オリンピック追加競技決定で注目のスカッシュ。魅力、戦略”T”とは…?
ピラミッドの前で試合を開催 【写真:PSA World Tour】
「スカッシュ」と聞いたことがある人も多いはず!でも、内容やルールなど詳細を知らない方が多いかもしれません。今回はスカッシュのルール、戦略などを紹介します。戦略には「T」「ニック」など聞きなれない言葉が…そして「こんなところで試合!?」と、スカッシュの魅力が目白押しです。
本文:植松 大介(笹川スポーツ財団 経営企画グループ/日本ワールドゲームズ協会 事務局/日本スカッシュ協会 理事)
壁の中で繰り広げられる熱き戦い
スカッシュは「3次元ビリヤード」とも呼ばれ、敏捷性、耐久性、戦略、精神的・物理的な強さなど、様々要素と面白さを備えたスピーティーでダイナミックなラケットスポーツである。その運動量はテニス、バドミントン、卓球など他のラケット競技より上と言われている。競技人口は愛好者を含めると世界2500万人。またForbes Magazineは、スカッシュは最も健康的なスポーツの1つとして選ばれており、年齢、性別、競技能力も問わない、年間を通して楽しめる室内競技※ であると発表している。
※近年の世界大会では写真のように屋外開催も実施されており、2019年の世界選手権はエジプトのピラミッドの前に特設コートを建設し大きな話題となった。
昨年開催された第51回全日本スカッシュ選手権大会の様子 【写真:(公社)日本スカッシュ協会】
ルール
■得点
試合は3または5ゲームのベストオブマッチで、各ゲーム最初に11ポイントを獲得した選手が勝者となる。ただし10対10の同点の場合はどちらかが2ポイントリードするまで続行される。(タイブレーク)サーバーはラリーに勝利すると1ポイントを獲得し、サーブ権を継続。レシーバーがラリーに勝利すると1ポイントを獲得し、サーブ権が移動する。
聞きなれない言葉…スカッシュの戦略 ”T”!
コートの中央近くの赤い線の交差点“T” 【写真:AdobeStock】
■戦略 ”ニック”
壁と床の接着している部分を“ニック”と呼ぶ。この部分にボールが入るとボールは弾まず、転がるのでウィニングショットとなる。このニックを目がけてボールを打つことを“ニックショット”と呼び、試合中選手達はこのニックショットを打てるよう、様々なショットのバリエーションを用いてゲームを展開する。
■戦略 ”壁際”
四方を壁に囲まれている競技の特性故に、横の壁と正対することが多い。選手は互いに意識的に壁際を這うボールを打つ。相手選手のラケットコントロールが非常に難しく、自身にとってのチャンスボールを作る機会が増える。
妨害について
判定のコールは3種類で、
・「レット」:攻撃的なショットは無理でも、返球はできると判断。ノーゲームとして、サービスからやり直しをする。
・「ストローク」:ウィニングショットが打てたと判断。申告した選手にポイントが与えられる。
・「ノーレット」:申告を却下、相手側にポイントが与えられる。
余談だが、世界で最も長いラリーは公認試合では7分、非公認試合では10分34秒という記録が残っており、どちらも「レット」と判定が下された。
スカッシュの魅力
昨年開催された第51回全日本スカッシュ選手権大会。ショッピングモール「トレッサ横浜」で行われた。 【写真:(公社)日本スカッシュ協会】
技術戦略はもちろんのこと、精神的な駆け引き、1つのショットから生まれるラリー展開で勝敗が大きく変わってしまう繊細なゲームでもある。「床から1cmボールが浮いていれば拾える」とも言われており、試合によっては1つのラリーが数分にも及ぶ事もある。1点を取るために繰り出される選手達のプレースタイルや多彩なショット、戦術展開、表情の変化は様々で、そこも競技の魅力の一つといえるであろう。
2028年ロサンゼルス大会での追加競技決定が決まった今、機会があるときに、スカッシュの試合会場へ足を運んで頂き、その競技の面白さを体験して頂けたらこんなに幸せなことはない。
※本記事は、2023年11月17日に笹川スポーツ財団ホームページに掲載されたものです。
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