【J1マッチレビュー】名古屋グランパスvsFC町田ゼルビア 【2024 第2節】

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チーム・協会
【これはnoteに投稿されたTanaLifeさんによる記事です。】

【TanaLife】

Attack Momentum by Sofascore(https://www.sofascore.com/machida-zelvia-nagoya-grampus/LmbsjNr#id:12004371) 【TanaLife】

相手のスタイルがブラックボックスである第1節と情報がオープンとなっている第2節とは試合の臨み方が変わるだろう。町田のスタメンは前節での負傷および欠場者の代わりに藤尾翔太と下田北斗を起用。既存メンバーの先発が6人となった。名古屋は前節からハ・チャンレ、米本拓司、中山克広、永井謙佑を起用。町田対策として前線のスピードを活かすメンバーを揃えてきた。

前半

試合は互いに挨拶代わりの蹴っ飛ばしで始まった。主なターゲットは町田がオ・セフンや藤尾らセンターフォワード。セカンドボール回収や即時奪回が連動されたゴールに直結するためのアタック方法のひとつだ。

それに対して名古屋のターゲットはウイングバックの中山や山中亮輔。起点役や相手を広げる意図のあるボールであり、ネガトラやセカンドボール回収の設計に重きは置かれていない。様子見や安全策またはデュエル志向なのが特長。あくまでメインは地上戦でのボール保持ということだろう。中山のアイソレーションと左側のワンサイドアタックを組み合わせたボール前進からフィニッシュまで連動する攻撃が仕込まれていた。サイドからペナルティエリアに突入して横やマイナス方向へのクロスを狙うアタックは脅威があったと思う。

町田の初めての自陣ビルドアップに名古屋は超攻撃的プレッシングを見せる。町田のセンバとセンターハーフに対して2トップと2インサイドハーフがマンマークの姿勢。サイドに誘導して奪取を狙う意図があった。しかし名古屋のアンカー背後にスペースがあり、ダイアゴナルパスでオ・セフンがボールを受けることが可能。前節からファーストディフェンスの改善を見せた名古屋、それに対する町田もプレス回避方法で簡単にメタを取らせない一面を垣間見せたのは隠れたポイントではないだろうか。ひとつ失敗するくらい完成度はこれからだけど。そしてもはや当然だが、縦に素早く放り込む手段も用いて相手のプレッシングを無効化させようとする。

名古屋のビルドアップはセンバ片側の野上結貴が上がる2-3や上がらない3-1の形が多い。町田は2トップの2度追い、3度追いでサイド誘導。相手に困難なボールを出させる意図のあるファーストディフェンスが機能し、ハーフコートとはいかないまでも名古屋陣内の側で試合を運ぶ展開が増える。

そんな中でのロングスロー連打は効果的だった。クロスとは異なる性質の遅くて跳ね返しても飛距離が出ないボールは中を固めるだけの相手にはなかなか被カウンターを喰らうことが無い。そしてセカンドボールを回収してから今度は多彩なパターンの高精度クロス。もう一つのフットボールと言われるセットプレーに重きを置いて徹底してきたことが、藤尾のゴールという形でJ1でも通用することを証明した。

余談だが、名古屋はコーナーキック守備ではゾーンを敷いていたため町田は多種な対策パターンを仕込んでいた。ちなみにロングスロー守備はマンマーク+ストーンでの対応だった。

そしてガンバ戦含めてもう一つ分かったがある。ボール保持がポジショナルプレーもしくはポゼッション志向であってもクリアで外に出す傾向があるチームがJ1にも存在するということだ。この課題に直面しない限りJリーグ全体でロングスローがトップメタになる環境があっても不思議ではない。

話を元に戻す。スコアが動いたあとの名古屋は、インサイドハーフの上下動や流動的な位置取りを活用したビルドアップを織り交ぜて町田のファーストディフェンスを回避し始める。そして米本がボールを捌くようになり、キャスパー・ユンカーまでボールを供給されて名古屋が押し込む形が増え始める。

一発回答ができる永井とユンカーまでボールを届けられるのは脅威以外の何物でもない。38分に町田がサードマンコンビネーションを絡めたクロス攻撃を見せたがリスクが大きかった。クロスが跳ね返されて被カウンター時にユンカーと接触したチャン・ミンギュが警告をもらう。そしてミンギュの退場を図るアタックが増え、2試合連続で退場者を出してしまいそうな不安がよぎりながらも、対人守備と縦の活用で試合を互角の展開まで巻き返して前半を終える。

後半

退場者の懸念はすぐさま解消された。20秒でハ・チャンレが警告をもらい、こちらも退場狙いが可能となる精神的に互角な状況で後半が始まる。

名古屋のビルドアップは30分辺りから見せていた動きを継続。町田のファーストディフェンスも前半に調整した部分を継続。具体的にはセンターフォワードの一角が米本へのパス遮断を強めるために、ボール側のサイドハーフが1列前に出てくるプレッシングをセットしていた。ただ永井、ユンカーに加えて前に居座る中山が実に嫌らしい。前線と米本を繋ぐ潤滑油となっていた森島司と和泉竜司もニクい。

町田のボール保持は後半も十分通用していた。もちろん縦志向の中で見せる瞬間的なものではある。ビルドアップユニットからターゲットマンへのロングボールでのアップ・バック+横展開や、4枚で旋回するボックスのロンドに第3、第4の動きを絡めたポケット攻撃が相当する。ボール非保持や切り替えの部分に加えてボール保持の水準が上がりつつあり、4局面においてJ1で通用する雰囲気が出てきた。

もちろんセットプレーというもう一つの局面に依存はしてはいる。昇格組にとってJ1で最も脅威なのは6人で守って4人のチート級の前線が脈絡なく相手を崩壊させるような、なおかつ攻守の切り替えがえげつなく早いオープンバトルの様相だ。それをさせないために流れを分断しつつ押し込む手段はかなり有効だった。

時間の経過とともに名古屋のファーストディフェンスは無効になっていった。ただしオープンバトルを完全に防ぐことはできなかった。名古屋が選手交代でギアを上げてデュエル志向を増やし勢いづいていた。倍井謙のウイングバックは想像していたより脅威だった。

それと今シーズンも年間を通して言われる課題であろうカウンターやフィニッシュワークの精度の低さ。これが時間が経過する毎に致命的な被カウンターを発生させてしまう。柴戸がプロフェッショナルなファウルで警告を受ける展開もあった。今年はそのようなイエローが増えることになるだろう。

この試合を決着させたのはビルドアップで降りてボールホルダーとなる米本の一瞬のキープミスを見逃さないアンカー番の藤尾のボール奪取だった。町田が調整した戦術的なプレッシングは、まだまだこれからな名古屋のビルドアップに対してDOGSOによる退場を誘発することとなった。町田がクリーンシートでJ1初勝利を掴んだ。

所感

名古屋のビルドアップが危惧されていて町田にも勝利のチャンスがあるとの前評判通りの結果だったのではないだろうか。名古屋は指摘される通り結局はスリーセンターの部分がチャレンジするポゼッション志向とマッチしていないのだろう。特に相手を背負ったときに何ができるかの問いは見過ごせない。

町田はやってきたことが間違いでなかったことを証明した。名古屋相手にも相当の圧を与えることができたし、攻守のハードワークは応援する者の心を掴んで離さない。新戦力にスポットを当てると、まずドレシェヴィッチと柴戸海。巧みなターンで相手を交わしてボール保持を助けることができるのは期待以上だ。危うい場面も出ると思うが攻撃面でも評価できる部分があるのは形に残らないかもしれないけど十分価値がある。

我が軍もオープンでやり返すぜと言わんばりに攻守で運動量を見せたのは林幸多郎だった。最後まで継続する運動量だけが特長じゃなくて速さもあった。そしてマッチアップする久保藤次郎に仕事を与えなかった。何この選手、思ってたのとちゃう!良い意味で。という驚きを見せてくれた。

オ・セフンは一言でエグい。そして交代でミッチェル・デュークが出てくるのはえげつない。最後に谷晃生のキャッチングの安心感は絶大。

歴史に残る町田のJ1初勝利、皆さまおめでとうございます。そしてありがとう。

試合結果

明治安田J1リーグ 第2節
2024年3月2日(土)14:03KO 豊田スタジアム
名古屋グランパス 0-1 FC町田ゼルビア
21'藤尾 翔太

晴 / 8.6℃ / 24%
主審 今村 義朗 副審 熊谷 幸剛、眞鍋 久大
第4の審判員 武田 光晴
VAR 小屋 幸栄 AVAR 日比野 真
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