【ラグビー/NTTリーグワン】これが堀江翔太の生き様。 聖地・花園でかつての補助係が主役の輝きを放つ<花園L vs 埼玉WK>
【©ジャパンラグビーリーグワン】
花園L 0–49 埼玉WK
花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)はホストゲーム開幕戦で、埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)に0対49で大敗を喫した。前半は埼玉WKを1トライ1ペナルティゴールに抑える奮闘を見せた花園Lだったが、やはり日本代表を数多く擁する埼玉WKが、後半に地力を発揮。7,507人の観客が集った東大阪市花園ラグビー場は、沸き続けた。
「ラグビーの聖地で、みんなが高校時代から目指している、この花園でラグビーができるというのは、日本で育った僕たちには特にうれしいこと」
埼玉WKの主将・坂手淳史の言葉が『西の聖地』でプレーする選手の本音だろう。
そして『花園』への思いを人一倍強く持っているのが日本代表の堀江翔太である。4度のラグビーワールドカップを経験した百戦錬磨の37歳はチーム公式HPのプロフィール欄で『忘れられない試合/プレイ』を『高校3年時の花園予選決勝』と記している。
大阪で生まれ育った堀江は大阪府立島本高校出身。しかし、高校3年間で全国高校大会への出場は叶わず、花園の芝は『補助係』として踏んだのみだった。それが、今季限りの現役引退を表明していることもあってスタンドには『堀江翔太』『ラスボス見参』のフェイスタオルを掲げるファンも数多く見られた。後半10分に堀江が投入されると大きな声援が沸く。
「ありがたいなと思いました。タオルを掲げてくれる人も多くて、最後の僕を観に来てくれた人がけっこういたので、プレーしやすかったです」(堀江)
そして27点のリードを保っていた後半23分、モール内でボールを持つ堀江は鋭い動きで今季初トライに成功。「ひさびさのトライだったし、ウチの親も観に来ていたのでタイミング的に良かったです」と見事に故郷に錦を飾ってみせた。
トライ後にも「チームに貢献することが最優先」と、過度に笑顔を見せなかった堀江だが、かつての『補助係』はピッチで『主役』の輝きを放っていた。
無名の高校時代を経て、NTTジャパンラグビー リーグワンの初代MVPに上り詰めた『ラスボス』は、ラグビー界を支えるラグビー少年たちに含蓄ある言葉を残すのだ。
「ホンマに特別な場所というか、花園に出るのは夢でしたし、ここでプレーするのは光栄ですけど、高校で花園に出られなくても、それがすべてじゃない。出られなくても次に花を咲かせる場所はあります」
堀江翔太は、自らの生き様を現役最後の瞬間まで、ピッチ上で刻み続ける。
(下薗昌記)
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向井昭吾ヘッドコーチ
「試合の総括は、みなさんの思っているとおり、前半は非常にディフェンスをしっかりとやってくれて試合を作れたと思うのですが、最後のあのトライを取っていれば、もしかしたら前半をリードして折り返していたかもしれない。後半の20分ぐらいまでは試合を作れていましたけども、後半20分に自分たちで(集中が)切れる部分があって、そこが粘れないのがいまの花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)だと思っています。あそこが粘れるようになれば、上位と戦ってもクロスゲームにできるようなチームに変われるんじゃないかと思いますので、2戦終わったところですけど、もう一段レベルを上げて、ディフェンス、アタックともに習熟していきたいと思います」
――埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)と対戦するにあたって特にフォーカスして取り組んできたことは?
「埼玉WKはみなさんもご存じのとおり、インプレーが長い。最後のノーサイドで終わる前に竹山くん(竹山晃暉)がブラインドサイドから走り込んで、ウチのチームは走れなくて、たぶんあのまま走っていたらトライになったと思います。インプレーをなくすために、必ずタッチに蹴ってプレーを完結させようと、ブツブツとプレーを切った中で、ディフェンスをしっかりとやるということにフォーカスしてやってきました。でも、なかなかそれをさせてくれなかった。後半はマイボールがマイボールでなくなり、スクラムからは(ボールが)出たもののアタックができるようないい形で出ていなかった。前半は回数が少ない割に、自分たちのボールではいいアタックができていたので、それがミスで終わったというところもありますけど、後半は本当にマイボールも相手ボール、相手ボールは相手ボールというような形であれだけディフェンスをし続けると、やはりどこのチームもあれぐらいのことになるのかなと。最初に聞かれた質問についてはインプレーをなくす、短くするというのが今週のターゲットでした」
――一方で、インプレーが長い前半のディフェンスの中で、フェーズを重ねられても2対1でタックルに行っていた。これはしっかりと取り組んできたことか?
「そうですね、今季はディフェンスコーチも来て、今日はちょっとターゲットを超えられませんでしたけど、試合においては30点以下に(失点を)抑えてその近辺で私たちは勝つというゲームプランがあります。それが今日はできませんでしたが、前半のところはできていた。後半の疲れたときにしっかりとできるかどうかが、これからの花園Lが浮くか沈むかというところの瀬戸際で、それは誰が出ても同じようにできるように鍛えてきたつもりなので、また代わった選手がやってくれると思います」
――クウェイド・クーパー選手など復帰が待たれる選手が数多くいるが、いまの状態は?
「徐々に復帰はしてくれると思っていますし、復帰したら出てもらいたい選手はいっぱいいるんですけども、それがその時々によってとラインアウト、スクラムを含めていろいろとバランスがあるので。バックスも今回、あとから出ましたが、それが先発なのか後発なのか、いろいろと考えながら選手は起用していきたい。そろえていただいた選手はいますので、復帰したときに楽しみにしていただきたいと思います」
花園近鉄ライナーズ
片岡涼亮バイスキャプテン
「いま、向井ヘッドコーチからあったように、前半はすごくいいディフェンスで我慢して、チャンスを自分たちで作れたところはあったと思いますけど、やっぱり点数が取れなかったところ、もしあそこでちゃんとトライを取れていたら、後半の入り方ももっと変わったゲームになっていたのかなという印象です。個人的には埼玉WK相手に無
得点点で終わったことが悔しいので、1トライでも点数を取れるように、もっと練習から詰めてやっていかないといけないと思いました」
――前半はトライをとってもおかしくない場面があった。無得点に終わった要因は?
「自分たちは強いディフェンスからボールを取り返してチャンスを作るということで、チャンスを作るところまでは良かったんですけど、相手のディフェンスのプレッシャーの中で自分たちのシェイプが崩れたときにもう一度自分たちの形を作るという段階の中ですごく埼玉WKがプレッシャーをかけてきて、自分たちの形でアタックすることがなかなかできなかったのが得点につながらなかった要因かなと思います。本来、外にいるはずの選手がいなかったりとか、寄らなくていいところに寄ってしまったりとか、そこは埼玉WKがプレッシャーを掛けてきていたので、そこのシェイプが崩れたというのが一つの要因かなと思います」
――タイトな試合の中で、うまくいった部分や自分たちが想定どおりにプレーできたところは?
「開幕戦のときと同様なんですが、ゴール前のディフェンスで我慢できたところです。後半は20分で切れてしまったところがありましたが、前半はしっかりと前に出て、我慢して、相手のペナルティを誘ってというのがずっとできていたので流れを作る手前までは行っていたんですけど、最後の攻め切るところまでは行けなかったですね」
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ロビー・ディーンズ ヘッドコーチ
「まずは花園の会場に来られて、とても感謝しておりますし、すごく長い間来ていなかったと感じています。みなさんにとってもいい瞬間だったのではないかと感じています。すべてが詰まっていた試合だったなと感じています。花園Lさんも、私たちに抵抗してきていて、前半の部分では私にとってすごく難しい試合になったと感じていました。ハーフタイムには8対0というスコアボードで入りました。後半についてはすごくチャレンジングなところがありまして、いろいろなけがであったり、ポジションの変化、通常では行っていないところで選手がプレーしないといけなくなったりしましたが、そこにすごくうまく対応してくれたと思いますし、そういった問題を選手たち自身で解決できたなと思っています」
――無失点に抑えた守備への評価と、その要因についてどう分析しているか。
「どんなチーム相手でも無失点に抑えるというのは効率的に、効果的にディフェンスができたというふうに感じています。花園Lさんもすごくフィジカルで体が大きい選手や俊敏な選手がいますけど、無失点で抑えられたのはすごいことを達成できたと思います。(前半は)私たちのモメンタムを花園Lさんが止めたと思っていますし、そこに関しては二人目の選手の寄りがすごく、フィジカルなところで、自分たちがうまくかわせなかったと感じています。そういったところも前半はすごく感じたんですけど、後半からはうまく対応できたと感じています」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「ラグビーの聖地、みんなが高校時代から目指しているこの花園でラグビーができるというのは日本で育った僕たちには特にうれしいことですし、すごく素晴らしい雰囲気の中でラグビーをすることができて楽しかったと思っています。プレーにつきましては、前半は特に、花園Lさんのフィジカルに少し受けてしまうところがあって、ペナルティを犯してしまう部分が多かったなと思っています。そこで自分たちが個人で解決しようとしてしまったところがあまりうまくいかなかったと思うので、しっかりとチームとしてどういうところをセイムページに向いていけるか、どういうプレーを選択していくのかをもう一度やっていきたいと思います。後半はそこがうまくいって、得点を重ねることができたと思っています」
――前半はペナルティをけっこう犯してしまった。それは個人の問題だと話をしていたが後半はかなり改善できていた。どこをチームとして修正したのでしょうか。
「前半は個人のペナルティというよりも、ペナルティが重なったりとか、いろいろなミスが重なったりするのを、みんなが一人ひとり修正しようとしたので、うまくいかなかったと思っています。特に後半はフィジカルのところ、バトルのところで引かずに自分たちからコンタクトしていこうと特に強調してチームにはアナウンスしました。そこで勝負してきているのは分かっていましたし、そこで負けてしまうとラグビーはどれだけパスがうまくて、足が速くてもうまくいかないので、そこのフィジカルのところはしっかりと自分たちで前に出続けて、対抗し続けようというところで修正しました。やっぱり、コンタクトで前に出られたり、キャリアーが少しずつ前に出たりできると花園Lさんもすごくディフェンスがしづらそうだったので、そういうところでの修正点がうまくいったのかなと思います」
――ハンドリングのところで少しミスが多かったが、それは昨日の高い気温や湿度も低くなった気候の変化も要因だった?
「少しその点のところもあったかと思いますけど、ただ少し足が前に出過ぎたというか相手より速く仕掛けたいというところがプレーとして出過ぎていつもより少し体が前に行ってしまったぶん、パスが少し返ってしまってボールが取れない部分が前半特にあったのかなと自分たちの肌感では感じています。いつもならもう少し溜めて、前をしっかりと見てプレーするところが、少し前屈みになってしまったかなと。それはやはり前半に体を当てている感覚として(相手の)フィジカルが強かったので、そこで速く体を当てるところに対して、自分たちのプレーが前のめりになってしまったかなと思っています」
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