【朝日杯FS】日本競馬に新風を呼ぶ血統、ジャンタルマンタルが無敗で2歳マイル王者に

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川田騎手騎乗の1番人気ジャンタルマンタルが朝日杯FSを勝利、無敗で2歳マイル王の座に就いた 【Photo by Shuhei Okada】

 第75回GI朝日杯フューチュリティステークスが12月17日、阪神競馬場1600m芝で行われ、川田将雅騎手騎乗の1番人気ジャンタルマンタル(牡2=栗東・高野厩舎、父パレスマリス)が優勝。中団のイン追走から最後の直線で一気に突き抜け、3戦無敗で2歳牡馬マイル王の座に就いた。良馬場の勝ちタイムは1分33秒8。

 ジャンタルマンタルは今回の勝利でJRA通算3戦3勝。重賞はデイリー杯2歳ステークスに続いて2勝目。川田騎手は2017年ダノンプレミアム、20年グレナディアガーズ以来となる朝日杯FS3勝目。高野調教師は同レース初勝利となった。

 なお、1馬身1/4差の2着には武豊騎手騎乗の4番人気エコロヴァルツ(牡2=栗東・牧浦厩舎)、さらにクビ差の3着には団野大成騎手騎乗で紅一点の5番人気タガノエルピーダ(牝2=栗東・斉藤崇厩舎)が入った。

「ここが勝負所」の4コーナー、一気加速で早めの先頭

川田騎手が語った「勝負所の4コーナー」、ここから一気にポジションを上げ勝利を手繰り寄せた 【Photo by Shuhei Okada】

 先週の2歳女王決定戦・阪神ジュベナイルフィリーズに続き、2歳牡馬のマイル王を決める朝日杯FSでも無敗のチャンピオンが誕生した。新馬、2戦目のデイリー杯2歳Sと同様に、GIの大舞台でも全く危なげのない勝ちっぷり。ジャンタルマンタルのレースを見て思うことは、とにかくレースセンスが図抜けている、ということだ。

 この朝日杯FSでも好スタートを決めると、枠なりのままインを追走。ただ、高野調教師が「ポジション、位置の形としては決して楽ではなかった」と振り返ったように、過去2戦よりも下げる形で中団のポジション取りとなってしまった。しかし、ここからスルスルと馬群を縫うように番手を上げていった川田騎手のハンドリングはさすがであり、それに応える機動力を発揮したジャンタルマンタルにも唸らされる。特にジョッキーが「ここが勝負所」と読んだのは4コーナーだった。

「4コーナーであまり良い形になりそうではない流れになっていたので、少し早いタイミングではありましたけど、進路を取りに行く形を選びました。その後はこの馬の能力を信じながら、ゴールまで連れて行きさえすれば負けることはないと自信を持ちながら乗っていましたので、だからこそ4コーナーも早めに動く形にはなりましたけど、ここが勝負所だなとも思っていました」

 そして、直線入り口ではもう先頭集団を射程圏内に捉えると、手を緩めることなく一気の加速。アッという間に先頭に立ち、返す刀で後続をシャットアウトしてみせた。

「少し攻める競馬にはなりましたが、しっかりとした脚を使ってくれましたし、順当に勝ってくれたと思います」

「来年はさらに楽しみになる馬」

来年はマイル路線継続か、それともクラシックか。高野調教師(右)は「どんなシチュエーションになっても穏やかに走れるようにすることができれば」と語る 【Photo by Shuhei Okada】

 これだけ上手なレースを見せられると、完成度が相当に高いということになるのだが、ジャンタルマンタルは単にそれだけでの馬ではないことが、陣営の言葉から伝わってくる。レース初騎乗を終えて感じた同馬のセールスポイントについて、川田騎手はこう答えている。

「根の性格がとてもいいですし、持っている能力が非常に高いのは間違いないです。そしてさらに成長がうかがえる馬だと思いますので、来年はさらに楽しみになる馬です」

 また、新馬、デイリー杯2歳Sの道中はやや力みながら走るような場面もあっただけに、川田騎手はそこをレース前の懸念材料としていたようだが、今回は「思ったよりも穏やかで、本当にリズム良く走ってくれました」。このことから精神面の成長も自然と訪れるであろうことを語った川田騎手は「課題らしい課題は特にないのではないかなと思います」とまで高く評価している。

 レースセンス、完成度の高さとともに更なる成長の余地も残す2歳マイル王者。こうなると、見てみたいのはやはり距離を延ばしてのクラシック路線での活躍。来春の展望に関して、高野調教師は次のように語った。

「心臓はいいものを持っていると思いますし、血統的にも長い距離をこなしていい背景があるので、あとは走り方だと思います。より上手に、どんなシチュエーションになっても穏やかに走れるようにすることができれば、マイルでもいいですし、もう少し長い距離でも走れるのかなと思います。そこは厩舎としても取り組んでいくべきことだと思います」

父パレスマリスの弟は天皇賞・春を制したジャスティンパレス

日本ではまだ馴染みのない種牡馬パレスマリスの産駒だが、新たな風を吹かせる活躍を来年も見せてほしい 【Photo by Shuhei Okada】

 トレーナーが語った血統面でのプラス材料は、父パレスマリスが米国3歳三冠の1つである2400mのベルモントステークスの勝ち馬であること。日本ではまだまだ無名の存在ではあるのだが、その半弟には2023年ステイヤーズステークスの勝ち馬アイアンバローズ、そして今年の天皇賞・春を制したジャスティンパレスがいるなど、日本の長距離戦にフィットした活躍馬が出ている。さらに、パレスマリスは来年からダーレー・ジャパンにより日本で種牡馬として供用されることが発表されたばかりとあって、未知の魅力にあふれた“新種牡馬”にとってこれ以上ない追い風となっただろう。

「あまり馴染みのない血統で少し特殊な立ち位置になると思いますが、またそれが日本の競馬に新しい風を持ってくるのではないかなと思います」と高野調教師。

 ディープインパクト、キングカメハメハ、ハーツクライの時代が終わりを迎え、今年のクラシックはドゥラメンテ、サトノクラウン、キタサンブラックの2015年クラシック世代の種牡馬が席巻、そしてキタサンブラック産駒の世界最強馬イクイノックスも来年からスタッドインするなど生産界は新たな時代に突入した。そこへ現れたパレスマリス産駒のジャンタルマンタルがさらなる新時代を象徴する風となるか、来春の走りにも大きな期待がかかる。(取材:森永淳洋)
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