関東初! フロンターレ×アートのコラボで川崎駅周辺を“アートで照らす”プロジェクト

川崎フロンターレ
チーム・協会

川崎駅北口自由通路を彩るアート作品は阿部堅太さんの『MUSIC』 【(c)KAWASAKI FRONTALE】

川崎駅周辺を利用する方は、もうすでに“アート”による変化にお気づきかもしれない。

2023年12月末に始まった「LightUp Galleryプロジェクト in 川崎」は、街のさらなるにぎわいの創出や美化、誰もが安心して暮らし続ける街づくりに貢献するために発足したプロジェクトである。具体的には、JR川崎駅周辺の喫煙所などをアートでラッピングすることで、“まちかど”に彩りを加えて、地域社会に貢献しようという取り組みだ。

このプロジェクトは、日本たばこ産業株式会社、川崎市、HI合同会社とともに川崎フロンターレが協同し、アートに関しては、株式会社ヘラルボニー協力の元、NPO法人studioFLATに所属する3名のアーティストによる作品が採用されている。

フロンターレ×アートが生み出すもの

アート作品の掲出箇所は、川崎駅西口ラゾーナ前、川崎駅東口ルフロン前、川崎駅東口中央にある指定喫煙所3か所。また、2018年よりJR川崎駅北口自由通路にフロンターレ創設時からの写真パネルが展示されている場所には、さらにアート作品が加わることで、フロンターレ×アートが可視化されて、特別な空間に生まれ変わっている。

川崎駅西口ラゾーナ前には大槻蒼葉さんの『花火』 【(c)KAWASAKI FRONTALE】

今回の取り組みについて、昨年12月20日に関係者が参加して行われた記者会見に出席した株式会社川崎フロンターレ 吉田明宏代表取締役社長に、プロジェクト参画への思いを聞いた。

「これまで音楽など異業種ともコラボしてきたフロンターレですが、“アート”とコラボするのは初めての試みです。こうした活動を通じて、私たちも新たな気づきをもらいますし、フロンターレを知らなかった方にも応援してもらえるキッカケになればうれしいですね。地域の方になくてはならない、あらゆる面で地域を支えるインフラ的存在になりたいという思いも実現していきたいと思います」(吉田社長)

川崎駅東口ルフロン前にはMAKIさんの作品 【(c)KAWASAKI FRONTALE】

このプロジェクトの中心にある、色鮮やかなアート作品を提供しているのは、studioFLATに所属するアーティスト3名。studioFLATが掲げる理念は、「障害のある、なしに関わらず、皆の魅力を最大限に引き出して、社会貢献に励む」とある。会見に出席した理事長の大平暁氏は、「自分たちが生活している川崎市内にアート作品が飾られたことで、日常生活のなかで目にすることができる。アーティスト自身にとっても、本当にやり甲斐が感じられたと思います」と、笑顔で語った。

大平さんの笑顔には、もうひとつ大きな理由がある。

実は、大平さん自身は、何度も等々力に足を運んだことがあるフロンターレ・サポーターでもあり、そのため今回のコラボは、大平さんにとっても、特別な想いがあるとか。2022年には、 川崎市内のスポーツクラブや企業などから布廃材の提供を受けて、その布廃材を「さをり織り」に織り込めるように裁断し、studio FLAT他が協力して、Saori Artを制作するプロジェクトなどでもフロンターレと活動を共にしてきた。

「僕自身も川崎市出身ですが、サッカーが大好きで、フロンターレを応援してきました。今回は、アートでの初めてのコラボということで、アーティストの作品が川崎市の中に溶け込むことは、ひじょうにうれしいです」(大平理事長)

川崎駅東口中央は、北口自由通路と同じ阿部堅太さんの『MUSIC』 【(c)KAWASAKI FRONTALE】

川崎市にフロンターレが根づいたからこそ実現

今回のプロジェクトで特筆すべきは、フロンターレのエンブレムやロゴがアート作品のなかには“ない”ということだ。それもまた、フロンターレにとってはチャレンジでもあり、実際に、プロジェクトを実現する過程ではさまざまな意見も出たという。

掲示箇所のひとつである、JR川崎駅北口通路には、下段にアート作品、上段には、1997年から続くフロンターレの戦いの歴史を写真パネルとともに追っていくことができる。創設当初は、「川崎フロンターレ」という名前を憶えてもらうことから始まり、ポスターを貼ってもらえるよう川崎市内の商店街を巡る日々があった。

それから約27年が経過し、その間には、2017年に悲願だったJ1リーグ初優勝をつかみ、そこから2023年の天皇杯で7つ目のタイトルを獲得した。

写真パネルをひとつずつ見ていくと、例えば鬼木達監督が選手時代の写真があったり、2020年に現役を引退した中村憲剛FROの加入した頃の姿を目にしたり、たくさんの人たちがバトンをつないできた歴史そのものなのだと感じることができる。

その一方で、そうした戦いと並行して、川崎市や川崎市民の生活のなかに、フロンターレが共にあり続け、地域に根差してきたからこそ、このようなプロジェクトが実現できたとも言えるだろう。

なぜなら、もしもフロンターレが地域に根差していなければ、「フロンターレ」の名前やエンブレムのない社会貢献活動は実現することが難しかっただろうし、アートという異業種とのコラボレーションも実現していなかったかもしれないからだ。

とはいえ、川崎フロンターレである。

表立ってエンブレムやロゴがなくとも、ギミックが隠されているのだと今回のプロジェクトの担当者である黒木透さんが教えてくれた。

【(c)KAWASAKI FRONTALE】

「COLOR TOGETHER」

これは、「LightUp Galleryプロジェクト in 川崎」のプロジェクトテーマである。

このテーマを見て、ピンと来た方もいるかもしれない。

そう、「FOOTBALL TOGETHER」というフロンターレが掲げてきた信念と言葉をリンクさせているのである。

あらためて調べてみると、「FOOTBALL TOGETHER」には、こんな意味が込められている。

「市民、選手、スタッフ、スポンサー、そしてサポーター。“TOGETHER”という言葉には、すべての人と共に歩む私たちクラブの信念が込められています。」

そうした志もあり、「川崎市民や川崎市を訪れる方が、多様性や個性を当たり前のこととして自然と考える機会の創出にもつなげていきたい」とするプロジェクトとも重なりあったと言えるだろう。

そして、2024年に市制100周年を迎える川崎で、その先に続く未来においても、今回掲出された彩り豊かなアートを見て「美しいな」と感じたり、アートとともに写真を見てフロンターレを感じられる、そんな日常の中の一瞬が生まれたら、素敵だ。

ぜひ、川崎駅周辺を訪れる際に、色彩が鮮やかなアートを見つけてほしい。
(協賛・協力企業)
◇JT(日本たばこ産業株式会社)
◇HI合同会社
◇株式会社ヘラルボニー
◇川崎市
◇NPO法人studioFLAT

(掲出場所)
◇JR川崎駅北口自由通路
◇指定喫煙場所(川崎駅西口ラゾーナ前)
◇指定喫煙場所(川崎駅東口中央)
◇指定喫煙場所(川崎駅東口ルフロン前)

(取材・文:隠岐麻里奈)
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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