【週刊グランドスラム245】日産自動車九州が活動再開後初の公式戦に出場

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15年ぶりに活動を再開した日産自動車九州は、新たなデザインのユニフォームで力強く第一歩を踏み出した。 【写真=古江美奈子】

 日産自動車九州が15年ぶりに活動を再開した。1986年に創部し、1994年には都市対抗初出場でベスト8に進出。都市対抗に6回、日本選手権には9回出場して、九州の社会人野球を盛り上げてきた。だが、経営環境の変化によって2009年限りで活動を休止。翌2010年からは、有志によって苅田ビクトリーズベースボールクラブとして活動を続けてきた。そうして、今季から日産自動車九州として復活を果たす。昨年9月、その一報を聞いた植山文彦監督は「いつか、いつか必ず復活するんだと諦めずに活動してきました。ようやく、その時が来ました」と涙を見せた。
 創部2年目の1987年に入社し、15年間プレー。苅田ビクトリーズでは、コーチを経て2015年から監督を務めた。引き続き、日産自動車九州でも指揮を執る。
 新人11名を加えた計30名で企業チームとして再出発したが、苅田ビクトリーズからの流れも尊重し、日産自動車以外の関連・協力企業所属の選手を含めた『広域複合企業チーム』として活動する。各社の理解により、2月末からは2週間の強化合宿を行なった。その後は午前勤務、午後から練習に励む日々を送る。オープン戦を重ね、3月25日に初めての公式戦となる福岡県野球連盟会長杯に臨んだ。

先発を任されたのは、ルーキーの田村晃雅。4回1失点と力投を見せた。 【写真=古江美奈子】

 雨天のため1日順延して迎えた試合は、小雨の降る中で始まった。対戦するのは、昨年の日本選手権に出場したKMGホールディングスだ。3回表に4連打を浴びて先制を許すと、5回表には連打に失策が絡んでさらに1失点。2点を追う日産自動車九州の打線は、KMGホールディングスの先発・木下里都を打ちあぐね、5回まで無安打のまま試合が進む。ようやく、6回裏に四球で出塁すると、犠打と暴投で1点を返した。そして、7回裏には先頭の末石竜也がチーム初安打となるソロ本塁打を放ち、2対2の同点に追いつく。
 大会規定により7回制のため、延長となる8回からはタイブレークに。表のKMGホールディングスは、三塁打とスクイズで3点を挙げた。追いつきたい日産自動車九州は、合田有希の右前安打で2点を返す。なおも無死一塁とチャンスは続くが、送りバントが決まらない。ベンチからは「つなごう、つなごう」という声。しかし、あと1本が出ずに4対5で敗れた。植山監督はこう振り返る。
「6回裏に1点は返しましたが、続く一死三塁から追いつけなかった。7回に勝ち越せず、8回にはバントを失敗。ミスが続けば勝てません。守備では併殺を取るなどいいプレーもありましたが、勝てた試合を落としました」

7回裏には、ベテランの末石竜也が同点ソロ本塁打を放つ。 【写真=古江美奈子】

 1点差の惜敗だったが、「よく追い上げた」ではなく「勝ち切れなかった」内容。その認識は選手も同じだ。主将の合田は悔しさを滲ませる。
「勢いに乗って、一気に逆転したかったのですが……。ベンチがヒットを打たせるような雰囲気、声が足りなかった。一丸となって勝ち切る思いを前面に出せれば、もっといけたはずです。日頃から実戦を想定した練習ができていたのか、など反省点も多い。勝たなければ意味がありません」
 公式戦初白星はお預けとなったが、日産スターグラウンドには、平日にもかかわらず足を運んで声援を送る人々の姿があった。久しぶりに『NISSAN』と記されたユニフォームに袖を通した植山監督は、「試合中に『日産自動車九州の攻撃は』というアナウンスを聞くと、戻ってきたなと感じました」と感慨深げに語る。目指すのは、2004年以来の都市対抗出場だ。4月27日から始まる都市対抗福岡県一次予選へ向け、気力を奮い立たせる。
【取材・文=古江美奈子】

【左=紙版表紙・右=電子版表紙】

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著者プロフィール

1949年に設立した社会人野球を統轄する(公財)日本野球連盟の公式アカウントです。全国の企業、クラブチームが所属し、中学硬式や女子野球の団体も加盟しています。1993年から刊行している社会人野球オフィシャル・ガイド『グランドスラム』の編集部と連携し、都市対抗野球大会をはじめ、社会人野球の魅力や様々な情報を、毎週金曜日に更新する『週刊グランドスラム』などでお届けします。

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