山田美諭【Turning Point】パリ2024オリンピックで見せたい“カッコいい姿”

日本オリンピック委員会
チーム・協会

【西村尚己/アフロスポーツ】

山田美諭

東京2020オリンピックテコンドー女子49kg級で5位入賞。軽量級の日本の第一人者として、全日本選手権で計9度の優勝実績を誇る山田美諭選手。そんな山田選手の”Turing Point”は2度の前十字靭帯断裂という大怪我だった。2度の“Turing Point”から得たもの、そしてパリ2024オリンピックに向けての想いとは。

テコンドーを始めたキッカケ

実家が空手の道場で父が師範だったということもあり、小学校のとき空手を毎日やっていました。私がやっていたのがフルコンタクト空手だったのですが、やはり年齢が上がるにつれて体が大きい子の方が有利になってきて、私自身体が大きい方でもなかったので、だんだんと勝てなくなり始めました。そのような中で、私は足技が元々すごく得意だったのですが、どうせ目指すならオリンピックの舞台でずっと空手で培ってきた技を活かして欲しいという父の想いもあって、中学からテコンドーに転向しました。祖父がスキー関係でオリンピックに関わっていたということもあり、父がオリンピックに対して憧れを持っていたということもあります。私は、空手がオリンピック種目ではなかったので、あまりオリンピックというものを身近には感じてはいなかったのですが、父のそのような想いもあり、私もオリンピックを目指してみたいという想いが芽生えて、競技転向しました。

【西村尚己/アフロスポーツ】

Turning Point①:人生初の大怪我 〜挫折から得た“新たな自分の姿”〜

リオデジャネイロ2016オリンピックの代表選考会で、前十字靭帯を断裂して手術をしたのですが、それが1つ目のターニングポイントになります。リオデジャネイロ2016オリンピックのアジア大陸予選に出場するための日本代表を決める選考会が行われたのですが、その試合の準決勝で前十字靭帯を断裂してしまいました。4年間でそこに向けて頑張ってきたという一番大事な日だったので、まさかその日に怪我をすると思ってもなく、非常にそのときは落ち込んで、なぜ自分がこんな思いをしなければならないんだろうって思ったこともありました。

――そのような悔しい思いがあった中、その後全日本選手権の3連覇に繋がると思うが、競技成績の向上に繋がったキッカケは?

怪我をしたことがキッカケで、自分がすごくつらいときに自分の近くに寄り添ってくれる人たちがいっぱいいて、その人たちのために頑張りたいなという想いがすごく強くなって、それが自分のエネルギーになっていったという感じが大きいです。怪我をしてすごく落ち込んでいて、テコンドーを続けるかどうか悩んでいたときがあったのですが、両親も家族もみんながっかりしているんだろうなと思っていました。オリンピックも行けなくなって、もう1年間リハビリをすることになってしまったので。そんなときに、結構親に当たってしまったことがあったのですが、そんなときに母親が「美諭が元気で健康でいてくれればそれだけでいい」と言ってくれて、それがすごく自分の中では「それだけでいいんだ」と、気持ちが楽になったというか、それを聞いて逆に頑張らなきゃいけないなと思って、それもパワーになりました。

――その経験が自分の中で活きたなという瞬間は?

怪我をしてから、練習に対しての意欲や勝ちにいく貪欲さというのがすごく大きくなりました。思い返すと、それまでの自分の気持ちは甘かったんだなということをとても感じます。テコンドーができることがとても嬉しくて、改めてテコンドーが本当に大好きなんだなということを、怪我をして1年間できなかった期間を経て、実感しました。

――そういった心情の変化もあって東京2020オリンピックに繋がったと思うが、どのような大会だったか?

自分にとっては初めてのオリンピックで、やはり東京2020オリンピックは無観客試合ということもあってすごく特別な大会だったとは思うのですが、出場が決まってからいろいろと注目していただけるようになったりしたなど、オリンピックにはこんなに力があるんだということは非常に感じました。テコンドーでは岡本依子さん(シドニー2000オリンピック銅メダリスト)以外はメダルを獲っていなかったということもあったので、東京2020オリンピックでは絶対にメダルを獲らなければならないというのは自分の中でもすごく使命感みたいなものになっていたのですが、メダルという形として結果を持ち帰ることができなかったというのは非常に悔しかったです。

――素晴らしい結果(5位)だったとは思うが、自分自身は満足できない結果?

そうですね。3位決定戦で負けた瞬間もそうですし、表彰式を見ていたり、メダルを獲っている他の選手たちが活躍されているのを観て、そういったときにふと感じました。私の結果が5位であろうと負けたことに変わりはなくて、メダルが“ある”と“ない”はもうそれだけの違いでしかないんだなということはすごく感じました。

【西村尚己/アフロスポーツ】

Turning Point②:2度目の大怪我でも諦めない 〜パリ大会で見せたい“集大成のカッコいい姿”〜

実は2023年3月に逆の足の前十字靭帯を(2回目となる)断裂してしまって、今ちょうどリハビリ中で毎日トレーニングをしています。

――どのような状況で怪我をしてしまったのか?

世界選手権の代表に内定していたのですが、世界選手権の事前強化合宿を海外でやっていて、そのときの組手の練習中に怪我してしまい、急遽、緊急で帰国しました。自分でも、もしかしたら最悪、前十字靭帯かもしれないと頭をよぎりました。同時に、すぐに手術になるかもしれないということは考えていたのですが、帰国してやはり前十字靭帯断裂でした。すぐに以前手術していただいた愛知の病院の先生に日程を組んでもらい、すぐに手術を受けました。

――1回目の手術のときは難しい心情になったとのことだったが、2回目の怪我の際の心情は?

やはり2回目というのもあって、自分の中ではすぐに前を向いて切り替えられたと思います。ただタイミング的にはパリ2024オリンピックに向けて今年が一番大事な年ということもあって、世界選手権とアジア競技大会の代表にも内定していたので、非常に悔しい気持ちは当然あります。ただ、可能性がゼロではないというのは自分の中でとても大きく、まだ選考会に間に合う時期に復帰もできますし、こうなったからにはもうやるしかないという気持ちがすごく大きいです。やはり競技を長くやっていると色々なことがあるんだなということは非常に感じていますし、一方でそれ以上にすごく自分のメンタルも、この長くやってきた競技を通して、自分自身がすごく強くなったなというのを改めて感じています。

――自分の中で、2回目の怪我があったから変化が生まれたことは?

自分の中で「今この状況でパリ2024オリンピックに出場してメダルを獲ったらカッコいいじゃん」という感じで思っています。ですので本当に前向きにしか考えていないです。今、この1月までの限られた期間でパリ2024オリンピックに出場するために自分が何をしたらいいのかというのも、1日1日を大切にしていきたいと思っていますし、競技を続けたくても怪我や様々な理由で続けられない選手もたくさんいるので、自分はまだ体が動くうちは色々な人たちの分まで頑張らなくてはならないのかなと思った部分もありました。自分の目標がしっかり明確にあるということもあって、怪我をしたから自分の目標が変わったというようなことは全くないので、目標が全くぶれていない、しっかり芯があったということが一番大きいかなと思います。今度こそ応援していただいている方たちに自分の試合を直接見ていただきたいというのもありますし、東京2020オリンピックでの悔しい想いを晴らしたいという気持ちもあります。

――パリ2024オリンピックはどのような大会にしたいか?

やはり今リハビリをしていて、様々な想いだったり、怪我をする中で競技から離れると初心の気持ちをすごく思い出したりもするのですが、競技を始めてから今までの長い、色々な想いを全てぶつけて、自分の中で集大成にできたらいいなということは思っています。

【西村尚己/アフロスポーツ】

パリ2024オリンピックへの意気込み

パリ2024オリンピックで金メダルを獲得して応援してくれた人たちに恩返しをするのと、あとは自分が大好きなテコンドーをもっとたくさんの人たちに知ってもらえるように頑張ります。

【西村尚己/アフロスポーツ】

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著者プロフィール

日本オリンピック委員会(JOC)は、「スポーツの価値を守り、創り、伝える」を長期ビジョンとして掲げ、オリンピックの理念に則り、スポーツ等を通じ世界の平和の維持と国際的友好親善、調和のとれた人間性の育成に寄与することを目的に活動しております。 JOC公式ウェブサイトでは、各種事業の活動内容をはじめ、オリンピック日本代表選手団や、世界で日本の代表として戦う選手やそのチームで構成されるTEAM JAPANに関する最新ニュースや話題をお届けします。

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