第一生命 D.LEAGUE 23-24 ROUND.8!Legitの進化が見せた今シーズン初のスウィープ勝利。MVDはTAKUMI。

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チーム・協会

CyberAgent Legit 【D.LEAGUE】

世界最高峰のプロダンスリーグ「第一生命 D.LEAGUE 23-24」(以下D.LEAGUE)のROUND.8が2024年2月8日、東京ガーデンシアターにて行われた。首位争いを繰り広げる2チームはそれぞれ、KADOKAWA DREAMSは勝利、CyberAgent Legit はスウィープ勝利をあげ、CSPでは再び並び合う展開となった。KDはNO MATCHとなるラウンドも残っており、どのチームにもシーズン優勝やCS進出の希望はまだまだ残されている。結果は以下。

1st Match :KADOKAWA DREAMS VS dip BATTLES(5-1)
2nd Match:LIFULL ALT-RHYTHM VS Valuence INFINITIES(1-5)
3rd Match:CyberAgent Legit VS Medical Concierge I'moon(6-0)
4th Match:avex ROYALBRATS VS Benefit one MONOLIZ(3-3)
5th Match:KOSÈ 8ROCKS VS SEGA SAMMY LUX(5-1)
6th Match:DYM MESSENGERS VS SEPTENI RAPTURES(3-3)

「言葉を超え感動を与える」原点回帰がもたらした進化と勝利

3rd MatchのCyberAgent Legit VS Medical Concierge I'moonでは、Legitが見事今シーズン初のスウィープ勝利を手にし、TAKUMIにMVDが与えられた。

LegitはHEARTSTRINGS-心の琴線-をテーマに、特徴的な琴のようなストリング音をキーサウンドにして、繊細な心の動きを表現する。

空間ごと揺らぐような太くスローなポッピンから始まり、ハードヒットとクリアなバイブレーション、ボディーウェーブで会場を沸かせる。サイファーラウンドに登場したJENESに影響されたためか、音へのアプローチの引き出しが圧倒的に増えているように感じた。

見どころも多く、BBOY SHOSEIの三点倒立に合わせたルーティーンは軸となるSHOSEIの柔軟性と筋力の両立が必要だ。そしてアローバック(を応用した旋回)の引き立て、独自性の高いシンクロ、カノンと3つの要素を十数秒に密に埋め込む。

バウンス(はね返る音どり)の気持ち良い1chのソロ、揃えるのが難しいコブラやロールもしっかり揃え、TAKUMIのソロでは「止める」ではなく「揺らぐ」ことをメインに据えたことで空間の歪みがより大きく見える。

CyberAgent Legit 【D.LEAGUE】

対するI'moonは、新体制となり変幻自在の多彩なアプローチに注目が集まるも、4連続ドローという成績。一気に流れを引き寄せるべく、作品に「DREAM」と銘打ち、「Legitが踊るとカッコ良さそうな選曲」で今シーズン負けなしのLegitに勝つ、というシナリオを用意してきた。

メンバーのHarukaは1年半ぶりの復帰戦、SPダンサーとしてディレクターのMIZUEも参戦し、思い溢れるドラマが起こる準備はできていた。

ショーはG-FUNKの曲を用いた、いわゆるウェッサイと呼ばれるHIPHOPの作品。衣装はカラーギャングを意識し色を統一、C-WALKをはじめとしたステップやジェスチャーをサンプリングしたかと思えば、JAZZで鍛えられたフォーメーションの揃い方にはI’moonらしさが見て取れる。

Medical Concierge I'moon 【D.LEAGUE】

試合後のインタビューで地獄が「I’moonは曲がカッコよかったし、自分たちと違うアプローチやグルーブがしっかり出ていて、勉強になった。」と語った通り、イメージや先入観にとらわれず、しかし強みは失わないというバランスの取れた挑戦的な作品だったが、結果は決め手となる構成をより多く用意したLegitのスウィープ勝利となった。

TAKUMIは試合後のインタビューで「改めて原点に返って、言語を超えて感動を与えられるというダンスの魅力を追求した」と語っていた。

SPダンサーは一発屋ではなかった。

今回のラウンドは、各チームがスタメン発表に合わせ次々とSPダンサーの起用を発表しSNSを賑わせていた。

レジェンドと呼ばれ、Blue Printの主宰としてダンス、振付、舞台と現役で幅広く活躍しているJUNをはじめ、加賀谷 一肇、碓井 菜央の3名のSPダンサーを起用し話題を集めたALT-RHYTHM。

LIFULL ALT-RHYTHM 【D.LEAGUE】

また、dip BATTLESは、餓鬼レンジャーでアーティストとしても活躍するタコ神様がSPダンサーとして登場。ある意味ネタに振り切ったかのような作品で、今シーズン初のオーディエンス票を獲得し、勢いに乗るKDのスウィープ勝利を阻止した形となった。

KOSÉ 8ROCKSは、トリッキングチームにも所属するムーブメントアーティストRikubouzをSPダンサーに迎え、コンテンポラリーな世界観を展開する。武器である高いシンクロ率のダイナミックなフロアムーブだけでなく、HarukaとRikubouzのコンタクト・インプロヴィゼーションからの軟体フリーズ、雷鳴のようなスポット照明をはじめ衣装、メイクと様々な演出による工夫を凝らし、ブレイキンを脱構築し新しいアプローチに挑戦し続けたことが結果につながるようになってきた。

KOSÈ 8ROCKS 【D.LEAGUE】

MONOLIZはSPダンサーにWAACKダンサーのRyujiそしてニュースタイルハッスルなどのジャンルで活躍するZabuを起用し、サイファーラウンドで披露した新スタイルを作品として披露。埋め込まれた伏線はしっかり回収された。

Benefit one MONOLIZ 【D.LEAGUE】

SPダンサーの起用は難しい。SPダンサーは「知る人ぞ知る」ダンサー、パフォーマーであることが多く、ダンスファンにまで広く知られたダンサーは数が限られている。

見慣れた顔のDリーガーの出場枠を一つ削ってそこにSPダンサーを配置することはそのラウンドの勝敗だけを考えるとハイリスクハイリターンな選択だ。

SPダンサーを起用しながら結果が出ない場合、噛み合いがうまくいかなかった、と思うファンもいるかもしれないが、SPダンサーの役割はインパクトのあるスキルだけではない。

長年そのスタイルと向き合ったキャリアや経験値、考え方、哲学、そうした精神的なものも練習を通してDリーガーにシェアすることで、レギュラーダンサーたちの表現の幅が広がり、新しいアプローチが生まれる。

同じ技やステップを繰り出すにしても、フォーメーション、流れ、間の取り方や照明などいろんな要素を変えることで見え方が180度変わるのだ。

強み、追加点、音楽

Legitの作品はコンペティションの視点から見ても見事だった。最後のルーティーンの畳みかけで、黒レジット作品らしく余韻を残して終わるかと思いきや、ストリングの音で一気にその余韻をかき消すという終わり方。テーマ通り心の琴線、もしくは緊張の糸を切るようなサプライズで会場を沸かせた。

こうしたダンスに追加点となる+αを加えることは難しく、このチームはここが強い、というベースが伝わっていなければ成り立たない。だからこそ、そのチームがどこで追加点となる難易度の高い構成を入れているか探してみるのが楽しい。

例えばINFINITIESはステップやフットワークの中に膝から先をくるっと返す小技を用いてターンをさらにダイナミックなものにしている。

体の関節をバラバラに動かすことをアイソレーションと呼ぶが、RAPTURESは音にインパクトを与えるための独自のアイソレーションの色を確立しつつある。チームがまとまりRAPTURESアイソレーションとでもいうべきスタイルが共有されてきたからこそ、アレンジひとつで追加点が狙える。

SEPTENI RAPTURES 【D.LEAGUE】

そして各チームの音楽とのコラボにも再度注目してほしい。Benefit one MONOLIZは今回soul/R&BシンガーTinaとのコラボ楽曲「One Night Only」を製作。

DYM MESSENGERSは国内を代表する稀代のビートメイカーBudamunk & 東京最高峰のMC仙人掌とコラボし、令和のB-BOY STANCEと言わんばかりのメッセージをドロップ。歌詞に合わせたスローな6ステップに会場中のダンサーたちは痺れた反応を見せていた。

DYM MESSENGERS 【D.LEAGUE】

ダンサーをパフォーマーとして心からリスペクトしてくれるアーティストたちがいるからこそ、D.LEAGUEは飛躍を続けることができる。そんなアーティスト達や音楽も含めて、D .LEAGUEを楽しんでいただきたい。
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著者プロフィール

D.LEAGUEとは、“世界中すべての人に「ダンスがある人生」をもたらす”をミッションに、活動を通じてダンスへの認知・理解・共感を実現し新しい文化と産業構造を創造する、2020年8月に発足した日本発のプロダンスリーグです。

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