【週刊グランドスラム246】静岡大会を制したNTT東日本の強さを裏づける名将の言葉
静岡大会はNTT東日本が優勝。決勝の7回からきっちりと締めた寺嶋大希(中央)に、チームメイトが駆け寄る。 【写真=横尾弘一】
ヤマハ、トヨタ自動車を率い、最終日に始球式と第2試合のライブ配信で解説を務めた川島勝司さんは、トヨタ自動車のスキのない試合運びやヤマハの攻撃力に目を細めながらこう語った。
「1996年のアトランタ五輪は昨日のことのように思い出しますが、あの時に19歳だった福留孝介君(元・中日)がもう現役を引退している。時が経つのは本当に早いですね。そんな中で、自分が関わってきた試合を振り返ると、やはり大事な試合に勝つには理由がありますね」
川島さんの視線の先では決勝が中盤を迎えていたが、その舞台に勝ち上がったチーム、中でもNTT東日本の戦いぶりは、まさに「勝つには理由がある」と言えるものだった。
今回の4強は、各ブロックを3戦全勝で制した。しかも、準決勝の組み合わせを決める失点数はトヨタ自動車が3、ヤマハが5、東京ガスが6、NTT東日本は7と少なく、3試合とも7回コールド勝ちした東京ガスを筆頭に攻撃力も高い。頂点を目指す戦いがどんな展開になるか注目されたが、川島さんは「打線が活発なチームに軍配が上がるかな、とも感じたけれど、小雨が降る天候なども含めて投手が活躍する日になりましたね」と言った。
昨年は、16年ぶりに都市対抗、日本選手権とも予選で敗れたNTT東日本は、世代交代をしながらもチームカラーの継承を徹底した。1日遅れの開幕戦では、2年目の小柄な左腕・長久保滉成がTDKを相手に7回まで無失点の好投。打線は2回裏、四球や敵失にもつけ込んで一挙6点を奪う。中1日で臨んだ東邦ガスとの第2戦では、リードオフの道原 慧が3安打2打点で1点差の辛勝に貢献する。道原は1回裏に牽制死、4回裏にも二盗を失敗したが、それで積極性を失うことなく出場4試合で3盗塁を決め、15打数7安打の打率.467で首位打者賞を手にした。
2年目の道原 慧は、リードオフを務めて打率.467で首位打者賞に輝いた。 【写真=横尾弘一】
強打の東京ガスを九谷青孝から沢山優介への継投でシャットアウトしたヤマハと2年連続となる決勝には、長久保が先発。序盤はヤマハの佐藤 廉と息詰まる投手戦を繰り広げ、試合が動いたのは4回表だ。向山基生が中前安打を放ち、続く四番の野口泰司は詰まった三ゴロも二塁への送球が逸れ、向山は判断よく三塁を陥れる。このチャンスに、中村 迅がセーフティ・スクイズをきっちりと一塁線に転がし、向山が先制のホームを駆け抜ける。さらに敵失で一死二、三塁とし、保坂淳介の二ゴロの間に2点目を奪う。
5回表にも一死三塁からランエンドヒットで石井巧が右中間を破り、リードを3点に広げると、長久保は6回まで網谷圭将の2安打のみでヤマハに反撃のきっかけさえ与えない。7回表には石井巧の左前安打で4点目を挙げ、その裏からは21歳の誕生日を翌日に控えた寺嶋大希が登板。時折ストレートが高目に抜けることはあったが、勝負球の変化球はきっちりと投げ込み、終盤3イニングスを無安打で胴上げ投手となった。
若手からベテランまで、一人ひとりが自分にできるパフォーマンスをしっかりと発揮し、そこから流れを引き寄せるNTT東日本は、ヤマハに昨年の借りを返すとともに、3月の東京都企業春季大会に続く優勝。日本選手権に2大会ぶりの出場を決め、都市対抗東京二次予選に向けて力強く歩みを進めた。
【取材・文=横尾弘一】
【左=紙版表紙・右=電子版表紙】
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