Jリーグ公式レポートからアビスパ福岡の23シーズンを読み解く

note
チーム・協会
【これはnoteに投稿されたダイアゴナル・ノリさんによる記事です。】
2024/1月下旬、Jリーグから23シーズンのレポートが発行されました。
マニアックなデータも多く、興味深い内容の本レポート。今回は、このレポートを読み、データをもとにしたアビスパ福岡を総括していきます。
22シーズンのレポートも比較対象として参考にしました。
ご注意
・公式データから気になった部分を選定して記載しています。主観が入ってますので、ご注意ください。
・データの捉え方、データの数値に誤植・ご認識があるかもしれません。素人目線の内容だと思ってご覧ください。

チームスタッツ

23シーズン(7位)
15勝6分13敗(勝点51)、37得点・43失点
・ホーム:8勝3分6敗(勝点27)、15得点・18失点
・アウェイ:7勝3分7敗(勝点24)、22得点・25失点

22シーズン(14位)
9勝11分14敗(勝点38)、29得点・38失点
※公式レポは失点28点と記載(誤植)
・ホーム:5勝6分6敗(勝点21)、17得点・18失点
・アウェイ:4勝5分8敗(勝点17)、12得点・20失点

23シーズンと22シーズンの変化
23シーズンと22シーズンの戦績を眺めると大きな変化としては以下です。
・ホーム/アウェイの勝利:
 増(22年比:+6、ホーム+3、アウェイ+3)
・ホーム/アウェイの引き分け:
 減(22年比:-5、ホーム-3、アウェイ-2)
・アウェイでの得点数:増(22年比:+10)
・アウェイでの失点数:増(22年比:+5)

ホームで勝点を積み上げつつ、アウェイの得点増&アウェイの勝利増も重なり、チームの飛躍に繋がったと感じます。特に、引き分けのところを勝利にもっていけたこと(=勝点を+1から+3にできたこと)も大きかったです。

ゴール&シュート

23シーズンシュート数(357本)、ゴール:37、ゴール期待値:36.1、期待値との差:+0.9

22シーズン
シュート数(328本)、ゴール:28、ゴール期待値:32.6、期待値との差:-4.9
※OG=オウンゴールは除く

23シーズンと22シーズン比較 (23-22シーズンの差)
シュート数:+29、ゴール:+9、期待値:+3.5、ゴールと期待値の差:+5.8

22シーズンと比べて、着実に攻撃面の数値が向上した結果となりました。得点数を伸ばすためにはシュートの量・質のさらなる向上が必要だと感じます。
・シュート数の目安:400本〜450本 (23シーズン+50〜100) ※量の向上
・ゴール期待値の目安:40〜45 (23シーズン+10) ※質の向上
※得点を奪うことが目的なので、あくまでも数値の目安です。

参考(23シーズンの他チームデータ)
・神戸
シュート:422本、ゴール:59、ゴール期待値:47.7、期待値との差:+11.3
※期待値以上に得点を奪い、決定力の高さが結果に表れています
・横浜FM
シュート:474本、ゴール:60、ゴール期待値:50.8、期待値との差:+9.2
・広島
シュート:580本、ゴール:40、ゴール期待値:52.5、期待値との差:-12.5
※あと13ゴール決めていてもおかしくなかった(決定力に欠けた)

用語:ゴール期待値
・シュートが得点に結びつく確率を予測した数値
・ゴール数と比較することで、どれくらい得点機会をものにできたかを推測することができる

クロス

チームクロス数
23シーズン:456本、成功93本、成功率20.4%、クロスからのゴール:9
※クロス成功のうち、10本に1回得点している計算

22シーズン:590本、成功131本、成功率22.2%、クロスからのゴール:11
※クロス成功のうち、12本に1回得点している計算
※ペナ手前からのクロスが多く230本(リーグ最多)
※クルークス選手144本(成功率18.1%)、志知選手106本(成功率22.6%)

クロスの本数こそ減少しましたが、23シーズンはクロス成功時、10本に1回得点している計算で、クロスの質は向上したと言えます。質が上がっている=得点機会が増えていることは良い傾向と感じます。

ドリブル

1試合平均キャリー数

「キャリー数=20m以上ボールを持ち運んだ回数」
・23シーズン:
 6.2回(シーズン計:約211回=6.2*34試合)
・22シーズン:
 4.6回(シーズン計:約156回=4.6*34試合)
・22シーズン比:+1.6回/試合
・昨シーズンと比較し、最も増えたのはアビスパ福岡

紺野選手はリーグ3位タイの53回を記録し、紺野選手がチームのキャリー数の25%を占める結果となりました。23シーズンと22シーズンのキャリー数の差が55回なので、紺野選手1人分にちょうど当てはまります。
<参考>
2022年、鳥栖のチーム別キャリー数は317回。このうち岩崎選手は48回を記録。チームの15%を岩崎選手が占めたことになります。

選手別のドリブル数

23シーズン:紺野選手(99回)
※22シーズン(FC東京)ではチーム2位の80回
22シーズンのクラブ最多:クルークス選手(87回)

紺野選手の特長が数値に表れた結果となりました。

ドリブルに関するデータは、紺野選手の存在感が顕著に表れました。紺野選手は前所属(FC東京)でもドリブルの数値が高く、良さがそのまま23シーズンのデータに表れた形となりました。新しいチームでも長所をしっかり発揮できたことが収穫点です。

パス

1試合平均パス成功率

23シーズン:71%
22シーズン:68%
パスの成功率は70%超え。素晴らしい!

前方パス成功1本あたりの平均バイパス数

「バイパス=前方180度への成功したパスで相手選手を何人飛ばしたか」を指します。

23シーズン:2.45(リーグ3位)
※参考:リーグ1位は2.47(神戸)

リーグ3位の平均バイパス数であり、効果的に相手選手を飛ばして前進できていたことが分かります。これは継続して高めていきたい指標値になります。

スルーパス成功率

スルーパス成功率:リーグ6位(48.3%)
※22シーズン:リーグ4位(50.4%)

データで見ていくと、パス成功率が上昇し、バイパス数やスルーパス成功率もリーグ上位に位置しており、質の良いパスを供給できていることが分かります。
パスなのでパスの出し手、受け手、選手の立ち位置も関係するため、チーム全体が良いタイミング・距離感でプレーできているとも言えます。これも継続して高めていきたい指標値ですね。

ポゼッション

自陣から始まる攻撃で得点まで至った回数

23シーズン:3回
22シーズン:5回
※23シーズンのリーグ1位:京都(11回)
※23シーズンのリーグ2位:鳥栖(10回)

ハイプレスを受けた状態でシュートに至った回数と割合

23シーズン:31本、4.7%(リーグ最下位)
22シーズン:24本、4.3%(リーグ最下位)
※23シーズンのリーグ1位:新潟(106本、7.8%)

相手がコンパクトな守備ブロックを構築した際にシュートまで至った回数と割合

23シーズン:84本、3.8%(リーグ最下位)
22シーズン:73本、3.7%(リーグ最下位)
※23シーズンのリーグ1位:横浜FM(172本、7.3%)

クラブのスタイルによって変わる部分ではありますが、攻撃の回数や質を向上することで、リーグ内での順位も高まる部分だと感じます。
少なくとも、シュート回数が微増していることは良い傾向です。相手の良さを消し、シュートまで持っていけるかがポイントになりそうです。
・ハイプレスを受けたときのシュートまでの形
・コンパクトな守備ブロックを崩す形

ディフェンス

チームのタックルライン(m)

23シーズン:40.68[m]
22シーズン:40.70[m]
[参考] 21シーズン:39.85[m]

23シーズンと22シーズンのタックルライン差は、-0.02[m]=2cmで“リーグ最小”です。
平均値なので、状況や相手に応じて変動しますが、過去3シーズンで、40m前後の幅なのでチームとしての守備の原則があり、それを遂行できているようにも感じます。

ボールロスト5秒未満リゲイン数

リーグ5位(400回をやや下回る)
※ボールロスト後、5秒未満に奪い返した数

前線や中盤の選手を中心に攻守の切り替えができていると感じます。ボールロスト直後にボールを奪い返せている=良い守備ができているという指標にもなるので、この数値はリーグ上位を維持したいところです。

その他のデータ

・自陣ペナ内でのクリア数
リーグ1位(533回)
※チームのキースタッツより

・タックル奪取
リーグ4位(445本)
※22シーズン:リーグ2位(445回)

ゴールキーピング

23シーズン
・43失点(PA内=41, PA外=2 ※リーグ最小)
・クリーンシート11
・ペナ外からのシュートセーブ率:94.3%(1位)

22シーズン
・38失点(PA内=32、PA外=6)
・クリーンシート11

GK村上選手の個人データ
23シーズン
・20試合出場
・クリーンシート8、セーブ47、セーブ率66.2%

22シーズン
・27試合出場
・クリーンシート8、セーブ56、セーブ率64.4%

リーグ戦でのクリーンシート11回のうち8回が村上選手、永石選手は3回。22シーズン同様に、堅い守備を築いた結果が表れました。
1試合平均失点は約1.2。より堅守を築くためにも、平均失点を1点台から0点台に下げたいところです。そのためには、PA内の失点=41をフィールドプレーヤーを含めてどう防いでいくかが鍵となります。

セットプレー

CK/FKの得失点

・CK
3得点 / 5失点 (-2)
※22シーズン 3得点 / 2失点 (+1)

・FK
3得点 / 4失点 (-1)※22シーズン 1得点 / 3失点 (-2)

CKでのクロス成功率:1位(45.0%)
※チームのキースタッツより

セットプレーの得点(CK/FK)が3得点ずつで、セットプレーでの得点も増やしていきたいところです。
特に、CKは中村選手(磐田に移籍)が全得点のアシストに絡んでおり、CKからの得点機会創出は注目ポイントになります。キッカー自体は金森選手、紺野選手、北島選手らがいるので競争しながらセットプレーの新しいカタチを作り出してほしいところです。

フィットネス

1試合平均HIRR

リーグ7位 (8.0をやや下回る)
※HIRR:フィールドプレーヤーの走行距離のうち時速20km以上の割合

・福岡は、スプリント回数よりHIRRで順位を大きく上げている
・スプリントの基準は時速25km、そこには満たないが時速20km以上の高強度走行の割合が他チームより多い

公式レポート抜粋


スプリントほどの強度(時速25km)以下ではあるが、高い強度で走行できているという意味で、興味深い観点のデータでした。

個人成績(総走行距離)

前寛之(357.3 km):リーグ4位
※22シーズン:358.1km(リーグ5位)
※22シーズン:相手ボール保持時の加速回数:2377回(リーグ10位)

前選手はシーズンを通して走れる選手であり、言うまでもなく欠かせない存在です。

個人成績(総スプリント数)

岩崎選手(605回):リーグ4位
※チームの総スプリント回数のうち、自身のスプリント回数が15%超
※22シーズン:884回(リーグ2位)

<岩崎選手の参考記録>
・22シーズン、自ボール保持時の加速回数:2042回(リーグ7位)
・22シーズン、裏抜け回数:343回(リーグ4位)
 ※チームの裏抜け回数:鳥栖=1889回、福岡=1041回

岩崎選手の相手ゴールに向かう意識の高さがよくわかるデータです

アクチュアルプレーイングタイム

23シーズン:51:00(リーグ12位)
22シーズン:49:29(リーグ18位)

ケースバイケースなので何とも言えませんが、プレー時間が長くなることは良い傾向です。

(他) 後半ATに複数得点した試合

・勝:vs湘南[H] ※山岸選手の2得点で2-1
・負:vs新潟[A] ※2-3(追いつかれて逆転)
・負:vs川崎[A] ※2-4(同点の場面から勝ち越し)

勝点3を得て、勝点6を失った結果となりました。
上記3試合はどれもアビスパ福岡にとってターニングポイントになった試合でした。同じことを繰り返さないことが大事になってきます。

23シーズン総括

23シーズンをデータで振り返り、チームの成績(リーグ最高順位)がそのままデータにも表れた結果となりました。

特長的なデータ/傾向・シュート・ゴール:各数値で上昇傾向
・クロス:質(ゴールに結びつくクロス)の向上
・ドリブル:キャリー数が大幅上昇
 ※紺野選手の特長がデータに反映
・パス:パス成功率7割、平均バイパス数リーグ3位
・フィットネス:HIRR値(リーグ7位)
 ※チーム全体が時速20km以上で走行
・ディフェンス:リーグ上位のクリア、奪取数
 ※自陣ペナ内のクリア(1位)、タックル奪取(4位)
 ※ボールロスト5秒以内にボール回収(5位)
・ゴールキーピング:ペナ外シュートセーブ率(1位)

これらのデータや傾向は、24シーズンも継続して上昇してほしいですし、新加入選手との融合でさらなる向上を成し遂げてほしいところです。

24シーズンの課題
・失点のさらなる抑止
ペナ外からの失点数はリーグ1位の少なさですが、ペナ内の失点数は22シーズンから+9増えました。ペナ内で相手の特長を出させない、個人・チームで最後まで防ぎ切るところを突き詰めていくことが必要と感じます。

・セットプレーの得点と失点
「得点<失点」を改善したいところです。特に得点は3であり、セットプレーでの得点を増やすことがチームの得点力向上に繋がると感じます。セットプレーで得点を奪える選手(ウェリ選手、小田選手、宮選手など)はいるので、いかに質の高いボール供給とポジショニングができるかどうかが鍵になりそうです。

・ポゼッションのデータ向上
ポゼッションを意識していない(拘っていない)ところもあるので、一概には言えませんが、この数値が高まるときは「攻撃がもう1段高いレベルに到達した」と言える時だと感じます。そういう意味で24シーズンの注目したいデータとなります。

以上、長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!


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