヤに敗れてミドル級のタイトルを失った。この敗戦を機に、ペレイラはライトヘビー級に転向し、あっという間に新たな階級でもトップ戦線に躍り出た。

ペレイラはヤン・ブラホビッチにきん差のスプリット判定勝ちを収めて、UFC 295で空位のライトヘビー級王座をめぐってイリー・プロハースカと対戦することが決まる。ペレイラは第2ラウンドでプロハースカをノックアウトし、UFC王座を2度もマディソン・スクエア・ガーデンで獲得することとなった。

この勝利は歴史的なもので、ペレイラはミドル級とライトヘビー級の両タイトルを獲得したUFC史上唯一のファイターとなった。また、UFCの選手が2つの階級でチャンピオンになるのに要した時間や試合数はこれまでで最も短い。ペレイラはUFC 300のメインイベントでジャマール・ヒルと対戦し、直近2代のライトヘビー級王者による対戦でタイトル初防衛に挑む。
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