【ラグビー/NTTリーグワン】「必ず優勝して現役生活を終わりたい」。 突然の引退発表に内田啓介が込めた強い決意<埼玉WK vs BR東京>

埼玉パナソニックワイルドナイツ 内田啓介選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
埼玉WK 44–17 BR東京


埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)とリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)が熊谷スポーツ文化公園ラグビー場で対した。

序盤は両チームの長所がぶつかる攻防となったが、埼玉WKは堅守速攻でリズムをつかむと坂手淳史の2トライなどで主導権を手繰り寄せる。後半にも4トライを奪って突き放し、44対17で勝利。開幕3連勝を果たした。途中出場の埼玉WK・内田啓介、BR東京・柳川大樹がジャパンラグビー トップリーグ時代を含めたリーグ通算100キャップを達成し、試合後には花束贈呈などのセレモニーが行われた。

後半33分、内田が芝を右手で触れてからピッチに入った。交代となった小山大輝とハイタッチを交わして入れ替わると、ラクラン・ボーシェーは内田の下へ駆け寄り握手を求めた。通算100キャップを迎えた元日本代表に対してスタンドのファンは盛大な拍手を送った。

内田は、変幻自在のパスを的確に散らしてチームにいいリズムを生み出していく。そして後半34分には、ダミアン・デアレンデのダイナミックなランからのパスをインサイドで受けて、ダメ押しトライ。チームメートたちは100キャップのメモリアルトライを祝福した。経験に裏打ちされた内田のプレーによって勢いを維持した埼玉WKが快勝した。

試合終了後には、内田の顔写真が印刷された“厚紙ハット”を同僚たちが装着。粋な演出でメモリアルゲームに花を添えた。内田は家族と一緒に花束を受け取りダンディな笑顔を見せた。

だが、驚きはそのあとだった。マイクを持った内田は100キャップへの感謝を伝えるとともに、今季限りでの現役引退を発表したのだ。スタンド、そしてチームメートからも驚きの声が上がった。

「(現役引退については)チームメートにも伝えていなかった。100キャップのセレモニーであいさつの場をもらったので、そこでファンのみなさんに伝えたいと思った。シーズンが終わって何も伝えられずに引退するのは寂しかったので、感謝を示すためにも先に伝えておきたかった」

ロビー・ディーンズ ヘッドコーチは「内田選手は、どんな状況でもチーム内での役割を遂行するプロフェッショナルなプレーヤー。まだまだプレーできる状態だが、引退は彼自身の中ですでに決断していたことと聞いた。残りの試合で完全燃焼してほしい」と内田の意志を尊重した。

内田によると、実は昨季で引退する予定だったという。しかし、自身が先発でプレーしたプレーオフトーナメント決勝でクボタスピアーズ船橋・東京ベイに惜敗し、リーグワン2連覇を逃したことで気持ちが変わった。

「昨季に優勝して引退するのを決めていたが、決勝で負けてしまって、終わった瞬間に『このままじゃ終われない』という思いになった。この1年で、やり切って引退したいと思った。やり切るとは? 必ず優勝を果たして現役生活を終わりにしたい」

内田の100試合出場セレモニーは思わぬ形で幕を閉じた。埼玉WKは、すでに堀江翔太が今季での現役引退を発表しているが、これで二人の功労者が今季でフィールドを去ることになった。負けられない理由が一つ増えたチームは、最高のフィナーレを目指して突き進むだけだ。

(伊藤寿学)


【©ジャパンラグビーリーグワン】

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ ヘッドコーチ

「非常に良いパフォーマンスでした。試合前に、インフルエンザではなかったのですが(選手の体調不良などにより)チャレンジングなことがありました。プレッシャーはありましたが、良く対応して良い仕事をしてくれたと思います。困難を乗り越えて選手たちが良いプレーを見せてくれました。選手たちが集中力を保ってくれました。このような状況でリコーブラックラムズ東京さんとの戦いでしたが、ディフェンスが良くて良いゲームができたと思います。100キャップのセレモニーで内田(啓介)選手が埼玉パナソニックワイルドナイツの選手としての引退を表明しましたが、トライを取れて良かったですし、本日、家族がいるホストゲームで祝福できて良かったと思います。50キャップとなった(ディラン・)ライリー選手も素晴らしいプレーを見せてくれて、大きな功績を成し遂げてくれました」

――開幕3連勝になったことについては?
「チームの出来には満足しています。(ラグビーワールドカップ2023フランス大会がありシーズン前は)短期の準備でしたが、選手たちの仕事への向き合い方にも満足しています。選手のマインドセットが素晴らしく、試合で表現してくれています。今季に立ち向かっていきたいと思います」

――ウイングで起用した野口竜司選手の評価を教えてください。
「パフォーマンスは良かったと思います。ワークレートが高く、空中戦も強いですし、ウイングも合っていると私は感じています。竹山(晃暉)選手の長所も生かしたいと思い、このシステムにしました」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「内田選手の100キャップとディラン・ライリー選手の50キャップを祝福したいと思います。内田選手が引退を表明しましたが、まだ試合はありますし、今季もやってくれると思います。花道を飾りたいと思います。プレーではワークファーストでゲームに入りました。後半に2トライを奪われてしまったのですが、そこを反省しつつ、まだ伸びしろがあると思ってやっていきます」

――前半の坂手選手自身の2トライについて。
「エリアの利で、うまくゲームを進められたと思います。セットピースは、プレシャーが掛かっていましたが今季はモールがうまくいっていなくて、選手から意見が出ていました。結果としてその形でトライが生まれて良かったと思います」

【©ジャパンラグビーリーグワン】

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「最初に、選手にとって100キャップは特別なこと。二人の選手(内田啓介と柳川大樹)におめでとうと伝えたいです。試合に関しては、埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)さんは非常に良いチームでした。セットピースやディシプリンに甘い部分があり侵入を許してしまいました。良いチームに、チャンスを与えてしまえばしっかりと決めてくるということです」

――敗れた前週からの切り替えをどう行ってきましたか?
「前の週のゲームはメンタリティーの話をしました。今日は、自分たちらしさを部分的には見せられました。ハードなトレーニングをしてきて頑張ってくれたと思います。精度を含めて攻守のバランス良くやっていきたいと思います」

――開幕3試合を終えて、どのように感じていますか?
「いまは傷だらけの状態です。けがなどで選手がいないシチュエーションですが、次の試合へ向けてリセットしたい。まだ3試合を終えたところで自分たちの絵もしっかりと見えています。選手が戻ってきますし、自分たちのプロセスを持って、次の試合へ向けて準備したいと思います」

リコーブラックラムズ東京
山本昌太共同バイスキャプテン

「両チームに100キャップの選手がいたので、この場でおめでとうございますと伝えたいと思います。結果については素直に残念です。セットピースとディシプリンが甘く、相手にチャンスを与えてしまいました。攻撃の部分は良い部分があったので、切り替えて次のゲームへつなげていきたいと思います」

――自分たちらしさについて、どう考えていますか?
「ディフェンスでしっかりと役割を果たすことと泥臭さ、タフなところは自分たちらしさです。部分的にはできましたが80分を通じて見せられていない。第3節が終わって、まだチームには波があるので、チームとして成長しなければいけない部分があると思います」

――今日は守備で耐えられなかったと思うが?
「攻められたときにゾーンに入られてしまいました。耐え切れなかった面もありましたが、そのエリアに入れないことが大事だったと思います」

――前半について、攻め切れなかった部分もあったが?
「埼玉WKさんのディフェンスが素晴らしかったと思いますが、自分たちがやりたいアタックで、正しいところにいないなど、役割を果たせなかった。相手と自分たちの両面だと思います。相手のディフェンスに対して正しいところへボールが運べずに自分たちの攻撃ができなかった」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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