【週刊グランドスラム247】日本野球連盟にアナウンス委員会が新設される
高田さんが野球の場内アナウンスを始めたきっかけは、大学で野球部のマネージャーになり、リーグ戦でアナウンスをするようになったこと。時代を遡れば、大学リーグ戦の場内アナウンスは放送研究会の女子部員が務めることが多かった。だが、女子学生をマネージャーに採用する大学が増え始め、次第に場内アナウンスも女子マネージャーの役割となっていく。
「大学での役割に加えて、社会人野球でもスコアボードの操作などのアルバイトをさせていただく機会があり、次第に野球界との関わりが深くなっていきました」
そして、卒業後はイースタン・リーグの場内アナウンスを担当し、スキルを磨き上げる。その後、プロでの経験を生かして社会人の場内アナウンスも受け持つようになった。
「2003年に、日本代表が初めてすべてプロ選手で編成されたアテネ五輪のアジア予選に呼んでいただきました。このアナウンスを受け持った時に、自分の中で『やり切った』という思いがありました」
それから別の仕事に就き、社会人のアナウンスも時々、という期間があった。それでも、情熱が消えてしまうことはなく、現在はメンバーをまとめる立場になっている。
「なぜ、長く場内アナウンスを続けているのかと聞かれたら……。極端な表現をすれば、プロはあくまで選手個人ですが、社会人はチームでの勝利がすべて。都市対抗予選でベンチの声が聞こえたりすると、命がけの戦いに自分も参加しているような気持ちになるんです。そうした社会人野球の魅力がひとつ。もうひとつは仲間ですね。私と近い世代に奇跡のような素晴らしいメンバーが揃い、いい意味でずっと切磋琢磨できていることに大きな価値を感じています」
試合に不可欠な役割をしっかりと将来へつなぐために
「高校、大学を卒業後も何らかの形で野球と関わり、野球が好きだという気持ちを表現できる場があることは幸せで、若い世代の方々にも手を挙げていただきたいと思います。ただ、現状では本業と両立する難しさに加え、自分たちが理想だと信じている形を、日本野球連盟の方々にどう理解してもらうかも考えなければいけません。このアナウンス委員会の立ち上げをきっかけにして、これからの世代へよい形でバトンタッチできるようにしていきたいですね」
アナウンスのマニュアル作りも求められているというが、これまで地区ごとに育まれてきたやり方、話し方もあるだけに、各地区の委員と対話を重ねながら、将来に向けた立ち位置とともに理想的な形を築かなければならない。そうした中で、社会人野球の場内アナウンスに携わる人たちのスキルアップが実現すれば、それは社会人野球の発展にも着実につながっていくはずだ。
「都市対抗でアナウンスする際、代打などは現役生活において最初で最後の東京ドームという選手もいると思います。だからこそ、名前や出身校は絶対に読み間違えられない。準備不足はもってのほかですが、かつては先輩方に『言ったことは消えるから』と慰めていただいた時代を経て、最近は動画の音声として永遠に残る。そんな緊張感の中でマイクの前にいます」
野球ファンなら、勝敗を分けるであろう緊迫した場面で、投手交代や代打のアナウンスに鳥肌が立った経験があるだろう。それは、審判員のアウトかセーフか、公式記録員のヒットかエラーかの判定とともに試合の一部と言える。そんな重責を担う高田さんたちがやりがいを感じてこそ、社会人野球の未来は開かれる。アナウンス委員会の活動が、その一助になればいい。
【取材・文=横尾弘一】
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