【桜花賞】「アパパネ、アーモンドアイと同等の手応え」ステレンボッシュが逆転の春一冠
3歳牝馬クラシックレースの第一冠・桜花賞はモレイラ騎手騎乗の2番人気ステレンボッシュが快勝! 【Photo by Shuhei Okada】
ステレンボッシュは今回の勝利でJRA通算5戦3勝、重賞は初勝利。騎乗したモレイラ騎手は桜花賞初勝利、同馬を管理した国枝栄調教師は2010年アパパネ、18年アーモンドアイに続く同レース3勝目となった。
なお、北村宏司騎手が騎乗した昨年の2歳女王で1番人気のアスコリピチェーノ(牝3=美浦・黒岩厩舎)は3/4馬身差の2着、さらにクビ差の3着には坂井瑠星騎手騎乗の7番人気ライトバック(牝3=栗東・庄野厩舎)が入った。
道中のポジション、リズムともに申し分なし
モレイラ騎手の巧みなエスコートが逆転劇を呼んだ 【Photo by Shuhei Okada】
「阪神JFでは負けましたが、勝ち馬に迫る形での負け。立ち回り一つだと思っていましたし、スムーズに行けばと思っていました」
国枝調教師が語った“逆転劇”のポイントの一つ、それが道中の運び。V請負人のモレイラ騎手はこれに100点満点で答えたと言っていい。ただ阪神JF同様、この日もスタートは決して速くはなく、道中はちょうど中団。レース前半のポジション取りについて、鞍上はこう振り返っている。
「スタートは速くありませんでしたが、すぐに決断しなければいけなかったのが押して前に行くか、それとも控えて前を壁にする形でインを通るか。そこで馬のリズム重視で行ったところ、最初のコーナーに入るころにはアスコリピチェーノも近くにいたので、馬のリズムもポジションも良い形だなと思いました」
瞬発力に加えて、ハイスピードを長く保てる脚
わずかな間隙を突き一気に先頭に立ったステレンボッシュ(12番)、そのまま2歳女王アスコリピチェーノ(9番)を寄せ付けず 【Photo by Shuhei Okada】
「どのタイミングでスペースを見つけて外に出すことができるか。それが次のチャレンジでした」
ルメール騎手が騎乗した阪神JFでは内枠が災いしたか外に出せるスペースがなく、前方も壁。やむなく内にハンドルを切り替えて猛追するもあと一歩だった。だが今回は、直線入り口で前を行くチェルヴィニアとアスコリピチェーノの間にわずかなスペースができたと見るや、一気に割って進路を確保。これで行く手を遮るものはもう何もない。視界が広がったビクトリーロードをステレンボッシュは真一文字に駆け上がった。
「直線に入ってすぐにスペースができてくれましたし、非常に反応が良くて素晴らしい脚を使ってくれました。先頭に立つのが早かったのですが、最後までよく頑張ってくれました。すごく能力が高い馬です」
一瞬の間隙を逃さないモレイラ騎手の手綱さばきもさすがなら、その誘導に応える形でアッという間にスペースに突っ込み、かつ他馬を置き去りにしたステレンボッシュの脚もお見事。まさに人馬一体、矢のごとく伸びられてはさすがの2歳女王でも追いつくことはできなかった。この最大の武器であるステレンボッシュの末脚に関して、モレイラ騎手は次のように高く評価している。
「この馬には2つの長所があって、1つは瞬発力。それですぐに先頭に立つことになってしまったのですが、2つ目の長所はそのハイスピードを長く保てること。瞬発力があり、長いスパンで速い脚を使えることがこの馬の非常に強い特徴だと感じています」
春二冠へ国枝調教師も自信、血統も後押し
自身3頭目の三冠牝馬輩出へ国枝調教師は「アパパネ、アーモンドアイと同等の手応え」と自信を語る 【Photo by Shuhei Okada】
「三冠の1つ目を勝てたことで次がある。その夢を見ていきたいですね。アパパネ、アーモンドアイの2頭と比べても、手応えは同等のものを感じていますから」
また、春二冠への道は血統も後押ししている。3代母にはディープインパクトを産んだウインドインハーヘアがおり、母の父の母は1996年のオークス馬エアグルーヴ。現在の日本競馬を代表する2つの牝系がミックスされているうえに、父がジャパンカップを勝ったエピファネイア(その母は05年オークス馬シーザリオ)と来れば、むしろ東京2400mでこそと思わせる血筋だ。
戦前は混戦を示すオッズの数字だったが、今回の完勝とも言える結果で2024年3歳牝馬春のクラシックロードに一つの答えは出たか。ステレンボッシュにとってこの桜花賞は単なる逆転の舞台ではなく、二冠、三冠へと続く序章なのかもしれない。
モレイラ騎手、来日初週から重賞連勝
来日いきなりから重賞連勝を飾ったモレイラ騎手、この短期免許期間中にどれだけ勝つのか注目だ 【Photo by Shuhei Okada】
いきなりからエンジン全開のマジックマンの参戦により、2024年春競馬は気温の上昇以上に熱くなっていきそうだ。(取材:森永淳洋)
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