【ラグビー/NTTリーグワン】「ラグビーは『ピアノの発表会』」(堀江翔太) 勝利に導いた、“戦場のピアニスト”<埼玉WK vs 東京SG>

埼玉パナソニックワイルドナイツ 堀江選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
埼玉WK 24–20 東京SG


2月17日に熊谷スポーツ文化公園ラグビー場で開催された首位・埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)と3位・東京サントリーサンゴリアスの上位対決は、プレーオフトーナメントの前哨戦とも言えるバトル。キックオフ直後から息詰まる攻防が続いたゲームは、激闘の末に埼玉WKが24対20で逆転勝利を収めた。

緊張感みなぎる80分だった。埼玉WKは前半を13対10でリードして折り返したが、後半の立ち上がりに高本幹也にドロップゴールを許し、さらに中村亮士にはトライを奪われて13対20と逆転されてしまった。“ラスボス”の異名をもつ堀江翔太がフィールドに立ったのは、その直後の後半8分だった。

慌てず、焦らず。百戦錬磨の闘将は、自分のタスクを着実にこなしていく。的確なポジショニングとしたたかなディフェンス。強烈なタックルで相手アタックの勢いを止めると、ゲームのリズムは確実に埼玉WKに傾いていった。

「流れが変わった? 僕自身は流れを変えようとは思っていない。練習で1週間やってきたことを全うできるか。チームがやりやすいようにセットアップできるかを意識してやっている。特別なことをやろうとは思っていない」

後半16分には堀江自らボールを運んで相手守備陣を引き寄せると技ありのパスで野口竜司の逆転トライをお膳立てした。

「スペースを見ながら相手をいなしてパスを送った。コンタクトをするときは常に“立っている”ことを意識している。つぶれてしまうとブレイクダウンで厳しくなるので。良いタイミングでパスをつなぐことができた」

後半21分に松田力也のペナルティゴールで21対20と逆転に成功した埼玉WKは、終了間際にも松田が再び、ペナルティゴールを決めて24対20で勝ち切った。その勝利の陰には、堀江のプレーがあった。

「ラグビーは『ピアノの発表会』。弾く曲は決まっていて選手が変わろうが同じ曲を弾き続けるだけ。ミスはあってもそこをカバーしながら曲を続けていく。アドリブの部分もあるけど、曲自体は変わらない。“ワイルドナイツのセットリスト”は変えずに、みんなで曲を仕上げていくだけ」

困難に屈することなくチーム全員で奏でた旋律が埼玉WKに価値ある勝利をもたらした。堀江という“戦場のピアニスト”の存在が勝利の原動力だった。

(伊藤寿学)

埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督(左)、坂手淳史キャプテン 【©ジャパンラグビーリーグワン】

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督


「非常に良いゲームだったと思います。良いチーム相手に良いゲームができました。選手たちのハードワークがこの結果につながりました。けが人が出ましたが、オフがあるのでしっかりと休養して次へ向かいたいと思います。腹痛で欠場の選手もいましたが、回復してくると思います。試合の内容については、坂手(淳史)キャプテンに任せますが、後半の最後はチームとして規律高くプレーできて、それが勝利につながったと思います」

――このあと、1週間のオフになる。プレーオフトーナメントへ向けてどんな準備をしていくか?
「1週間のオフのあと、3月には4試合の大事な試合が待っていますが、フレッシュな状況でここからのタフなゲームへ向かっていけます。また、けがから回復して戻ってくる選手もいます。呼ばれたときにベストな状態で出られるように準備してくれています。多くの選手にチャンスを与えてチームとして成長していきたいと思います。静岡ブルーレヴズさん、東芝ブレイブルーパス東京さんとのゲームがありますが、みなさんも楽しみに待っていると思います」
――好パフォーマンスを見せていた長田智希選手について、どう感じましたか?
「好青年で気持ちが前面に出ている選手です。常に課題を見つけて、取り組んでくれる選手です。キャッチングの練習もやり過ぎるくらいで、私が『グラウンドから出てくれ(苦笑)』と言っている状況です。2シーズン目の選手ですが、IQの高い選手だと思います」

――松田力也選手と高本幹也選手のスタンドオフ対決の感想は?
「二人のスタンドオフについては、日本代表に選ばれる可能性がある選手です。今日は二人というよりも、ゲームという大きい絵を見ていたので、日本代表などに関しては話せることは少ないです」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン


「12,000人以上の多くのファンが来てくれて、良い雰囲気の中でラグビーができて幸せでした。東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)さんが良い勢いでアタックしてきましたし、キックの使い方など、ウチに対して準備して戦ってきたという印象です。僕らは改善点がありますが、このゲームに勝てたことが大きな結果だと思っています。ラインアウトのアタックのところは修正していきたいと思います。今日は、お互いなかなか(得点が)取れていませんでしたが、ディフェンスでは良かったと思います。セットピースがゲームに与える影響が大きいのでフォワードでもう一度確認したいと思います。ペナルティのところは規律良く戦えていたと思います。1週間のオフを挟んで3月に入っていきますが、みんなで成長していきたいと思います」

――東京SG相手に難しいゲームになったことについては?
「相手が良いアタックをしたと思います。ブレイクダウンからのアタックも速かった。2トライを取られましたが、最後はしっかりと守れたと思います。粘り強く戦って、ターンオーバーを繰り出せたのは良かったと思います。ブレイクされることはありますし、完璧ではないので、ビデオで検証しますが、個人のミスなのか、チームの不備なのか確認して次へつなげていきたいと思います」

――ラインアウトのアタックで苦戦したことについては?
「新しいチャレンジをしていて、オプションやタイミングを変えた部分もあってそこは合わなかった面もあります。相手のラインアウトには、良いスカウティングがあって、みんなが良いプレッシャーを掛けてくれました」

東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督(右)、堀越康介キャプテン 【©ジャパンラグビーリーグワン】

東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督


「結果としては非常に悔しいです。現時点で持てる力を100%出してくれた。いまの時点ではスキのなさがあり、強いチームだと感じた。われわれもまだまだ強くなれることを感じた。ここからチャレンジしていきたい」

――埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)と善戦したことは収穫か?
「今週は、埼玉WK相手ということ以上に、ブルーズとの試合からの学びが大きかった。東京SGの強みは何なのかを考えてきた。一過性ではなく、さらに積み上げていける自信になった。ここで戦えないと、リーグワンは戦えない。その意味では手ごたえはあったと感じています」

――高本幹也が好プレーをしていたことについて、どう感じていますか?
「埼玉WKは粘り強いチームです。長く持つよりは早めに動かしていく。幹也は、毎試合、成長している。成長意欲の高い選手なので、今後もっとうまくなっていく」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン


「率直に悔しいです。真っ向勝負した中で、負けたのは、プレーヤーとして悔しいです。この悔しさを成長に変えていきたいと思います」

――埼玉WK相手に足りなかった点をどう考えていますか?

「ラインアウトの獲得ができずに、思うような攻撃ができませんでした。中途半端なアタックは、相手のジャッカルによって流れを切ってしまう。そこがうまくできれば、戦えると思います」

――ブルーズ戦のあとのチームの変化をどう感じていますか?
「ブルーズ戦のあとにミーティングをして、自分たちのスタンダードをみんなで作っていこうということで、お互いに厳しく言い合う土台ができたと思います。今後につながっていくと思います」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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