【BCC/野球指導者講習会レポート】 基本の「ABC」を大事にすればアウトにする確率がグンと高まる。鈴木康友氏が説く守備の心得〜実技③守備編〜
守備で重要なスタートと姿勢
(1)基本のABCに基づいた練習
(2)捕ってから速く投げるための方法。ジャンピングスロー、ランニングスロー
前提として、守備で大事になるのは「スタート」だ。鈴木氏は「ゴロに対してバウンドが合うか、合わないかはスタートで決まると思っています」と語った。
では、どうすればいいか。ピッチャーが投げた後、バッターのインパクトに合わせて内野手はジャンプする。
その際の留意点として、鈴木氏は「両足でジャンプするのではなく、(片足ずつ着地のタイミングを少しずらして捕球体勢へ)パパッとスタートを切っていく。そうすると早くスタートを切れる」と説明した。いわゆる「スプリットステップ」と言われるものだ。
次は捕る際の姿勢について。「確実なのはしっかり割って体の真ん中で捕る」ことだと鈴木氏は話した。
「いかにステップが少なくて、早く放れるか。(捕球体勢は)左足が前。それで右足にパワーを溜め込んでおいて一発で投げる」
鈴木氏が言うように、ポイントは左足が前に出て捕球することだ。右足が前になると、投げる際のステップが一つ多くなる。
ABCの繰り返しで守備力アップ
ABCの意味について、鈴木氏は「当たり前(A)のことをバカ(B)にしないでちゃんと(C)やれ」と説明した。
チームの練習ではウォーミングアップの後にキャッチボールをしたら、まずはAを行う。ゴロを転がしてもらい、足を割って体の真ん中で捕っていく。2人1組で、交代で10本実施する。
次はB。Aの形を覚えたら、次は速く行う。これも2人1組で10本実施する。
その次はC。3人1組になり、塁間と同じ距離をとる。1人が真ん中に入り、カットマンとしてAと同じメニューを行う。内野手なら中継プレー、外野手ならクッションボールの処理、投手ならバント処理と、実際のプレーをイメージして行う。
「ABCを毎日5分やれば、試合における内野手のプレー(タッグやフライ捕球などを除く)は7、8割できる」と鈴木氏は話した。
早く投げるための捕球法
「普通に股を割って捕っていては間に合わない場合、ランニングスローやジャンピングスローで横から投げることが必要になる」(鈴木氏)
サード前のセフティバントや、セカンドで投手の足元を抜けた弱い当たりではランニングスローが必要になる。
「その打球に対して左足を先行し、捕球して一発で投げる」と鈴木氏は説明した。講義ではゴロを転がしてもらい、ランニングスローで一塁に投げる練習が実践された。
次は素手で捕ってジャンピングスロー。このときにも、左足が前で捕球することがポイントになる。鈴木氏が説明する。
「早く投げるためには、捕るときに右足が前に出ていたら1、2、3と三歩かかります。でも左足が前だと1、2で投げられる。一歩少ないですよね。この一歩の間に、足の速いランナーは二歩くらい進んでいます。素早く投げるためには左足先行で行かなければならないことを覚えておいてください」
相手がプレーしやすいように
続く質疑回答で最初に寄せられたのが、「高校生へのキャッチボールで意識することを教えてください」というものだった。
「よく『相手の胸に投げろ』と言われるけれども、相手の胸に投げるというより、次に相手がプレーしやすいところに投げる」
鈴木氏はそう話し、二遊間の併殺プレーである「6-4-3」を例に出した。因数分解すると、ゲッツーを完成させるまでには以下の手順が必要になる。
(1)ショートが捕る
(2)ショートがセカンドに投げる
(3)セカンドが送球を捕る
(4)セカンドがファーストに投げる
(5)ファーストが捕球する
以上のように「6-4-3」は5つの要素で構成されており、相手が次のプレーをしやすいように送球することでタイムを速くできるわけだ。こうして少しでも時間を短縮できれば、併殺を完成させる確率を高めることができる。
その他では、「バックハンドの捕球、送球の基本を教えてください」「ゴロを捕球する際、右足と左足の”間”をうまくつくるための練習方法を教えてください」「小学生にフライの取り方を教える練習方法」「グラブの形も重要ですか」などという質問が寄せられた。
この日の講義で鈴木氏が示したように、守備は基本と細かい意識が重要だ。プロ野球の世界で選手、指導者として長らく活躍してきた鈴木氏の話には、改めて見つめ直したいポイントが詰まっていた。
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