全力で走り、アグレッシブに戦う #FC今治でプレーする 弓場堅真
【©FC.IMBARI】
ゆば・けんしん
2000年10月12日生まれ、大阪府出身。163㎝、61㎏。利き足は左。MF。背番号14。
大伴FC→川上FC→浜松開誠館高→国士舘大→Honda FC→FC今治
初めてJリーグの舞台に立って
いきなりコンディションを崩してしまったんです。チームに合流するタイミングで熱が続いて、体重も少し落ちてしまいました。
去年、11月の終わりにJFLのシーズンが終わって年末までは、月曜から金曜の朝8時から夕方5時まで定時で仕事をする毎日でした。工場で車のギアを加工する仕事でしたが、その分、体を動かすまとまった時間はなかったんです。
年が明けて、チームが始動するまでの2週間くらいで体を動かして、自分なりにコンディションを上げて今治に来るつもりでした。ところが、ずっと安静にしなければならなくて、まったく体を動かせず。鹿児島キャンプ(1月27日~2月4日)の最後に、ようやく本来の動きが戻ってきた感じでした。
鹿児島キャンプから3週間でシーズン開幕となりました。しっかりアピールできたからこその開幕戦でのメンバー入り、出場だったと思います。
自分は攻撃の選手なので、やっぱり得意なドリブル、動きだしをどんどん見せていくことを意識しました。攻撃に関しては比較的自由にやらせてもらえるプレー環境なんです。
基本的に、ハットさん(服部年宏監督)から求められるのは守備についてです。失点しないためには、チームとしてやるべきことがある。そこから攻撃に移れば自由に、積極的にプレーするようにしています。
攻撃とは逆に、守備に関しては細かい指示がありますね。でも一番、言われるのは体を張る部分。特に自分たちのゴール前で。そこは守備の選手も攻撃の選手も関係ないですね。FC今治では当たり前のこととしてゴール前で体を張って守る。全員の意思統一ができていると感じます。
プレーの強度、スピード感は、JFLとJ3を比べてどう感じますか?
JFLのレベルも高いし、チームとしてのHonda FCも強いと思います。ただ外国人選手だったり、これまでJ1、J2を戦って今J3でプレーしている選手は、やっぱり違いますね。個の力や経験の差といったものを感じます。
鳥取戦は89分の交代出場で、プレー時間はごく限られていましたが、初めてプレーするJリーグの光景はどのようなものに映りましたか?
時間が短かったし、見回す余裕もほとんどありませんでしたが、あれだけの観客の前でプレーすることがなかったですからね。改めてもっともっとプレーしたいと感じましたね。『これがJリーグの舞台なんだ』と思ったし、サポーターに支えられてプレーする意味も実感できました。あのとき感じたポジティブな重圧の中で、これからもしっかり戦いたいと思います。
Honda FCのホームもサッカー専用スタジアムでしたが、今治里山スタジアムの方が収容人数は多い。それだけスタンドも高くて、たくさんの方が応援してくださいますからね。本当にモチベーションになります。みなさんの前で軽いプレーはできないですよ。
左利きの弓場選手ですが、ここまでの途中出場では右サイドハーフ、左サイドハーフ、どちらのサイドでもプレーしています。
大学では左サイド、Honda FCでは右サイドをやっていましたが、個人的にはどちらでも大丈夫です。右サイドではカットインして左足シュート、左サイドでは縦に仕掛けて左足でクロスという形で、どちらのサイドでもゴールに絡むことを意識しています。
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一番の持ち味はハードワーク
大学のときに一度、FC今治には声を掛けていただいたんです。ただ、そのときにはHonda FCに加入することがすでに決まっていて。
個人的には大学からプロに行きたかったんです。でも4年のとき、夏くらいまであまり調子が良くなくて、試合に出たり出なかったりという感じでした。『このままではプロは難しいかな』と思って、Honda FCの練習に参加させてもらい、加入することが決まりました。『ここからステップアップしよう』と決めちゃったんですよ。
そうしたら夏以降、けっこうコンスタントに試合に出るようになって、スタメンにも定着して。FC今治から声を掛けていただいたのは、そういうタイミングでした。それでHonda FCでのプレーを1年間見て、もう一回、FC今治は声を掛けていただいたという経緯です。
大学からJリーグへ、という流れではありませんでしたが、Honda FCも歴史のある強豪で、そこでプレーすることは大きなプラスになったと思います。
それはめちゃめちゃ思います。僕は、高校は静岡の浜松開誠館高で、県内のHonda FCのことは良く知っていましたから。練習試合もやっていたし、むしろ『自分がHonda FCに入れてもらって、本当にいいの?』という感覚でした。
とはいえ、目指すところはやっぱりJリーグだったので、しっかり結果を出して、ステップアップしようという気持ちが強かった。『2年目くらいにJリーグに行かないと、このままJFLでプレーし続けることになるのかな……』とも思っていましたから、まさか1年後にFC今治に加入することになるとは。自分でも驚きでした。
昨年、JFLの優勝争いをするチームの中で、ポジションをつかんでいかなければならなかったわけですが、意識したことは?
Honda FCというのは選手の入れ替えが厳しいチームなんです。実力的に下から3人くらいがいなくなったら、新しく3人加わる、というスタンスで、Jリーグにステップアップする選手もそこまでは多くないから、基本的に実力のある選手しか残っていない。
そこに食い込んでいくために、周りを意識しすぎず、自分の特長を出していくことに集中しました。自分のプレーを出せるかどうか、そこで評価されるかが勝負だと思ってプレーしていましたね。
Honda FCでの1年間のプレーのどういう部分が、FC今治への加入につながったと思いますか?
最初に声を掛けていただいたのが大学のときだったので、そのときのプレーが求められているのだと思います。一番はハードワークですね。
全力で走って守備をして、攻撃のときは誰よりも早く裏に出ていって、ゴールに絡む。そういうアグレッシブなところが自分の一番の特徴だと思っています。FC今治のファン、サポーターのみなさんには、ボールを持ったときのプレーだけでなく、ボールを持っていなくても攻守にアグレッシブに走るところにも注目していただければ。
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戦える選手になるために
虎くんはめちゃめちゃ手本になります。そして、ただあこがれるだけで終わらせてはいけませんからね。目標としてしっかり食らいついていって、チャレンジし続けます。
虎くんは僕と同じくらいの身長ですが、とにかく体が強い。あの体の強さがあるから、ただめちゃめちゃ走るだけではなく、しっかり守備もできるんです。自分も負けていられないし、取り組んでいきたい部分です。
攻撃に関しては、選手それぞれ個性があるし、得意なプレーも違ってきます。でも守備で戦う、サボらずに走るといった部分は、ポジションや能力に関係なく、誰でもやらなければならない部分ですからね。そこで負けている内は、絶対に試合に出られないです。今はまだ紅白戦でも当たり負けすることがあるので、しっかりトレーニングしてフィジカルを上げていかないといけません。
こうしてFC今治でサッカーをやるようになって改めて気づくのは、周りはずっとJリーグでやってきた選手ばかりで自分よりプレースピードが速いし、体も出来上がっているということです。それでもみんな、さらにしっかりと筋トレをしている。ポジションに関わらず、いろいろな選手から学べることが、ここにはたくさんあります。
パワーアップしていくために、どういうところにこだわっていきますか?
食事ですね。体幹を鍛えたり、筋トレしてフィジカルの土台を作っているところなので、戦える体になるための食事、休養は大事にしています。
プロになって時間もできたので、食事や栄養について勉強したり、自炊にも挑戦しています。Honda FC時代は寮で出された食事を食べていればよかったんですが、これからは自分でやらないといけないですからね。
得意料理があるわけではないです。焼いて完成、みたいな(笑)。ただ、魚はしっかり食べるようにしています。ホッケとか。それから、いろいろな種類の野菜。チームの管理栄養士の河南こころさんにもアドバイスをいただきながら、自炊をがんばっています。
今治は魚もおいしいですからね。ぜひ、地元の食材を取り入れていただきたいです。意識して魚を食べる理由は何ですか?
良質の油が取れるからです。Jリーガーやアスリートの動画を見ても、みんな魚をよく食べていますよね。それだけ大事なんだな、と自分も食べています。
今シーズン、FC今治はJ3優勝、そしてJ2昇格を目指しています。弓場選手は昨年、Honda FCでJFL優勝を果たしました。その経験を今治でどのように生かしたいですか?
去年、感じたのは、優勝するためには連敗しないことが大事だ、ということです。長いシーズンですから負けることもあります。ですが、続けては負けない。負けそうな試合を追いついたり、引き分けで終わりそうな試合を勝ちに持っていけるかどうかが、大きな差になってくると思います。
Honda FCでも、負けた後の試合は本当にすごい雰囲気だったんですよ。そこでどれだけ盛り返せるかに、みんなすべてを懸けていたし、それこそカラ元気でもいいから勢いを大事にしていこうというのは、去年、学んだことです。
これからFC今治でプレーしますが、みんなに信頼されるプレーヤーになりたいと思っています。チームメートや監督、スタッフ、それからサポーターのみなさんの信頼を得ながら、FC今治のJ3優勝とJ2昇格に貢献できれば。
見た目は小柄だけれど、プレーは大きくてアグレッシブで迫力がある。何より戦える選手だと今治のみなさんに思ってもらうことが今の夢であり、目標です。小手先の技術で誤魔化すのではなく、戦える選手になるために、これからもがんばります!
取材・構成/大中祐二
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