パリ五輪20km競歩日本代表をかけた世界一熾烈な代表争い!日本選手権20km競歩、明日号砲
【JAAF】
大会前日となる2月17日の夕刻には、神戸市内のホテルにおいて、注目選手を招いての会見が実施されました。今回は、男子と女子に分けて2部構成での展開に。第1部には男子20km競歩に出場する池田向希(旭化成)、川野将虎(旭化成)、高橋英輝(富士通)、山西利和(愛知製鋼)の4選手が、第2部では女子20km競歩に出場する藤井菜々子(エディオン)、岡田久美子(富士通)、園田世玲奈(NTN)の3選手が出席。各選手は、ここまでの経過や現在の体調、今大会の目標やレースに向けた思いなどを述べたのちに、メディアからの質問に応えました。各選手のコメントは、以下の通りです。
【前日会見コメント(要旨)】
第1部:男子20km競歩
【JAAF】
パリオリンピックで日の丸を掲げて日本の競歩が強いことを証明するために、明日、代表権を獲得できるように頑張りたい。また、日ごろよりサポートくださっている方々への恩返しの気持ちを、明日の歩きで届けられるように頑張っていきたい。
この大会には昨年も出場したが、ただスピードを求める、キレを出すことだけを求めるような取り組みを行い、その結果、スピードを出せるようになっても、それを持続できなかったり動きに噛み合わなかったりと、なかなか20kmにつながるようなスピードにできず失敗に終わってしまった。今回は、そこからしっかり学び、まずは、35kmで培ってきた台となるスタミナつくりやスピード持久の大切さを改めて認識し、しっかりと土台をつくったうえでスピードにフォーカスして取り組んできた。今までのトレーニングに加えて、坂道や山などのアップダウンのある場所での練習や、技術トレーニング、フィジカルトレーニングを、自分の主観だけでなく、(酒井)瑞穂コーチのアドバイスなどの客観的な視点も大切にして、一つ一つ丁寧に行った。その結果、バリエーションが広がり、質の高いトレーニング、量の上げたトレーニングもできるようになり、練習におけるスピードにおける余力度もできて、いい状態に(調子が)上がってきている。明日は、その成果を発揮できるようなレースができればいいなと思っている。
正直、読めないレース展開になると思うが、どういった展開になっても、自分の歩きにまず集中することが一番。揺るがない心…不動心を大切に臨んでいきたい。まず自分のパフォーマンスを最大限に発揮できれば、自ずと結果もついてくると思う。
【JAAF】
明日は、優勝を目指して頑張りたい。ブダペスト(世界選手権)を終えてからは、シンプルに「どう強くなっていくか」というところにフォーカスしてきた。質と量をきちんと上げてきたつもりである。それを明日、出せればと思う。
ここまで、(世界選手権で初優勝した)2019年ドーハ大会以降、世界大会に出場できることは、ある種、ワイルドカード(オレゴン世界選手権)であるとか、代表内定(東京オリンピック)とかという形で、出場権をいただけていたので、ブダペスト大会以降、「ちゃんと勝ち取って、そのスタートラインに立つ」ということのありがたみとか、その大事さというものを、改めて噛みしめなければならないと思ってきた。今回のレースは、ドーハ(世界選手権)の選考会以来、ちゃんと代表権を取るために出るレースとなる。本当に久しぶりに、本当にシンプルに、勝負を味わえるのではないかと思っている。そこを今回のレースの、楽しみの一つと捉えている。
自分の持ち味・良さは、ベースの部分。明日のレースでは、ある程度、速い(ペースをベースとした)ところで、どれだけ余裕度を持てるかが一つの鍵となるかなと思っている。
【JAAF】
明日の目標は、優勝とパリオリンピックの(代表)内定獲得。ブダペスト世界陸上後は、比較的シンプルに考えて、練習を継続させることを第一に、上積みを重ねてきた。というのも、昨年は、この日本選手権前の(一昨年の)11月、12月が、故障や体調不良で思うような練習が積むことができておらず、そういったブレーキがあったことが、結局は8月のブダペストにも響いたのかなという反省があったから。今回は、まずは(オリンピック本番から)逆算して、「1月にはレースに合わせたペースで持ってこられるようになる」とか、「12月はしっかり土台を強化しつつ距離を踏む」とかというように、一つ一つ、その月その月ごとに課題を持って取り組んできた。ここまでケガや体調不良もなく、シンプルに練習ができている。そこが(今年の)強みになっているのではないかと思う。
明日のレースが、どういう展開になるかは読めないところもあるが、自分は、タイムはそこまで気にしていないので、順位・結果というところにこだわっていきたい。
【JAAF】
明日は3位以内で、パリオリンピックの出場権を(最終的に)獲得することを目標に頑張りたい。ブダペスト世界陸上が終わってからは、このレースに向けて、「身体の使い方」の部分をテーマに取り組んできた。僕は、勝負所で警告がついたりして、なかなかペースが上げられなかったりする課題もあったので、その部分でフォームを修正し、「勝負所で勝負する」ことを目標に掲げている。
ブダペスト世界陸上は、本当に悔しかった。今まで競歩は、山西選手や池田選手がメダルを獲得していて、「強い日本の20km競歩」というふうに言われてきたなかで、ああいう結果(※出場4選手が、ともに入賞を逃した)だったので。僕自身、今までもだが全然そこに貢献できていないことも悔しかったし、(山西選手、池田選手の)2人が勝負できなかったというのも自分のことのように悔しかった。
やはり日本の競歩は強くありたいなと思うし、僕がそれを引っ張る存在でいたいなと思っていて、そういう思いで、このレースに向けて取り組んできた。なので、明日は、僕自身が代表になれるかわからないが、強い日本の競歩がまた戻ってくるように、レベルの高いレースがしたいと思っている。
パリオリンピックの代表権がかかっているので、明日は、そこを意識したレースになるのかなと思っている。池田選手や山西選手、そして、ほかにも派遣設定記録(1時間19分30秒)や参加標準記録(1時間20分10秒)を切っている強い選手がいることもわかっているし、一緒に合宿をしていることで、彼らの強さは十分によくわかっている。そのうえで、そういう選手たちと一緒に、レベルの高い試合を目指したい。
第2部:女子20km競歩
【JAAF】
明日は、(リオ、東京に続く)3回目のオリンピック出場となるように、派遣設定記録(1時間28分30秒)を突破して優勝できるよう頑張りたい。
1時間28分30秒という記録は、過去に2回上回ったことがある(2019年日本選手権:2時間28分26秒、2019年IAAF競歩グランプリ:1時間27分41秒=日本記録)が、(この記録をクリアするためには)序盤は突っ込まないほうがいいのかなという印象。10kmくらいまでは淡々と、(1km)4分25秒くらいの設定ペースで押していき、後半にペースを上げれば届くのではないかと考えている。オリンピック出場ということでは、やはり派遣設定記録を突破して優勝、そして、3位以内に入っておくというところが非常に大事になってくる。展開については、あまり冒険したり(笑)、変なことをしたりしないほうがいいのかなと経験上、考えている。
(35kmで代表入りしていた)ブダペスト(世界選手権)では、直前に腰を痛めてしまい欠場となった。その後、11月中旬ごろまでは、なかなか調子が上がってこなくて悩むこともあったが、12月くらいから身体のバランスや柔軟性を高めること、姿勢の改善に取り組み、練習強度はあまり高くはなかったものの、元旦競歩の10kmで思いがけない記録(日本記録)が出て、そこから調子は少し上向きになってきていることを感じている。練習をたくさんしたとか、スピードを追ってきたとか言えるようなことはあまりないのだが、身体自体を変えてきたところには自信を持っている。
リオ(2016年)、東京(1年延期により2021年開催)と経験して、リオが16位で、東京が15位。4年かけても1つしか順位が上がらないという(笑)、すごく厳しい戦いであることは身に沁みて感じているところである。3回目のオリンピックは、「今度こそ」という気持ちもあるし、(所属先や結婚など)大きく環境が変わって、本当にたくさんの方にサポートしていただいた感謝の気持ちというのを、パリオリンピックに出場して表したいというのが、一番の今回の思い。ブダペスト世界選手権の欠場は、今でも思い出すと辛い気持ちになるが、そこを感謝の気持ちと恩返しの思いに変えて、まずは(明日)内定を取りたい。
【JAAF】
明日の目標は、派遣設定記録を突破して、パリオリンピックの(代表)内定を決めること。
展開としては、派遣設定記録のペースとなる、1kmあたり4分25秒前後のペースで、イーブンで押していくところを頭に入れている。後半どこまで(ペースを)上げられるか、また、どこまでそのタイムを保っていけるかを、自分のなかで一つ、レースプランとして考えている。
昨年のブダペスト世界選手権では、最初から速いペースで展開したレースについていくことができなかったわけだが、(大会に向かうまでの)夏場の練習が、想像以上に蒸し暑い日が多かったことに、途中でやめたり設定通り行けなかったりと、速いペースでの練習がしっかりできていなかった点が、自分のなかに反省としてあった。そこで、アジア大会が終わったあと、秋から冬にかけてはスピード練習を重点的にやってきた。1kmあたり4分25秒から4分20秒(ペース)というところの余裕度はかなり上がってきていると思う。そこを踏まえて、明日のレースはしっかり展開していきたい。
前回の東京オリンピックは、初めての出場ということもあって、右も左もわからない感じで、「入賞はしたいけれど、どうなるかわからない」という気持ちのほうが大きかった。しかし、今回は、前回大会に出たことで、次の目標を明確に決めることができて、「パリオリンピックでは上位入賞したい」という気持ちで取り組んでくることができている。今回の選考レースでは、そういう強い気持ちで挑めたらいいなと思う。
【JAAF】
(35kmで7位入賞を果たしたブダペスト)世界陸上が終わってから、なかなか思うように練習ができなかった。大会から1カ月経ったころに疲労がどっと出て、そこから調子を崩してしまい、予定していた試合にも出場できず、なかなか歩く練習ができない形になった。また、坐骨神経痛の症状が出たことも影響し、うまく練習することができず、もどかしい期間が続いた。しかし、そのなかでも身体の各パーツ一つ一つの強化を丁寧に図り、(もどかしく感じる思いを)動きのバランスや自分の歩型をより改善する意識に変えて、筋力トレーニングに取り組んできた。
ブダペスト世界陸上(2023年)、オレゴン世界陸上(2022年)と、世界陸上を2大会経験させていただいたが、やはりオリンピックという舞台は、すごく特別なものだと感じた。それは海外の方からも、(オリンピックに対する)熱意が伝わってきたし、私もやはりオリンピックという舞台は、ずっと憧れのある特別の舞台だったので、なんとしてでも3番以内に入って、(出場権を)勝ち取りたいという気持ちがすごくある。
ここまでの過程では、うまくいかない部分が多かったが、所属チームの皆さんや、いつも寄り添ってくださったトレーナーさんなど、多くの方々の支えがあって、明日はスタートラインに立つことができる。その感謝の気持ちを結果として表せるように、明日は最後まで諦めない歩きでレースに臨みたい。
大会は2月18日、兵庫県神戸市の六甲アイランドに設けられる1周1kmを周回する甲南大学西側20kmコースを会場として、10kmで実施するU20選抜競歩大会との併催で行われます。
日本選手権男女の部は、前述の通り、パリオリンピックおよび世界チーム競歩選手権の代表選考会を兼ねています。パリオリンピックの選考においては、この大会で日本陸連が独自に設定している20km競歩の派遣設定記録(男子:1時間19分30秒、女子:1時間28分30秒)を突破して最上位の成績を獲得すれば、その瞬間に即時内定。つまり、最大で男女各1名がオリンピック代表の座を手にする可能性がある状況です。また、内定を得られなくても、3位以内に入るか否かが、その後の代表争いに大きな影響を及ぼすことから、「第107回日本選手権メダル」を巡って、男女ともに熾烈な戦いとなることが見込まれています。併催されるU20選抜競歩大会も、8月にペルーで行われるリマ2024 U20世界陸上競技選手権大会、および日本選手権と同じく世界チーム競歩選手権の代表選考会として実施。こちらでも激戦を期待することができそうです。
当日は、日本選手権男子20km競歩が出発する午前8時50分から競技が開始され、続いて日本選手権女子20km競歩が10時35分にスタート。U20選抜男子10km競歩は12時30分から、U20選抜女子10km競歩が13時25分から行われるタイムテーブルとなっています。
日本陸連では、立命館大学「立命スポーツ編集局(立スポ)」とのコラボレーションや、トップ選手に聞いた“競歩あるある”大公開、現地観戦を楽しむポイント紹介、応援メッセージキャンペーンなど、ファンの方々に楽しんでいただけるよう、さまざまな企画を用意しました。また、当日のレース会場では、「立スポ」の号外配布や、能登半島地震義援金の募金活動を実施することも予定しています。たくさんの皆さまのご来場をお待ちしています!
また、今年も日本陸連YouTubeチャンネルほかで、レースの模様をライブ配信。世界各国のトップウォーカーたちが注目する「 #世界一熾烈な代表争い 」を、ぜひ、お楽しみください。
大会情報は、日本陸連公式ホームページ内に設けられている競歩の特設サイト「Race walk Navi~競歩ナビ~」をご覧いただくと便利。エントリーリストやライブ配信情報にすぐアクセスできるほか、パリオリンピック代表争いの状況や今大会での内定条件、大会展望企画、日本選手権歴代優勝者一覧、さらには競歩の歴史やルールなど、より競歩を楽しめる企画、役立つ情報を掲載しています。観戦のお供に、ぜひ、ご活用ください。
◎競歩特設サイト「Race walk Navi~競歩ナビ~」 https://www.jaaf.or.jp/racewalking/
文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)
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