算数ドリル実践学習で見せた宮代大聖のストイックさと上福元直人の教師の風格

川崎フロンターレ
チーム・協会

ゲストティーチャーを務めた宮代大聖(左)と上福元直人(右) 【(C)KAWASAKI FRONTALE】

11月16日(木)に川崎市立下作延小学校にて、算数ドリル実践学習を実施。練習後に駆けつけた宮代大聖と上福元直人が参加して子どもたちは大盛りあがり。そんな1日で垣間見えたのはストイックな宮代と教師の風格を漂わせる上福元の姿だった。

算数ドリル実践学習とは

2023年度の川崎フロンターレ算数ドリル上巻 【(C)KAWASAKI FRONTALE】

まず、算数ドリル実践学習とは2009年から小学6年生向けに配布している「川崎フロンターレ算数ドリル」を教材にし、選手と一緒にドリル内に出題されている問題を実践、証明をする授業。この活動を継続していくにあたって、フロンターレはある思いをもって取り組んでいる。

「僕たちは『サッカーを知ってもらいたい、算数があまり得意ではない子に少しでも楽しいと思ってもらいたい』。そういった思いで私たちは、この活動を続けています。学校生活や教育の中に関わらせていただくことよって、フロンターレが生徒たちの日常の中で当たり前の存在になっていくと思います。それが5年後、10年後と大人になったときに『そういえばフロンターレの算数ドリルやっていたよね。選手と一緒に授業をやったよね』と友達同士で話し合えるほどの思い出をこれからも作っていきたいです」(フロンターレスタッフ)

実際、毎年のように先生たちも「算数が嫌いな子もいるけど、今日は何より楽しく学んでくれる。これだけ楽しい顔を見るとうれしい」と話しているように継続的に活動に取り組んできたことで、フロンターレが教育の一つの力になっていると言えるだろう。

ストイック&教師の風格

そんな「算数ドリル実践学習」は今回で15回目。宮代と上福元の両選手が校庭に登場すると子どもたちは大盛り上がり。授業は例年どおり2グループに分かれて、ドリル内の「データの見方」で学習した「速さ」に関する問題を解決することがテーマとなった。

宮代が担当したグループの問題は「宮代選手と50m走を競争して同時にゴールせよ!」。ゴールするための道のりを求めるために「速さ」「時間「道のり」を計算して、実際に走って確かめるというもの。この問題を担当した選手たちはたくさん走ることが恒例。これがけっこう大変…。ただ、宮代は一切の妥協を許さない男であり、Mr.ストイック。全力ダッシュを繰り返しても「キツい!」といった弱音をほとんど吐かず、むしろ子どもたちと「同時にゴールできたかな?」と話しながら歴代で最高本数?となる計10本を走り抜いた。また肝心の計算タイムでは、宮代自身も校長先生に質問し、子どもたちに還元して一緒に答えを導き出していくなど、どんなときも手を抜かない宮代らしさ全開の授業だった。

50m走で選手と同時にゴールするためのハンデを計算し、答えを検証する 【(C)KAWASAKI FRONTALE】

一方の上福元が担当したグループは「上福元選手、宮代選手や自分のシュートを、動物の速さと比べて順位をつけよう」。上福元、宮代、子どもたちのシュートの球速を測定し、異なる単位で表された動物の速さとの比較を通して、処理技能を高める狙いをもって進められた。ちなみに2人の最高速度は上福元が時速89km、宮代が時速100km。破壊力抜群のシュートに子どもたちは目を輝かせていた。そのなかで際立っていたのは上福元の教師としての佇まい。後ろに手を組んで子どもたちが計算している姿を見ているのは、まさに教壇に立っていたことのある人の所作。それもそのはず。上福元は大学時代に教員免許を取得しているため、教育実習の経験をしているのである。だから、今日を迎えるにあたって「教師の雰囲気は教育実習で学んだので、そのイメージを思い出して頑張りましたよ」と本人が話すように、イメージ通りの姿を体現することができていた。ただ、算数は苦手教科だったそうで、ギリギリなところもあったが答えを間違えなくて安堵している様子だった。

選手のシュートスピードも、立派な算数の教材に 【(C)KAWASAKI FRONTALE】

選手と子どもの距離

2グループとも見事、答えに辿り着いて授業は終了。その後、2人から子どもたちへメッセージを送った。

「僕は小さい頃からサッカー選手になることを夢見てきました。いまも変わらずに目標を明確にして取り組んでいます。皆さんの中にはまだ夢や目標がない子もいるかもしれませんが、もし夢や目標ができたときには、そこに向かって頑張ってください」(宮代)

「夢を追い掛けることをどんなときも諦めないでほしい。自分が思ったようにいかないときこそ、もっと頑張ろうというマインドでやっていってください。僕も上手くいかないときは、上手くいくためにはどうすればいいかを考えてやってきました。皆さんも、ぜひ夢に向かって頑張ってください」(上福元)

子どもたちと一緒に答えを考える宮代大聖 【(C)KAWASAKI FRONTALE】

2人の言葉は、耳を傾けていた子どもたちにとって大きな財産になるだろう。加えて驚いたのは子どもたちと選手の距離。宮代は子どもたちの名前を覚えるほど仲良くなり、上福元は子どもから「どうしたら鼻が高くなれますか?」と質問されてタジタジになりながら答える姿もあり、改めてフロンターレは地域の方々、子どもたちとの距離が近いチームだと感じることができた。そんな2人も子どもたちからパワーをもらった。

「たくさん50m走を走って疲れたのもあったけど、みんなが楽しそうに走っていてよかったです。それに、真面目に計算している姿を見ていたら自分が小学生だったころを思い出しました。懐かしい気持ちになったし、子どもたちのパワーをもらいました」(宮代)

「僕はここ最近では考えてこなかった計算をしていたので、少し迷っていたところもありましたが、答えを間違えなくてよかったなと…。本当に今日は子どもたちが素直に喜んでくれていたと思うし、僕らもパワーをもらいました。これからもサッカーを頑張っていきたいです」(上福元)

本物の先生のような雰囲気を醸し出す上福元直人 【(C)KAWASAKI FRONTALE】

来年以降も継続する「川崎フロンターレ算数ドリル」と実践学習。フロンターレは子どもたちが楽しく算数を学べる場を提供していく。

(取材・文/高澤真輝)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント