東芝ブレイブルーパス東京では、多くの皆さまにクラブのことをより知っていただくために、今シーズンもライターの戸塚啓さんにご協力いただき、選手・スタッフ一人ひとりの「物語り」を発信しています。
※今シーズン新加入の選手の物語りを掲載していきます

　異国の地でひとりになって気づいた。
　大切な人の支えに。
　自らの生涯を注ぐことになるラグビーと、イオセファツ・マレコは７歳で出会っている。「近所の友だちと一緒に始めて、すぐに熱中しました」と弾むように話す。幼少期から身体は大きく、ボールキャリーとタックルが楽しかった。
「そうやって楽しんでいるうちに、自分には才能があるのかもしれない、と感じるようになりました」
　生まれ故郷のサモアで高校、大学とラグビーを続けていき、2019年1月に人生が激変する。サモア代表として３度のW杯に出場し、スーパーラグビーでも活躍したマホンリ・シュワルガー氏のアカデミーに在籍していたことがきっかけとなり、日本大学へラグビー留学することになるのだ。サモアの大学の学費が家計の負担となっており、奨学金をうけながら学べる日本行きを選んだのだった。
「自分の将来のことを考えると、日本へ行くことが一番自分のためになると考えました。サモアを出て他の国でラグビーをすることは、子どもの頃からの夢でもあったのです。同時に、自分が日本へ行くことが家族のためにもなる、と思いました」
　ロックやフランカーとしてU20サモア代表にセレクトされ、18年8月には『ワールドラグビーU20トロフィー』に出場している。20歳以下世界選手権の下部カテゴリーと位置づけられる大会で、マレコがプレーしたサモアは決勝まで勝ち上がった。

　ラグビー選手としての将来性は、高く評価されていた。選手としてのさらなるスキルアップに取り組みつつ、マレコは「学ぶ」ことにも意欲的だった。
「ニチダイでは朝４時に起きて朝練をして、朝食を食べて９時から17時まで授業がありました。それから着替えて練習です。来日したばかりの頃は日本語が分からなかったので、色々と大変でした」
　トンガでは大変でないことが、日本では大変だった。日常生活の何でもないことに手間がかかり、勉強と練習で疲れたマレコに精神的なダメージを与えた。
「サモアで生活をしていた当時は、身の回りのことは母がすべてやってくれました。病気になれば看病をしてくれました。けれど、日本ではすべて自分でやらなければならないですからね。それはやっぱり、大変でした」
　日大では１年時から試合に絡み、４年時には関東大学リーグ戦の全試合に出場した。１８９センチ、１１０キロのフィジカルをフル稼働し、破壊力抜群の５番として存在感を示した。
「サモアではフィジカルなラグビーをしていましたが、日本ではもうちょっと細かいところにフォーカスしていく。ニチダイはグラウンド、クラブハウス、寮などがすべて整っていて、サモアとは全く違いました。ラグビーを取り巻く環境が素晴らしくて、僕自身は技術的な成長を感じることができ、４年間でマインドも成熟していったと思います」

　2023年の新入団選手として東芝ブレイブルーパス東京からオファーが届くと、迷うことなく加入を決めた。そこには、ふたつの理由があった。
　ひとつ目は、チームに魅力を感じたからだ。
「リーチ マイケル選手をはじめとしてハイレベルな選手が多いチームですから、自分もそういう選手になりたいと思いました。リッチー・モウンガ選手やシャノン・フリゼル選手のような国際的なレベルの選手と、同じチームでプレーできるのも嬉しいことです。彼らは経験豊富で、色々なことを教えてくれます。東芝ブレイブルーパス東京のカルチャーにも惹かれました。選手たちはみな、ストレートに何でも言ってくれて、練習と試合をしっかりやって、終わったらみんなでリラックスする。そのカルチャーが自分に合っていると感じました」
　ふたつ目は、家族への思いだ。
「自分が日本へ来たときから、母は大学を卒業した後はどうするの、とすごく心配していました。日本でラグビーを続けていくことができて、母を安心させることができると思いました」
　東芝ブレイブルーパス東京では、ロックとフランカーでの出場を見込まれている。どちらも外国籍の実力者が揃い、日本人選手を交えた競争は激しい。
「まずはブレイブルーパスでしっかりプレーしていきたい。その先にはW杯に出場したい、という夢があります」
　異国の地でひとりになって、マレコは気づいた。改めて、気づかされた。
大切な人たちが、自分の活躍を待ってくれていることに。彼らの支えこそが、ラグビーをする自分の、日々を生きる自分の、原動力となっていることに。
「父親はすごくラグビーが好きだったのですが、亡くなってしまったのです。だからいまは、お母さんが誇りに思えるような存在になりたいです」
　自分のためでなく、誰かのためにと思ったら、苦しくても頑張ることができる。挫けることなく、立ち上がることができる。数センチずつでも、足を前へ運ぶことができる。
　イオセファツ・マレコとは、そんな選手なのだ。

（文中敬称略）
（ライター：戸塚啓）

東芝ブレイブルーパス東京は、NTTリーグワン2023-24 Division１で開幕戦から6連勝中！現在リーグ内で2位につけています。
2/24(土)は横浜キヤノンイーグルスとの対戦となります。会場にお越しいただき、皆様のご声援をよろしくお願いいたします。

【試合情報】
NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 第7節
東芝ブレイブルーパス東京 vs 横浜キヤノンイーグルス
日時：2/24（土）14:05キックオフ
会場：秩父宮ラグビー場（東京）
※当日券も会場にて販売します（11:30~）