【ラグビー/NTTリーグワン】姫野和樹に掛けられた言葉を胸に。 細部を見つめ直し、もっと強くなる<トヨタV vs 東京SG〉

トヨタヴェルブリッツ 姫野キャプテン 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
トヨタV 38-39 S東京SG


敗戦が決まった瞬間、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)のキャプテンである姫野和樹は、椅子に座りうなだれていた清水岳のところにすぐに駆け寄った。

壮絶な結末だった。最大21点をリードしていたトヨタV。後半に動きが重くなると、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)の圧力に押され失点を重ねてしまう。貯金を吐き出すどころか、逆に1点のビハインドで迎えた後半39分、再逆転を狙ったボーデン・バレットのペナルティキックはポストを直撃も、「もしかしたらポストに当たる可能性もある」と、詰めていた山口修平がボールを奪ってトライを決め、トヨタVが6点をリードした。

東京SGがキックオフで試合を再開したとき、残り時間は5秒。トヨタVが空中に舞い上がったボールをつかめば、プレーオフトーナメント進出へ大きく前進できるところだった。

しかし、競り合いに敗れてボールは東京SGが押さえる。そこからトヨタVは自陣で相手を押し戻すために体を張った。その中で清水のタックルが高くなってしまい頭部が激突。清水にはイエローカードが提示(のちにレッドカードにアップグレード)され、トヨタVは一人少ない状況に陥った。

そして後半45分、それまで必死にしのいできたトヨタVの守備も、ついに耐え切れずトライを許してしまう。さらに正面からのコンバージョンキックを難なく決められ、38対39の大逆転負けを喫した。

冒頭の行動について姫野は次のように語った。

「僕自身も経験がありました。2年目のサントリーサンゴリアス(当時)との試合でしたけど、自分のペナルティで一人少なくなって。やっぱり、その選手の気持ちは痛いほど分かるので、まずは彼のケアをしないといけないと思いました」

敗戦の責任を背負い込み、椅子に座って頭を抱えていた清水は、姫野に引っ張られ仲間たちの待つ輪に加わった。

「(姫野さんからは)失敗から学べばいい。『落ち込むのは簡単だけど、そこからしっかりと学んで、這い上がって、強くなって戻ってこい。だから顔を上げろ』と言ってもらいました。ディフェンスの面では自分の強みが出たところもあったので、もう1回ディテールを突き詰めて、もう二度としないようにやっていきます」(清水)

3位東京SGとの勝ち点差は『14』に広がってしまったが、幸いなことに4位との勝ち点差は『5」と、まだまだ射程圏内である。今後どれだけ勝つためのディテールにこだわれるか。ここからは少しの緩みも許されない。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(右)、姫野和樹キャプテン 【©ジャパンラグビーリーグワン】

トヨタヴェルブリッツ
ベン・ヘリング ヘッドコーチ


「今日、会場に駆けつけてくれたファンの数、豊田市の方々をはじめ、本当に素晴らしいラグビー愛を感じることができました。とはいえ、80分間を強度高く運び、それが1点差で終わってしまったことに関しては非常に残念な気持ちであります。東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)が後半に勢いをコントロールし、接点の部分でわれわれをドミネートしました。ゲームとしては素晴らしい面がありましたけど、結果については非常に残念です」

――逆転まで許してしまったのは、メンタル面の問題か体力的な問題なのか。どちらでしょうか?
「どちらだったのかについては、来週また振り返りたいと思います。ただ、東京SGのほうがゲームをし、ゲームの中で後半に修正をして、よりフィジカルの冴えを出してきました。それに対して、われわれはタックルの高さなどを修正することができませんでした。東京SGは長い間チャンピオンチームと呼ばれるような強いチームです。試合の中で修正ができるチームです。逆に言うとわれわれとしてはそこが今回の試合からの学びになりました。多くの学びがあった試合だったので、ここからチームとして強くなっていきたいと思います」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン


「セカンドハーフで修正してきた東京SGさんに対して、コリジョンのところで受けてしまいました。それが後半、相手に流れをわたす原因だったと思います。ただ、試合以外のところで、豊田スタジアムにこれだけのみなさんがトヨタヴェルブリッツを観に来てくれたことに関しては、愛知県でずっとラグビーをしてきた身としては感慨深い光景だったと思いますし、すごくうれしく感じています」

――ポジティブな面もたくさんあったと思いますが、どうでしょうか?
「もちろんいい場面もありますし、まずは自分たちの良いところを伸ばして、今回のゲームで得た学びを生かし、次の試合に向けてどう修正していくのかも課題になってくると思います。良いところを見つつ、自分たちの課題を来週に向けて修正していかないといけないとも感じています」

――具体的に良かったところはどこでしょうか?
「前回、自分たちはボールを簡単に失ってしまっていて、そこが課題だと思っているのですが、今日の前半の流れ、ゲームコントロールの部分はすごく良かったと思います。ボールキープして、しっかりゲームポイントのバランスを取りながら相手陣内でプレーをする。そうしたら自分たちはスコアできるチームですので、そういったところが良かったと思います。

――同じような形で立て続けにトライを許しましたが、その原因について。
「今日に関しては、自分たちのスキルが足りなかったし、力が足りなくて、あそこのコリジョンで圧を食らってしまって、ペナルティをしてしまった。そこのペナルティ、ディシプリンのところの厳しさというのが、まだウチにはなくて、やっぱり練習の中でもやってしまう。そういったところは選手自身で許してはいけない環境を作っていかないといけないと思います。もっと厳しさを持って練習の中でもやっていかないといけない。練習の中ではオフサイドやノットロールアウェイが許されている状況なので、もっともっと厳しく、リーダーとしてやっていかないといけないと思っています」

東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督(右)、堀越康介キャプテン 【©ジャパンラグビーリーグワン】

東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督


「非常に多くの観客のみなさんに来てもらったこと、素晴らしいスタジアムと天気、本当に良い環境で試合をやらせてもらったことに感謝しています。ゲームは僕自身、試合が終わったあとに足がつるぐらい本当にタフなゲームだったと思います。こういうゲームをしっかりとあきらめないで、勝つことを信じて戦ってくれた選手を誇りに思いますし、これが東京SGのカルチャーです。これをDNAとして選手が体現することで、今後若い選手に残していくというゲームになりました。いいことばかりではなく学びもあったので、しっかりとその学びを次の試合に生かして、一戦一戦しっかりと戦っていきたいと思います」

――当初は、ニコラス・サンチェス選手が入っていましたが、変更の理由を教えてください。
「けがです。メンバーを発表してからです。来週もう1回スキャンを取りますけど、そこでハッキリすると思いますが、手術が必要とかそういうことではありません」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン


「本当に最高のスタジアムで、34,000人以上のファンの前という、すごくいい環境でラグビーができて、イチ選手としてすごく楽しい時間になったと思います。ゲームは前半のビハインドから、後半の40分間でもう1回自分たちのプランを信じてやり切ろうというところで入りましたけど、最後の最後まで自分たちのプランを信じて、プランを明確にして1個ずつ積み上げた、我慢した結果が今日の勝利になったと思います。素直にこの結果をまずは喜びますが、まだまだ成長できる部分がいっぱいあると思うので、満足せずに次の横浜キヤノンイーグルス戦、強い相手なので1週間いい準備をしたいと思います」

――最後のプレーでスクラムを選択した理由を教えてください。
「最終的には僕の判断で決めました。相手のフォワードにイエローカード(のちにレッドカードに変更)が出たし、中央寄りの位置でした。もし、スクラムが押せなくても両サイドにはいいバックスがいるので、スクラムを選択しました。トライを取ってゴールも決めないといけない状況で、フォワードもすごく自信をもって『スクラムだ』とみんなが言っていたので、『じゃあスクラムでいこう』となりました。狙いどおりのスクラムになったと思います」

――途中で21点の差をつけられたが、どんな話をしたのでしょうか?
「今季、逆転をするゲームが多いので、本当にハドルの中で誰も慌てていなかったです。『次に何をするか』『次はこうしたら絶対にスコアが取れる』という会話をいつもしているので、今回も明確な声が出ていました」

――後半は相手が変化を加えてきたと感じたのでしょうか?
「前半からかなりお互いに飛ばしてタフなゲームになったので、後半の10分くらいから相手の足が止まり出したというのは、やりながらすごく感じました。ここがチャンスだなと思って攻勢を掛けました」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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